相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒) -3ページ目

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

綿貫とは、まったくといっていいほど連絡をとっていなかった。それなのに、彼は自分を指名してきた。なぜS県警にいることが分かったのか。綿貫が自分に語った一片から推理するなら、「福音の会」のシンパから聞きだしたのだろう。だが、なぜ自分を指名したのか、という疑問は、やはり残るのだった。


携帯が震えた。番号をみても誰かわからない。通話ボタンを押す。「もしもし」


「的場くん?」


聞き覚えのある声に安堵したが、悟られないよう応えた。

「杉本か。そのだみ声ですぐわかる」

「軽口叩いている場合じゃないんだけど。まぁ、ちょっと安心した。今、どこなの?」

「念のために確認するが、この番号は旦那から聞いたんだな?」

「『元』旦那よ。それ以上でもそれ以下でもない」

「案外気にするたちなんだな。正直、今回のことで俺は誰を信用していいのかまったくわからない。それは杉本、お前にしたってそうだ。ものすごく大きな力が働いている気がするが、一体俺は何のためのスケープゴートなのかすらわかっていないんだ」

「私はただ、貴方を助けたい。それだけよ。何しろ会社は想像以上の事態になっているの。貴方に連絡をとっているのがばれたら私だって危ないわ」

それはお前がどの立場で俺に電話してきているかによる、と思ったが口に出さなかった。杉本だけは信じられると思ってここ数年仕事をしてきたのだ(仕事らしい仕事などなかったかもしれないが)。この感覚を信じられなかったとしたら、もう、信じられるものなどなくなってしまう。

「わかった。お前だけは信じる。ところで会社はどうなってる」

「無音なのに、貴方の捜索だけは始まっているわ」


無音、つまり何の令状も方針も発表されていないということだ。あれだけのことが発生していながら、無音は、異常事態といえる。通常、事件が発生すれば、管轄が決まり、指揮官が決まり、事件本部が設置される。そのうえで事件解決のための指揮命令が下される。完全秘匿の状態で指揮命令が出されているとすれば、トップダウンもしくは公安マターいずれかの可能性が考えられる。公安―――。それは毒島が所属する部署に他ならなかった。俺は、毒島に泳がされているのだろうか。直接聞き出すような愚は犯さないが、解決への糸口がほしかった。だとすれば、捜査するより方法がない。自分では限界があった。できるだけのことは自分でやって、どうしても無理な部分だけ杉本に頼ることにしよう。腹を括ると、事情を杉本に説明した。






(つづく)
※応援コメント、どうぞよろしくお願い申し上げます。
※以下より、登場人物メモです。ネタバレのおそれがあるため、
 以下閲覧注意です。





・的場英二:
S県警刑事局捜査1課所属。32歳。やせ形、筋肉質。伸長189センチ、体重78キロ。切れ目で高身長で一見もてそうな容姿をもつも、近寄りがたい空気を醸し出しており、友人も少ない。独身。ストイックで、禁酒・禁煙をしている。毎日8キロのジョギングが習慣。恋人は何年もいなかったが、事件を通じて恋に落ちる?

・江藤光太郎:
警視庁公安部所属。55歳。中肉中背。172センチ、体重75キロ。薄毛。妻恵理子は行方不明となり、失踪宣告した。娘の恵だけが生きがいだが、親子仲は悪い。粘着質のように仕事を進めることからハエ取り紙、公安部の略称「ハム」とあわせて「ハム取り紙の江藤」の異名をもつ。妻失踪後、仕事の情熱を失っていたが、今回の「福音の会」事件で妻が信者であったことを知り、情熱を燃やす。しかし、事件に配偶者が関わっている可能性があることから担当からはずされる(忌避)。それでも、独自に捜査を進めていたところ、的場と出会う。

・江藤恵
光太郎の娘。25歳。伸長162センチ、体重51キロ。父とは微妙な関係だが、父を嫌いなわけではない。目鼻立ちがくっきりしたかわいらしいタイプ。夜遊び・外泊を繰り返していたが、的場と知り合ってからは、真面目になる。母が失踪したことで、愛情に飢えている。自分のせいで失踪したのかと思いこんでいる。

