今日は死ぬのにもってこいの日 -19ページ目

老女と猫とあやしい人々

少し前から行きつけのバーがある。

そこは新大久保のホテル街にあり、表に看板も出ておらず
一見して何のお店か分からない。

しかし、そこが知る人ぞ知る老舗の「猫場(ねこバー)」だ。

店内に入ると、カウンターと奥にテーブルがあるだけの
小さな空間。

そこで、今まで本当に色々な人と出会った。

戦場カメラマン、イラストレーター、小説家、売れない劇団員、
売れている俳優、女優、東大生、陶芸家、フリーター、弁護士、
中小企業の社長、大企業の管理職、などなど。

職業も経歴も年齢もまったく違う彼らだが、
ひとつだけ共通していることがある。

それは、「猫が好きなこと」。

看板もないこのお店はどうやって人を集めているかというと、
もちろんキャッチがいるわけだ。

ただし、人間ではなく「猫」だ。

入口の外に可愛い猫が眠っている。
それに気付いて寄ってきた客を、ママが捕まえるのだ。

ちなみに、ママは生前のブルーザ・ブロディ(プロレスラー)
の知り合いで、このお店も元は彼の住んでいた家を改装
したものらしい。

60歳を越えているようだが、マナーの悪い客には怒鳴り、
追い返すぐらい気性の激しい人でもある。
(本当はとっても優しい人)


毎月、22日には(にゃんにゃんデー)と銘打って、
みんなが猫関係のプレゼントを持ちよりパーティーをする。

何度か出席したが、猫の話で異常に盛り上がる集団は
客観的にはヤバイが、その輪にいるととんでもなく楽しい。

ここに通ってから、世界観がかなり広がった。

自分の母親ぐらいの女性の話を二時間ぐらい聞き続けて
人生に共感していたら養子になってくれと頼まれた。
(飲みの席の冗談だとは思うが)

デザイン事務所を経営している大学のOBの人と話して
いたら、気に入られて後日メシをおごってもらった。

この前は好きな俳優がゲストで来ていて、その人が出て
いる作品の話をしたら、2ショットで写真を撮れた。

新大久保という土地柄、様々な悲しい事件もあるには
あるのだけれど、それは割愛させて頂く。

とにかく、行くたびに色々なことが起こる。
こういう空間って、都会にはなかなかないんじゃないか。

誰かに無理に進めるつもりは毛頭ないけれど、
今日も今日とて磁気に吸い寄せられるように僕は行く。

しばらくは、退屈しない夜が過ごせそうだ。