Ms.福子の覚悟
あのみじめな感じは生まれてまだ、ほんの1ヶ月か1ヶ月半くらい。やせっぽちで歩き方もよたよたと不安定だったし、毛もまばら。ピンクのお肌が毛の間からすけて見えてた。ことに足の辺りは毛がほとんど無いみたいだった。目も見えているのか見えていないのか、ひとみの色がとてもうすい。私もあんなふうだったのかしら。
ケージに入れられた赤ちゃんを遠くからながめているとなんだかわけもなく胸がいたんだわ。この子もきっと捨て猫。それはにおいでわかったわ。私と同じにおいなんだもの。おまけに毛の色は茶白。まるで私。
1日2日は遠目でながめていたけど3日目になるともうがまんできない。赤ちゃんに触ってみたくてたまらなくなったの。ケージの柵の間から手を差し伸べてそっと触ってみたのよ。
この感触!遠い記憶がどっと押し寄せて、私夢中でないたわ。赤ちゃんも私に、もっとというふうになきながら身を寄せてきたの。
そのとき、すばやく、まるで待っていたかのように、マジコさんがサッと扉をあけたのよ。
その瞬間から私はこの子の母親になってしまったわ。
私はまだ8ヶ月。ほんの子供よ。人間でいうならたぶん10歳をでたばかり。けれど、もう、どうしようもないの。私の中の血がそうなさいというのだから。
Ms.福子の驚愕
こういうこともあるのだなって、そしてその運命を受け入れざるを得ない私の無力さを思い知る時がある日突然やってきたの。
今から4ヶ月前の夜のことよ。マジコさんが私をだっこして「ほらっ。」ってキャリーケースを開いて中をみせたの。
「なっ、なっ、なにっ!!」
私は身をよじってマジコさんの腕の中から夢中で逃げ出したわ。
「今のはナニッ!」
頭の中が血みどろになるくらい怖かった。二階にのぼる階段が永遠に続くような気がしたわね。やっとマジコさんの部屋にある私の巣にたどりついたときは心底ほっとしたものよ。ゴーゴーとどろく心臓の音がどうにかおさまって冷静になるといろんなことがわかってくるものね。あの茶白の毛玉は明らかに私の同族。アーオ、アーオというなき声は赤ん坊。
マジコさんは私だけでは飽き足らずまたまた子猫をもらってきたのかしら。それとも私がひとりでは寂しいだろうと考えたのかしら。いずれにしても私にとっては想像を絶するストレスだとわかって欲しいものだわ。私はこれからどうなるのか、な・・・・・。