・毒島寛
警視庁公安部所属。197センチ、体重87キロ。巨大な体躯。江藤とコンビを組んでいたが、江藤が担当を外されたことで、別の人間(中本重徳)と組む。しかし、江藤に同情する彼は、江藤から度々頼まれごとも、快く引き受けている。温厚で気さくな性格。

・杉本冴
S県警刑事局捜査1課所属。30歳、バツイチ。172センチ、54キロ。的場の仕事上の相棒。つっけんどんな対応しかしないのは、古傷が癒えていないからである。的場のことを気になりつつも、必死に一線をひく。女性と子供には優しい。



・綿貫博一
的場の同級生。眼鏡をかけており、ポッチャリ型。168センチ72キロ。おっとりした性格と信念を貫く強い面を併せ持つ。福音の会にハニートラップを仕掛けられた末、研究者としてからめとられることに。ゴモラソドムの開発者。研究者としてのエゴが人間としての良識を上回り、ゴモラソドムを開発してしまうも、良心に苦しみゴモラソドム消滅を図ろうとして組織に殺される。

カッちゃんは、自分の弱点を知っていた。右手の手首が硬すぎること。つまりピッキングに難があるのだ。限界を感じてベースに転向したのだが、そのとき指弾きにかえてみると思いの外うまくいった。つまりは自分の苦手なことを避けてきたのだった。


「もう、そういうわけにはいかないな」


考えてみれば、練習という練習をこれまで経験していない。好きな曲のコピーといっても、自分が弾ける範囲内で調整してきたのだ。同じフレーズを繰り返し練習したことのないことこそが、弱点なのだ。分かりすぎるほどに分かっていた。


当面は基礎練習のみやりつづけることにした。厨房にいるマスターが苦笑いしていることにも気づかず、ピッキングのフォームを確認する。手首が痛くてたまらないが、心地よかった。練習している自分が嬉しくて堪らないのだ。カッちゃんはマスターが帰る直前までレスポールを弾きつづけ、それは毎日続いた。








一方、ジュンペイにとっても試練の連続だった。翌日、カッちゃんからベースを渡されたからである。


「ジュンちゃんのいうとおり、やってみよう。だけどギターひとりじゃ足りないから俺がギターに復帰する。だからお前がベースやれよ」


「えっ」


「嫌とは言わせねーよ。ガンズだってツインギターだろ?ジュンちゃんにはヴォーカル兼ベースを担当してもらう」


できるかな…と言いたくなるのをぐっとこらえた。カッちゃんが本気でやることを決めているのが分かったからだ。軽いバッキング程度ならギターのほうがベースを兼ねるよりはるかに易しいことをジュンペイにはまだ分からない。ベースをなめてかかっていた。


「おう。やってやろうじゃん」



この会話はもちろん喫茶エスポアールで交わされていたのだが、このとき、二階で小夜が聞き耳をたてていることを二人とも気づいていなかった。










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メンバーはそれぞれ帰途に着くなか、カッちゃんだけは喫茶エスポアールに残ったままだった。ギターの練習をするためである。ギターを挫折した当時、ベースを買うために喫茶エスポアールのマスターに自分が使っていたギターを譲っていた。マスターにしてみれば、たくさんのコレクションに何の変てつもないレスポールを買う必要性はなかったが、カッちゃんに援助したかったのだ。若い頃に半端なことをしていた自分とカッちゃんを重ねていた。


「また、やるんだね?ギターを」


「うん。ギターに限界を感じて辞めちゃったけど、それって楽しく弾いてなかったんだと思う。音楽って『音を楽しむ』ものだろ?だけど基礎練習をやらないことには前に進めないよね」


カッちゃんはそういうと、マスターから手渡された以前のレスポールを試し弾きしてみた。アンプに繋ぎ、軽くリフを刻んでみると、一分の狂いもない正確な音がガツンと響いた。

「マスター、これ……」



まるでこの日がくるのを分かっていたかのように、ひずんだ音がカッちゃんを待機している。弦だって錆びてるどころか延びてさえいない。マスターはニコニコしているだけで何も言わない。カッちゃんは、はじめてこいつを手にしたときの感触を思い出した。


