(『人間革命』第11巻より編集)
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〈転機〉 11
「今は、世間の人は、私たちを見下しているかもしれない。大聖人は、わが末弟を軽んずるな、軽蔑しては相ならんと戒められているんです。
つまり、まだ、私たちは、信心の赤ん坊です。何もわからないかもしれないが、信心を貫いていけば、必ず所願満足の境涯になれるんです。
心配はいりません。しっかり信心して、まずオムツを取りましょう」
下関の旅館の一室は、たちまち歓喜と情熱につつまれていった。自分たちは、まだこの信心の世界では、オムツをあてた赤ん坊である。
しかし、天子と定められた赤ん坊のように、大変な位にあるのだという希望と自信と誇りを与えるものはなった。
彼らは、初めて御本尊の偉大さと、自身の使命の深さを教えられて、これまでの卑屈さから脱出し始め、胸を張って派遣員の案内に立ち、折伏の手伝いに熱情を傾けていったのである。
山本伸一は、下関に数日間滞在し、個人面接に全力を注ぎ、そのなかから人材を発見することに心を砕いた。
そして、その人たちのなかから、班長、班担当員を任命し、まず班組織の確立から始めていった。
また、滞在中、彼は、下関にあると聞いていた日蓮正宗の寺院・妙宝寺を訪れた。
驚いたことに、寺は荒れ放題に荒れていて、本堂の畳は雨漏りのシミだらけである。
そして、人けのない中に、御本尊だけがぽつんと安置されたいた。
伸一は、胸を突かれた。そして、思わずつぶやいた。
「これはひどい。さっそく戸田先生にお願いして修復しなければ・・・」