映画「ジョーンズタウン集団自殺 -偽りの死の楽園-」 | 休日の雑記帳

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制作年:2018年

制作国:アメリカ

 

かつて900人余りの犠牲を出したことで有名なジョーンズタウンの集団自殺事件。実際どんな事件だったのか、新興宗教の名のもとに自殺をするにはどんないきさつがあるものなのかを知りたくて視聴してみました。丁寧に構成されたドキュメンタリー作品で、タイトルから感じるほどの怖さはありませんでした。

 

☆あらすじ☆

 

1978年、ジム・ジョーンズによって開かれたカルト宗教「人民寺院」の幹部および信者たち918人が集団自殺した。一体何が彼らを自殺に導いたのか。元信者の証言や当時のニュース映像などを交えて真相を紐解くドキュメンタリー。

 

お勧め ★★☆☆☆

 

ドキュメンタリーとして丁寧に作られた作品ですが、内容が内容だけに、ぜひとも視聴をお勧めしたい作品とは言い難いものでした。どれだけ丁寧に取材されていても、やはり新興宗教に依存して集団自殺を成し遂げてしまえる心理や正当性は理解できませんでした。

 

人民寺院の教祖、ジム・ジョーンズは、大義名分としては迫害されている人々を平等に救いたいという理想を掲げていたものの、本音はモテたい、承認されたい、ヒトの上に立ちたいという我欲まみれだったように思えます。そんな人民寺院の実態は、すべての人々を平等に迫害するだけの組織だったように見えるのですが、ヒトが耐えられないのは自分だけが虐げられているという環境で、みんな平等に不遇な環境なら耐えられる、ということなのかもしれません。

 

集団自殺を先導したのは、ジム・ジョーンズというより彼を取り巻く女性幹部たちだったようですが、彼女たちも世間によくいる、夫(実際はただの愛人ですが)のレベルと権力が自分自身のものであると錯覚し、いきり倒すタイプの女性たちだったようでした。実際権力者の愛人にはそれなりの権力があるのでしょうけど、権力者と寝たかどうかで決まるようなエセ権力で突っ走れるのも、知性や理性や品性に欠ける、恥ずかしい人間性に思えました。

 

このドキュメンタリーでは、当時のニュース映像や生き残った元信者およびその関係者たちのインタビュー映像を交えて、集団自殺までの状況や心情が語られていきます。様々な立場の人々が、様々な観点から事件を語ってくれる点が興味深かったのですが、理解や共感はちょっと難しいものがありました。

 

人民寺院に限らず、この手の宗教に嵌ってしまう人々の共通点は、他に居場所がない(と感じている)こと。疎外感や生きづらさを感じている人々の心の隙間に潜り込み、ここなら受け入れてもらえる、あるいはここでなければ受け入れてもらえないという環境下で正常な判断能力を奪い、洗脳した挙句の果てが大量殺人・集団自殺という、なんとも居たたまれない結末でした。

 

驚きだったのが、人民寺院の視察に訪れた議員たちまでも殺害されてしまったことと、いつでも死ねるように自殺の訓練が繰り返し行われていた点でした。服毒自殺した信者たちの多くは、実は今回も訓練で、実際に自分が死ぬことになるとは想像していなかったのではないかと思います。本当に今死ぬとわかって、それでも自殺を選んだ信者の方が少なかったのではないでしょうか。

 

ジム・ジョーンズ自身も女に溺れ、薬に溺れ、堕落しきった晩年でもなお、本当は死にたくなかったのではないかと思えました。ここまで来たらもう死ぬしかない、それが彼の本音であり、死を煽る際に語られた宗教的理念はすべて詭弁だったのではないでしょうか。元を質せばただのヒトの、肥大した自己顕示欲が引き起こした惨劇として、人間の弱さと浅ましさを感じる事件だったと言えそうです。