(『人間革命』第11巻より編集)
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〈転機〉 18
「どうか、異体同心の団結で、広宣流布の牙城を、この和歌山の地に、必ず築いてください」
伸一の肉体は、全力で戦った山口での闘争で、疲労の極みにあった。しかし、最後の学会歌では、再び立ち上がり、大きく腕を振って、渾身の指揮を執った。
八百余人の同志に、”和歌山を頼みます”と叫んでいるような姿であった。
翌二十一日、伸一は大阪に戻った。その夜、関西本部で、男子部の部隊会が予定されていたからである。
彼が開拓し、彼が築いた関西である。伸一を迎えた会場は、大歓喜の坩堝とかした。
彼は、一人ひとりに訴えるようにして語った。
「青年には、勇気と決断力が大切です。戦い切った人間は美しい。
諸君は、全員が、戸田城聖の弟子であることを深く自覚し、わが人生の使命を、全うしていただきたいのであります」
「山口開拓闘争」の第一弾、そして、関西での指導を終えた伸一は、二週間ぶりに東京に帰った。
十一月十五日、山口闘争の第二弾が開始された。
伸一は、岩国、柳井、徳山、防府と転戦し、十九日に、約束通り宇部を訪れた。
待ち構えていた派遣員は、雀躍して戦い、華々しい成果を生んだ。
十月に耕した戦野には、次々と新たな芽が吹いたのである。
派遣員や、地元会員の足は軽くなった。
彼は、十月に比較的長く滞在した、下関の状況が軌道に乗ったと見て、十一月には、日本海側の唯一の拠点・萩市に、二日間滞在した。
萩市も、十月から蒲田、足立、本郷、堺などの、各支部の派遣員が来て活動を始めていたので、十一月は、座談会が、かなり活発に開けるようになっていた。