雨は収まりつつあった。だが、ジュンペイはエツコの好意を受けることにした。距離感が悩ましい。どうせ自分は濡れている。ならばエツコが濡れないよう傘から離れようとした。だが、そうするとエツコと離れてしまう。むず痒い気分になり、結局考えるのをやめた。
「折り畳み、持ってきてたのか。さすが、用意いいな」
差し障りのない会話にしたかったのだが、エツコの固い横顔をみる限り、それは難しそうだとジュンペイは悟った。
「まったく、意地張っちゃって…本当にどうするの?」
「ん……。やっぱり譲れない部分がある以上、一緒にやるわけにはいかねーよ」
「ジュンペイがそんなに音楽にご執心だとはね。本当はカッちゃんと何かあるんじゃない?」
エツコのほうを見やった。さっき自分をひっぱたいたことなんて忘れているかのようだ。
それにしても二人きりのこのタイミングで聞かれては困ってしまう。確かによく考えてみれば、バンドをはじめるつもりのなかったジュンペイがそんなにこだわるなんて、おかしな話だった。思わず本音を呟いた。
「本当、なんでだろうな」
「分からないのにアツくなってんの?どうかしてるわよ、あなたたち」
びびってるカッちゃんはともかく、俺はなんでこうもスタイルにこだわっているんだ?好きな音楽を歌いたいから?
いや。
好きな人に聴いてほしかったからだ。
カッちゃんに負けたくないのは、音楽なんかじゃない。エツコに対する気持ちなのだ。俺はそれを"Welcome to the jungle" にこめていたのか。カッちゃんがそれに気づいているかどうか分からない。だが俺は意地になってしまった。
どうせならバラードが良かったのだが、流れでこうなってしまった。いずれにしても、一人相撲に他ならない。どうせカッちゃんにもエツコにも伝わっていないのだ。
となれば、道はふたつに別れる。カッちゃんに対決を申し込むか、
エツコに気持ちを伝えるかだ。
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