高度経済成長期、義父との結婚を迫られたルーはキャバレー
「グランドシャトー」のNo1.ホステス真珠の家に転がり込む。
姉妹のように仲睦まじく暮らすも、莫大な金を稼ぎながら下町
の長屋に居続ける真珠をルーは不審に思い過去を探るがー。
ー裏表紙よりー
最初この本のタイトルを「グランシャトー」だと思っていま
した。「グランシャトー」と言えば関西で育った方ならCMの
歌が頭に流れるのではないでしょうか。「京橋はええとこだっ
せ、グランシャトーにいらっしゃい」。
しかしよくよく見るとタイトルは「グランドシャトー」。え、
京橋のあのグランシャトーの話じゃないのかなと思いましたが、
見事に「グランシャトー」の話でした。
ルーは母と弟2人を残し大阪に出て来ます。当てにしていた
母の知り合いは転居しておりルーは仕方なく水商売の道へ。し
かし喧嘩っ早いルーはどこでも問題を起こし働くところがなく
なります。
あるとき京橋の橋の上で知り合った女性がグランドシャトー
のNo1.ホステスの真珠でした。真珠は普通のホステスとは違っ
ていて地味で質素な性格。それでもずっとNo1。
真珠は聞き上手で上品なホステスですが、ルーは喋りでのし
上がって行きます。ルーはNo2まで上り詰めます。ルーは母と
弟を大阪に呼び寄せ一緒に暮らすことを夢見ていましたが、弟
に拒否されてしまいます。
ここを読んだときに家族って儚いなと考えてしまいました。
ルーは家族を自分の手で幸せにしたい、いい暮らしをさせてや
りたいと思っていたのに、ホステスという商売故に恥ずかしい
家族とのレッテルを貼られてしまったのでした。
家族と暮らす夢が破れたときにルーは東京に行く決心をしま
す。東京で通販番組を20年担当しルーは有名芸能人となりま
す。しかしまた大阪に戻ってきてグランドシャトーと関りを持
つようになります。
真珠は相変わらずグランドシャトーでホステスとして勤めて
います。真珠とルーはお互いの過去を詮索せず再び暮らし始め
ます。
真珠の過去はラスト近くになってようやく少しわかります。
それも確証のある話ではなく多分こうだろうという推測の域を
出ない話です。
高殿さんは真珠の過去を曖昧にすることをよしとしたのだと
思うのですが、真珠に語らせて過去をはっきり描いてもよかっ
たではないかなとも思いました。
本書でちょっと泣けてきた箇所が2箇所ありました。
1つはルーが弟から縁切りのようなことを言われてるシーン。
もう1つは「ひとはどこにいたっていいし、どこから来てど
こに行ったっていいはずだ。いまだくだらない問いかけが世の
中にあふれているのは嘆かわしいことだ、と思う。どこの誰で、
どうして、誰と。何を、なんのために、なんて何ひとつ重要で
はない。ひとが楽に、しんどうないように生きるためには過去
なんてどうでもええよなあ」この言葉は響きました。
今ある自分がすべてなんだということ。この言葉は真珠とル
ーの関係性を物語っているなと思いました。★★★