不純なきっかけでギターをはじめたあの時と同じ。ギターをやり直す理由だって不純極まりない。だけど、ロックってそんなもんだろ。きれいごとをやるために音楽やるわけじゃない。


カッちゃんは、ブリッジの位置を目視しながら、ピッキングのフォームを確認した。俺は、ジュンちゃんと戦うために、いや自分の才能と戦うために、ギターを再び始める。そしてジュンペイにはベースをやらせるつもりだった。バンドには何よりもまず結束力が必要であることはカッちゃんは身をもって知っているはずなのに、バンドの行く先は早くもゴールが見えない状況になっていたのだった。








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シゲキはひとつの考えに囚われていた。



エツコ様と一緒に帰るチャンスだったのに、またジュンペイとカッちゃんに邪魔されてしまった。アイツらはいつも我が儘極まりない。真面目な人間がいつもしわ寄せを食らう。結果、でくの坊と一緒に帰る羽目になってしまった。



シゲキの頭からは、ジュンペイたちがいたからこそこの場にいられるという事実が抜け落ちている。爪をかむことでストレスがうめき声に変わってしまうのを必死に堪えていた。


だいたい僕は奴らに担がれてエレキギターをやることになってしまったが、果たしてメリットはあるのだろうか?


自分に友だちなどいない。今回のバンドにしても、ギブアンドテイクの関係だと思ったから参加しただけだった。カッちゃんから破格のオファーがなければ門前払いだった。それに、女神様であるエツコ様に認めてもらえるかもしれない。




付き合いたいなんておこがましい。自分のような人間は後ろからそっと眺めていられるだけで十分だと思っていた。ほんのすこしだけ、認めてもらえるだけでいい。それだけだった。



その観点からいえば、ジュンペイたちは部不相応だ。たまたま同じ境遇というだけで、エツコ様に気安く話せるようなレベルではない。彼女宛に時折かかってくる芸能事務所からのスカウトは、シゲキからの情報提供によるものだ。シゲキにとって、唯一の生き甲斐はエツコ様なのである。


面倒なのは、シゲキがエツコに対してアピールしていることや良かれと思って芸能事務所に情報提供していることは、エツコにとって面倒でこそあれ決して喜んでいないということだった。


そんなシゲキをのちに改心させ、また友情にあつい人間にさせた張本人が実はジュンペイその人であることを、このときバンドメンバーの誰が予想しただろうか。









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仲良しのジュンペイが先に帰ってしまったので、ハマちゃんはやむなくメンバーのシゲキと一緒に帰ることにした。別に話すことがあるわけではない。たまたま駅までの帰り道が同じだから一緒に歩いているだけである。無口だと諦められているので話しかけられることもない。そういう関係のほうが楽だった。


実際、自分でもなぜ言葉を発声できなくなったのか分からない。きっかけは父親の失踪だろうと察しはついたが、それをショックに感じていないと信じていたからだ。昔から自分だけは、長男という理由だけで実に多くのことを課せられてきた。



お兄ちゃんなんだから、ケンジに譲ってあげなさい。
お兄ちゃんなんだから、しっかりなさい。
お兄ちゃんなんだから、ケンジの手本になりなさい。
お兄ちゃんなんだから、
お兄ちゃんなんだから、
お兄ちゃんなんだから、







そう。僕はお兄ちゃんなのだ。そこに甘えの理論を差し入れる隙などない。実は、事業にかまけて何ら父親らしいことができないからその正当化のための免罪符に使われただけなのに、それでも僕はお兄ちゃんなのだ。



父親がいなくなってほっとしたような気がする。そしてその瞬間、独り言を呟けない自分に気づいたのだ。こんな人生を理解できる人間などいない。


ジュンペイたちは違った。カッちゃんやエツコも。彼らはハマちゃんよりも壮絶な人生を送っている。彼らなら友だちになれる気がした。ありふれた普通の家庭に育ったシゲキとは友だちになれないだろう。











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「本当にこのまま車を出して構わないのですか?」


ヨシエが迷ったり感情的になっているとき、いつも優しく手を差しのべてくれるのが、物心ついたときからヨシエの側にいる執事だった。彼には当然立派な名前があるのだが、呼ばれることを彼は嫌う。ヨシエの気持ちに先んじて動くことを常日頃意識していることから、呼ばれることを恥と考えているのだ。


