小鳥店を営む檀野家の平穏な日常は、突然終わりを告げた。
小学生の息子が通り魔に殺されるという凄惨な事件によっ
てー。「息子さんのために、歌わせてください」悲しみに
暮れる檀野家に、不思議な合唱隊がやってくる。訝しむ父
をよそに、母と娘は歌うことで次第に心を取り戻していく
が‥。 ー裏表紙よりー
息子が事件に巻き込まれ、家族が崩壊していくというのは
わりと耳にする話です。
この小説の家族の場合、娘は父親の連れ子のため母親にと
っては自分の血の繋がった唯一の子どもが亡くなったこと
になります。
娘はこの母親が好きでしたが、自分が生き残り弟が亡くな
ったことで罪悪感を抱いています。
そのため母親に逆らえず母親と同じ宗教の道に入っていく。
父親はそんな妻と娘を取り戻そうと一時はがんばりますが、
力尽きます。
大事な人間を失ったとき、その喪失感を何で埋めるのか‥
それはどんな人間にでも突き付けられる問題です。
例えば私の場合はそれは「推し」です。
それが宗教に向かう人もいれば、趣味とか他に愛すべき人
を探すとかそういうことになるのでしょうか。
娘の花音には支えになる人が現れ、いい感じで物語も終わ
るのかと思いきや、ラストは結構壮絶。
母親は娘を守ったのでしょうが、果たして洗脳から解き放
たれたのか?
ラストを読んで小鳥店を営んでいる設定にしたというのは
考えられていたんだなと思いました。★★