高級宝石 | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/11/14

百貨店の外商客でも選りすぐりのVIP相手に、あらゆる高級品を販売
するイベントに行ったことがあります。もちろんお客としてではあり
ません。

国内外の有名画家による絵画や、アンティークのホールクロック、
ロシアンセーブルのコートには3000万円の値札がついていました。

オークションも開催されており、目玉はルースのルビーでした。
全くの無傷で、柔らかいピンク色に輝いていました。

「ピジョンブラッド(鳩の血)という濃い赤が最高と言われてるんで
はないんですか?」
知ったかぶって、知り合いの宝石のセールスマンに尋ねると、鼻で
嗤われてしまいました。

「確かにタイ産の安いルビーもピンク色だけれど、本当に値段が高い
のもピンク色なんだ。でもピンクの品(ひん)が全然違うだろう。」

と、展示されているルビーの説明文を指差すので、覗いてみたら、
最低入札価格は8000万円となっていました。
後から聞いたところでは、さるお金持ちが購入したとのこと。
いくらで購入したのかは訊けまませんでしたが、なんとその方は会場
にも足を運ぶことなく、つまり実物も見ないまま無造作に入札価格を
指示したそうです。

いったい自分の給料の何年分だろう、計算結果にため息を吐いていたら、
「世界で一番高い石はなんだかわかる?」
と知り合いのセールスは、いたずらっぽく訊いてきました。

ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドが四大宝石だという
くらいは知っていましたので、そりゃあダイヤモンドでしょうと答える
と、いや、違うね、と得意そうな顔で否定されました。

「アレキサンドライトという石がある。この石は太陽光の下では青緑色
をしているけれど、白熱灯に当たると赤色に変わる性質があるんだ。
美しい青緑色から鮮やかな赤色に変わるものはきわめて稀にしか見つ
からない。四大宝石に、このアレキサンドライトを含めて五大宝石と
して扱われることもあるくらいなんだ。
ところがね、さらに上があるんだ。
アレキサンドライトでありながら同時にシャトヤンシー(猫目効果)が
ある宝石がある。アレキサンドライトキャッツアイだ。3カラット超で
良質のものは滅多に出ないから、市場価格なんてものも存在しない。
まあ、君の生涯賃金程度では買えないことだけは確かだな。俺はこれを
売ることが夢なんだ。」

もう20年以上も前の事です。
現在では人工宝石の技術は格段に進歩しました。特にアレクサンドライト
の合成宝石は極めて質が良く、一般の人では天然石とほとんど見分けが
つきません。

はたして宝石のセールスだった彼は夢を実現できたでしょうか?
当時の彼のいたずらっぽい笑顔を懐かしく思い出しました。