病院と在宅では、診療の環境だけでなく、医師と患者さんの関係性も変わってきます。

 

病院の場合、医師が治療を主導し、患者がそれに従うという主従の関係になってしまうことが多いでしょう。

 

診察のときのスタイルも、

外来では医師が診察室の椅子に座って話し、

病棟ならば医師が立っていて、ベッドに横になっている患者さんを見下ろすかたちで接しています。

 

そうした場面でも、医師が上で、患者が下といった関係性を意識させられると思います。

 

しかし在宅医療では、そうした医師―患者という“縦”の関係で はありません

 

在宅医療の主役は、あくまで患者さんです。

医師も含めて医療・介護のスタッフは、患者さんの横にいて必要なときにサポートをさせていただくのが仕事です。

ですから、当クリニックでは患者さんのお宅に上がるときにも、 靴をそろえる、挨拶をするなど、「患者さんの生活に入らせていただく」という姿勢を行動で示せるように意識しています。

医師が患者さんと接するときも上から見下ろすのでなく、座って患者さんと同じ目線の高さで会話をすることを心がけています。

 

一般の方からすれば、わざわざ説明するまでもない礼儀作法かもしれませんが、

病院勤務の長い医師のなかには、患者さんのお宅で も病院の廊下を歩くようにズカズカと上がり、立ったまま話すような人も時折見かけます。

そうしたふるまい1つで、患者さんやご家族の在宅医療の印象が変わってしまうこともあるので、そこは注意しなければならないところです。

 

 

 

「在宅医療」他人事ではございません。

「ブログを見た」と言っていただければ結構です。

どうぞお気軽に、ご相談ください。

 

 

 

在宅医療の具体的なメリットは、以下の10項目と考えています。

  1. 住み慣れた環境で安心して療養ができる
  2. 通院が難しくても医師や看護師が自宅を訪問する
  3. 外来診療・療養病棟と変わらない医療を受けられる
  4. 特別な管理が必要な人でも対応できる
  5. 薬をまとめて管理して多過ぎる薬を整理できる
  6. 看護・介護の多職種連携で生活全体をサポートする
  7. 少しの体調変化でも 24 時間 365 日対応できる
  8. 本人・家族にとって負担の大きい入院を減らせる
  9. 必要に応じて地域の病院で検査や入院ができる
  10. 希望に応じて在宅でのターミナルケア・看取りができる

 

今回書かせていただくのは

 

6. 看護・介護の多職種連携で生活全体をサポートする

 

についてです。

 

 

在宅医療は基本的にチーム医療です。

 

主治医が一人ですべての診療を行うとは限らず、

必要に応じてチーム内の別の専門医が治療に 加わることもあります。

診療体制にもよりますが、精神科、皮膚科、 眼科、整形外科などの専門医が訪問するケースもあります。

 

歯周病の治療が必要な場合は、歯科医師を派遣することも可能です。

 

また、訪問薬剤師がいる薬局では、医師が処方した薬を調剤薬局が調剤し、薬剤師が自宅を訪問して服薬指導を行います。

飲み忘れ の防止や残薬の確認、患者の飲み込みの状態を見て医師に相談し、 薬の種類や量、形状を変更することもあります。

 

在宅医療では介護スタッフもかかわります。

介護保険サービス全般に詳しいケアマネジャーが、介護サービス計画書(ケアプラン) を作成します。

介護スタッフは患者の自宅を訪問し、日常生活のさまざまな支援を行います。

 

支援には2種類あります。

食事介助や清拭、 着替え、排泄ケアなど患者の身体に直接触れる身体介護と、

料理や 洗濯、清掃、買い物などの生活支援です。

 

さらに、脳卒中などの後遺症で麻痺が残る人の機能回復や体力低下、拘縮の予防のために理学療法士や作業療法士が自宅を訪問してリハビリ指導を行います。

 

こうした多職種の専門家は互いに緊密に連携しながら、日常的に情報共有し、患者さんの在宅療養をチームとしてサポートしていきます。

 

 

このように在宅医療は、自宅にいながら、そこへさまざまな疾患・症状に対応する「総合病院」が来てくれるというイメージです。

 

 

 

「在宅医療」他人事ではございません。

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病院は「病気を治す場所」ですから、何より治療が優先されます。

数値が悪いときは、それを良くするために医師が「こうしてください」と治療法を指示し、患者さんが従うかたちになります。

 

しかし、在宅医療はそうではありません。

 

在宅医療チームが入っていくのは「患者さんの生活の場」です。

そこで医師が頭ごなしに、「医者の言うことを聞け」という態度で患者さんに接するのは違うと思います。

 

 

患者さんが療養生活のなかで何を大切にしたいかは、人によってそれぞれ違います。

 

グルメで、子どもや孫たちとの外食が大切という人もいれば、

食事は質素でもいいけれどタバコはやめたくないという人もいます。

 

日常生活の介護でも、

ヘルパーや看護師にきめ細かく支援をしてほしい人もいれば、

家事支援などは最小限でいいので、1 人の時間を大切にしたい人もいます。

 

それぞれの人の価値観を尊重しながら、

その人が自宅で長く生活を続けるために必要な治療・支援は何なのかという視点で、

医療・ 介護の方針を検討していくことが重要です。

 

 

 

高齢期になると、糖尿病や高血圧、肥満といった生活習慣病を抱える人が多くなりますが、

こうした慢性疾患は、長期間にわたって根気よく食事制限や運動療法などの生活改善を続けていかなければなりません。

 

しかし、あまり厳しくし過ぎると息が詰まり、結局は続かなくなります。

 

 

 

患者さんの状況に応じて、時々息抜きもしながら、長く続けられる生活指導を考え提案をしていくのが、在宅医療ならではの支援です。

 

 

例えば、食事のときに何にでも醤油をかけてしまう年配の方がいたとします。

高血圧があって減塩をしてほしい、というときに「醤油をかけるのをやめて」と言うと、本人は抵抗を感じるはずです。

本人が面倒と感じることや、ただ我慢をするだけの制限は長く続かないものですから。

 

それより「使っている醤油を普通の醤油ではなく、 減塩タイプにしてみては」と提案すると、本人も「それならできそう」と思ってくれますし、治療の意欲も高まります。

 

糖尿病の血糖コントロールにおいて、

最新の研究では、高齢者ではあまり厳格にヘモグロビン A 1 c を下げなくても、好きなものをもりもり食べている人のほうが長命、というデータもあります。 

 

ヘモグロビン A 1 c は高齢者は年齢の 10 分の 1、つまり 70 代なら 7、 80 代なら 8 を目安にするといいとされています。

たまの外食や記念日などにご馳走を食べたのであれば、その後、しばらくは質素な食事を心掛ける、というのでもOK です。

   

ほかにも、調味料や麺類などの主食を糖質オフのタイプに替える方法もありますし、

糖尿病の人のための糖質・カロリーを控えた配食サービスも出てきています。

自分では調理が難しい人は、そうした市販品を活用するのもいいと思います。

 

 

 

在宅医療チームは、患者さんがその人らしい楽しみをもちながら、長く治療・療養を続けていけるように支援します。

 

治療方針で疑問や困難を感じたときは、ぜひご相談ください。

 

 

 

 

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どうぞお気軽に、ご相談ください。