執事はきっと、カッちゃんを同乗させてはと言いたいのだ。だが、ヨシエの嫉妬も含んだうえで、言っているのではない。誰もアタクシの複雑な心を覗くことはできないのだわと思った。お金があっても手に入れられないものはあるのだ。


「いいの。出して頂戴」


車内は暖房が効いているはずなのに、そう感じない。ヨシエは昔から「あたたかい」と感じることが出来なかった。自傷行為を重ねるうちに、皮膚までもが渇いてしまった。いくら高級クリームを塗りたくっても、痒みが治まることはなかった。いつしか体のどこかを掻いていないと気がすまないようになっていることを、自分でも気づいていなかった。


そんなヨシエの手がとまるときがカッちゃんを見ているときであるのを執事は知っている。ヨシエに悟られないよう、カッちゃんに遭遇しそうな通りを通過するよう、巧みに遠回りの道を走ることにした。お嬢様は何でも知っている才女だが、自分が歩かない道路のことだけは疎かったのだ。彼はそこにつけこんでまでも、ヨシエに一時の癒しを感じてもらいたかった。











だが、執事のそんな思いが神に通じることはなかった。カッちゃんはヨシエが店を出たあともしばらく、ギターの練習に打ち込んでいたからだ。



カッちゃんにはある考えがあった。ジュンペイの提案を受け入れよう。LAメタルをやってもよい。だが、それにはギター編成をツインギターにすることが必須だった。



自分たちはアルバムを出すわけではない。ライブで成功させたい。ならば、分厚い音を出すにはツインギターがよい。シゲキはバッキングよりもソロワークに期待できる。ならば自分がギターに転向しよう。ヴォーカルのジュンペイにベースを弾いてもらうのだ。


この提案がカッちゃんにとっての起死回生案だった。別に俺はヒヨッているわけじゃないとアピールすることになるし、ジュンペイに試練を与えることにもなるからだ。試練という名の意地悪かもしれない。ジュンペイにヴォーカル兼ベースをこなせるはずがない。そんな器用な奴じゃない。はじめから泣きついてくるのを期待してのアイデアだったのだ。














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「いいえ、お金ではありません。人命です。人体実験を行わせていただき、その人体から増殖させるというのが現時点で唯一の方法です」

「うむ・・・何体ほしい?」

「さしあたっては5体ほど。そして、クリーンルームの増設をお願いしたいのですが」

「なんだ、結局は金もいるのだな?ワッハッハ」


司と綿貫の笑顔は、もはや敬虔な教徒の純粋さを微塵にも感じられないものだった。




都内にある閑静な住宅街の一角に、的場の姿があった。身を隠す必要があったができるだけ人目につかず、痕跡を残さない場所として選んだのが、売れ残った建売住宅だった。鍵はなんなく開けられるのは、昨年癌で亡くなった、鍵屋の父親の影響である。複雑な錠前でなければ、朝飯前だった。電気も通っているし、不動産屋が現地販売の際に使用する暖房器具もある。寝具がないのは自宅でも似たようなもので慣れている。クローゼットにあったのがセラミックヒーターであることに安堵したのは、光漏れで目立つようなことをしたくなかったからだった。潜伏場所を都内にしたのも、自分とは縁のない場所だからというのもあったが、毒島から紹介を受けた秋葉原の店に行く必要もあったからだ。店主は毒島の名前を出すと、特に詮索することもなく足のつくことのなくスクランブルのかかった携帯電話を渡してくれた。法外な値段を請求されるかと思ったが、「代金はドクさんからもらうから気になさんな」の一言で杞憂に終わった。つかみどころのない事件に巻き込まれている現状、毒島から差しのべられた手助けは非常にありがたかった。


