5.パチンコ店長編(4) | ライターじゃない、アイドルだ

5.パチンコ店長編(4)

【目次リンク】

1.はじめてのパチンコ編(1989年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396112976.html

2.上京パチンコ編(1989年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396833601.html

3.パチンコ攻略編(1991年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12397911333.html

4.パチンコ企業就職編(1994年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12400413287.html

5.パチンコ店長編(2000年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12403314011.html

 

 

店舗営業は無間地獄である。

 

今日が良くても明日良くなければならない。1日ダメにすれば昨日の良いが帳消しになる。

 

明日良くても明後日良くなければならない。明後日良くても明々後日・・・と続く。

 

今日叩き出した実績は既に意味のない過去の栄光であり、過去最高記録を塗り替えるごとに超えるべきハードルが高くなっていくという恐怖。

 

業績を上げ続けることが絶対の組織の中で、私は稼働20%ダウンという致命的な失敗をして店長職を追放された。

 

 

2001年春。30歳。

 

本社へ異動となった私には本部の広告宣伝担当に任命された。

 

数十店舗の広告宣伝の本部案件を管轄する立場であるが栄転ではない。左遷だ。花舞台はやはり営業店舗なのである。

 

しかしながら戦に破れ全てが終わったかにみえたが、かろうじて会社での命は繋ぎ留めたのだ。

 

命の持ち帰りこそが功名の種であるとありがたがるべきか。

 

敗北感に包まれながら、本社勤務を開始し、退勤後は近所のパチスロ専門店でサンダーV2を死んだ目をしてよく打った。裸で体育座りをして意味不明にくるくる回るペプシマンもどきの滑稽さと、みじめな自分が同じ境遇に見えた。

 

サンダーVといえば名機の初代である。けれど自分にはこんなのはサンダーVではないと言われるサンダーV2がお似合いだ。

 

他はギンギン丸、スペースバニーも打った。訳分からん台ばかり打っていた。

 

 

それでも何もしない訳にはいかないので、目の前の仕事に向き合うことにした。

 

この当時、広告宣伝費の中で比重が高かったのは新聞折込チラシだ。

 

今のようにイベントチラシも禁止されていなかった為、1店舗あたり月間4回程実施していた。

 

まずは新聞折込チラシの費用削減に取り掛かった。

 

全店一括で一つの業者様に決定することで値引きを要求する。私は今まで通りの鬼のスタイルで相見積もりを要求した。

 

その結果、年間1億円ほど費用が浮いて喜んでいたが、実はあまり好ましくない。

 

値下げを要求すれば業者様は応えてくる。要求すればするほど限界まで無理をしてくる。その結果恨みを買う。どこかでしっぺ返しを食らってもおかしくないということを理解するのは数十年先の話であった。

 

そんなこともおかまいなしに次々と改善に突き進んだ。

 

次に使用頻度が高い店舗内でのPOP類に目をつけた。業者様に依頼する外注品は高額で、店内制作するポスター類は時給単価の高い役職者や社員が作っており人件費コストを含めるととんでもない高額になっていた。

 

これをもし自社で一括制作したらどれだけコストが下げられるだろうか。

 

自社専用の広告制作部隊を発案。制作室の立ち上げに取り掛かった。

 

前に担当したR店の2階には今は使われていないワンルームタイプの社員寮が並んでいる。そこに目をつけて4部屋分の壁をぶち抜いて広いスペースを設けた。

 

そこにデザイン専用のMac3台、大判ポスター印刷機、大型ラミネート機、複合コピー機などを設置。

 

求人広告を使って新しくデザイナーもアルバイトで数名雇用。

 

自社に導入されてある通信システムを利用し、店舗からの受注システムも構築。

 

こうして制作室という名の自社専用広告制作部隊は無事に完成した。

 

結果、年間約2億円ほどのコストダウン。大成功であった。

 

 

チラシやPOP制作で最も問題となったのは修正だ。

 

修正が多ければ多いほど、時間と人件費がかかってくる。問題なのはその修正が本当に必要なものであるかということ。

 

例えばここの黄色を赤色に変えたいという修正依頼。それによって何が変わるのか?つまるところ粗利がいくらに変わるのか?

 

個人的な趣味や気分による修正は無駄だ。それを排除する為にカラーマネジメントという考え方を取り入れた。

 

色は科学的に人体に影響を及ぼす。例えば裸電球を青と赤のフィルムで包んだ小部屋に人に入ってもらう。

 

すると赤い部屋に入った場合は青い部屋に入るよりも心拍数が高くなるのだ。

 

赤は興奮させる。青は落ち着かせる。黄色は楽しくさせる。橙は食欲を促す。個人差はあれど、色は人体に影響を及ぼすのだ。

 

ゆえに、そこまで考えられていない修正は一切応じないことにした。

 

人間を一つの動物と捉え、その動物の基本行動を理解して有効な広告をするという考えは、ポスターの設置場所などにおいても重要だ。

 

人は建物に入った時にまず何をするか?無意識の内に危ないものはないか目で見て、耳で聞いて、肌で感じて危機管理行動をする。

 

そんな危機管理行動をしてる最中にポスターなど見る余裕などないのだ。よって読んでもらいたい場合は建物に入って5m以上入った場所に配置することが望ましい。

 

入口付近はせいぜいイメージ付けをする為のものしか配置できない。

 

このようなことも含めて、過去からの思いつきで行う無駄な広告を排除し、より有効な広告宣伝活動ができるよう尽力した。

 

 

そして夏が来た。記憶に残る事件が起きた夏である。

 

この時はまだミクシィやまとめサイトなどはなく、パチンコ系の情報収集は2ちゃんねるがメインだった。

 

昼休憩中にスレッドを眺めていると、とある攻略法が話題となっていた。この時代、昔のバグのような攻略法などはほとんどない状況だったので変な噂で騒いでいるなと感じた。

 

だが様子が少し違う。初めは九州辺り。その後中国地方、関西と登ってきているではないか。サミー系のパチスロで成立フラグをコピーできるという。

 

あの有名なコピー打法である。

 

これはマジネタだ!と直感した私は全店舗の長である営業本部長を探した。出張でいないらしい。

 

サミー系で設置している機種といえば、ハードボイルド2、ダブルチャレンジ、ネコde小判、インディージョーンズ2、獣王など多岐に及ぶ。

 

事は急を要する。すぐさま営業本部長の携帯電話に電話をかけた。

 

「攻略法がやってきます。今すぐ全店のサミー系機種を全台稼働停止にして下さい!」

 

それを聞いた営業本部長からお前はバカか!と烈火のごとく怒鳴られた。

 

確かにいきなりそんな報告されても営業本部長も困ってしまうというものだ。

 

その日の閉店後に数名の店長にコピー打法のやり方を教えてそれぞれの店舗で実際に攻略法が使用できるか試してもらった。

 

「できます・・・」

 

翌日、サミー系機種は全店舗で全台稼働停止となった。近隣競合店のほとんども稼働停止していたが、対策していない店もあった。

 

状況を見ると全台ドル箱積んでいてお祭り騒ぎ。店員は何もできずに口を開けて見ているだけの悲惨な様子であった。