実際、自分に身に覚えのないという点では、左遷の原因となったかつての幹部の息子の万引き・自殺事件をはるかに凌駕している。かつての事件はつまるところ警察社会というゆがんだ組織のなかで、誰かが責任を取らなければならなかったという明白な事実があり、加害者ではないが捜査に行き過ぎがあったのではないかということで第一線から追いやられた。しかし、今回の事件では、自分の立ち位置はまったく分からない。順当に考えれば、かつての同級生を射殺した、加害者なのであるが、なぜ自分がその立場に追い込まれたのか、考えても理解できないのだ。綿貫とは、まったくといっていいほど連絡をとっていなかった。それなのに、彼は自分を指名してきた。なぜS県警にいることが分かったのか。綿貫が自分に語った一片から推理するなら、「福音の会」のシンパから聞きだしたのだろう。だが、なぜ自分を指名したのか、という疑問は、やはり残るのだった。




(つづく)
※応援コメント、どうぞよろしくお願い申し上げます。
※以下より、登場人物メモです。ネタバレのおそれがあるため、
 以下閲覧注意です。





・的場英二:
S県警刑事局捜査1課所属。32歳。やせ形、筋肉質。伸長189センチ、体重78キロ。切れ目で高身長で一見もてそうな容姿をもつも、近寄りがたい空気を醸し出しており、友人も少ない。独身。ストイックで、禁酒・禁煙をしている。毎日8キロのジョギングが習慣。恋人は何年もいなかったが、事件を通じて恋に落ちる?

・江藤光太郎:
警視庁公安部所属。55歳。中肉中背。172センチ、体重75キロ。薄毛。妻恵理子は行方不明となり、失踪宣告した。娘の恵だけが生きがいだが、親子仲は悪い。粘着質のように仕事を進めることからハエ取り紙、公安部の略称「ハム」とあわせて「ハム取り紙の江藤」の異名をもつ。妻失踪後、仕事の情熱を失っていたが、今回の「福音の会」事件で妻が信者であったことを知り、情熱を燃やす。しかし、事件に配偶者が関わっている可能性があることから担当からはずされる(忌避)。それでも、独自に捜査を進めていたところ、的場と出会う。

・江藤恵
光太郎の娘。25歳。伸長162センチ、体重51キロ。父とは微妙な関係だが、父を嫌いなわけではない。目鼻立ちがくっきりしたかわいらしいタイプ。夜遊び・外泊を繰り返していたが、的場と知り合ってからは、真面目になる。母が失踪したことで、愛情に飢えている。自分のせいで失踪したのかと思いこんでいる。

・毒島寛
警視庁公安部所属。197センチ、体重87キロ。巨大な体躯。江藤とコンビを組んでいたが、江藤が担当を外されたことで、別の人間(中本重徳)と組む。しかし、江藤に同情する彼は、江藤から度々頼まれごとも、快く引き受けている。温厚で気さくな性格。

・杉本冴
S県警刑事局捜査1課所属。30歳、バツイチ。172センチ、54キロ。的場の仕事上の相棒。つっけんどんな対応しかしないのは、古傷が癒えていないからである。的場のことを気になりつつも、必死に一線をひく。女性と子供には優しい。



・綿貫博一
的場の同級生。眼鏡をかけており、ポッチャリ型。168センチ72キロ。おっとりした性格と信念を貫く強い面を併せ持つ。福音の会にハニートラップを仕掛けられた末、研究者としてからめとられることに。ゴモラソドムの開発者。研究者としてのエゴが人間としての良識を上回り、ゴモラソドムを開発してしまうも、良心に苦しみゴモラソドム消滅を図ろうとして組織に殺される。

雨は収まりつつあった。だが、ジュンペイはエツコの好意を受けることにした。距離感が悩ましい。どうせ自分は濡れている。ならばエツコが濡れないよう傘から離れようとした。だが、そうするとエツコと離れてしまう。むず痒い気分になり、結局考えるのをやめた。


「折り畳み、持ってきてたのか。さすが、用意いいな」


差し障りのない会話にしたかったのだが、エツコの固い横顔をみる限り、それは難しそうだとジュンペイは悟った。


「まったく、意地張っちゃって…本当にどうするの?」


「ん……。やっぱり譲れない部分がある以上、一緒にやるわけにはいかねーよ」


「ジュンペイがそんなに音楽にご執心だとはね。本当はカッちゃんと何かあるんじゃない?」


エツコのほうを見やった。さっき自分をひっぱたいたことなんて忘れているかのようだ。


それにしても二人きりのこのタイミングで聞かれては困ってしまう。確かによく考えてみれば、バンドをはじめるつもりのなかったジュンペイがそんなにこだわるなんて、おかしな話だった。思わず本音を呟いた。


「本当、なんでだろうな」


「分からないのにアツくなってんの?どうかしてるわよ、あなたたち」


びびってるカッちゃんはともかく、俺はなんでこうもスタイルにこだわっているんだ?好きな音楽を歌いたいから?




いや。


好きな人に聴いてほしかったからだ。




カッちゃんに負けたくないのは、音楽なんかじゃない。エツコに対する気持ちなのだ。俺はそれを"Welcome to the jungle" にこめていたのか。カッちゃんがそれに気づいているかどうか分からない。だが俺は意地になってしまった。



どうせならバラードが良かったのだが、流れでこうなってしまった。いずれにしても、一人相撲に他ならない。どうせカッちゃんにもエツコにも伝わっていないのだ。


となれば、道はふたつに別れる。カッちゃんに対決を申し込むか、





エツコに気持ちを伝えるかだ。











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先回りしていたことは、シュウイチの余裕綽々な表情からもみてとれた。



クソ。まさかこのタイミングで喧嘩かよ。エツコにまたどやされるな……。




思わず苦笑した。それがむしろ今よりましだからだ。今度喧嘩沙汰にでもなれば、停学ですまないかもしれない。去年のクリスマス前に陸上部のセンパイをぶちのめしてしまったことがまたもや自分の首を絞めている。まったく、人生ってやつは難しい。もっと慎重にならないとダメだなと思っていると、シュウイチがくるりと背中を向けた。


「帰るのかよ?」


「ああ。今日はご挨拶だって言ったろ?喫茶エスポアールで会ったのも、ここで会ったのも偶然だからな」


シュウイチは振り向きざまにヒヒっと笑った。虫酸の走る笑い方だった。昔から何も変わっていない。偶然なわけがない。なにか言い返そうと考えているうちに、シュウイチは完全に公園の出口を向いていた。


「次に会うときは、必然だぜ?ヒヒっ」









どれくらい突っ立っていただろう。雨に濡れて頭を冷やしたかったのだ。制服もカバンもびしょ濡れになるのも構わず、ただ無心で居続けた。


ふと気づくと、後ろから傘がさされていた。振り向かなくても花柄の傘で誰だかすぐに分かった。一緒にカッちゃんがいるのかが気になりぐずぐずしていると、エツコの拗ねたような声が聞こえた。



「私まで風邪ひいちゃうわ。かえろ?」















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一方カッちゃんの引き止めを期待していたジュンペイだったが、どれだけゆっくり歩いてもそれは起こらなかった。冷たい雨が容赦なくジュンペイの全身を瞬く間に濡らしていく。喫茶エスポアールであれだけ熱かった気持ちがみるみる萎えていくのが分かった。



自分でも面倒くさい性格だと自覚している。だがかっとなると止められない。これまでにも何度となくこんなことがあった。そのたびにエツコが二人の間に割って入り、仲裁をしてくれた。だが今回ばかりはそうもいかないだろう。バンドのことだけではなく、エツコに対する気持ちも整理しなければならないだろうから。


気がつけば、いつの間にか薄木市立公園に来ていた。薄木駅とも自宅とも方向が異なるのだが、昔から嫌なことがあるとこの公園にきては気分を慰めていた。


「相変わらずの単細胞ぶりだな」


どしゃ降りの雨に似つかわしくないがらがら声の主は、天敵シュウイチだった。シュウヘイはどこからかっぱらってきたのか、透明のビニール傘をさしていた。


「せっかくの美男が雨で台無しだな」


「学がないから『水も滴るいいオトコ』って言葉なんざ知らねーんだろう」


強がってみたところで、シュウイチは挑発に簡単にのるような馬鹿ではない。ずる賢いからこそ、ジュンペイの昔からの居場所に先回りしていたのだろう。奴は施設にいたころからずっと、嫌らしい仕掛けをジュンペイに施してはその結果に一喜一憂していたのだ。むしろ落とし穴に落とされていない幸運を喜ぶべきだと思った。いや、




ひょっとして既に罠にかかっているのだろうか。












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