先日書かせていただいたリウマチの「新たな希望」にたくさんの反響いただき、ありがとうございました!

 

在宅医療の現場において、決して少なくない「関節リウマチ」をお持ちの患者さん。

このところ、高齢になってから発症する関節リウマチが増えております。

 

今日はその「リウマチ」における、

医学書や、学会で発表される治療ガイドラインの、その先にある、

在宅医療ならではの治療方針について、お話ししていきたいと思います。

 

 

在宅医療におけるリウマチ医療の最終目的は「不自由だった生活を取り戻す」ということだと思います。


原点に帰って、
やはりここを目指さないと、
何のために治療しているのか、本来の目的を見失ってしまうことになるのではないかと思います。
 
これからお話することは、
病院という所が、いかに限られた情報の中だけで医療を提供する場だったのか
ということを、すごくわかりやすく理解できた、貴重な経験の数々です。
 

 

 

まず、

当院は、訪問診療にリウマチ、膠原病の専門医がお伺いすることができる全国的にも珍しいクリニックです。

 

なぜなら、

在宅専門医になる前、僕の医師としての「ルーツ」はリウマチ・膠原病の分野だったからです。

 

在宅専門医指導員の資格をもつリウマチ専門医というのは、僕が知る限り、かなりの「レア種」です。

僕が取得した時点では、おそらく日本でただ1人の存在だったのではないかと思います。

 

 

 

リウマチという病気はまだ原因を解明されていませんが、
自分の免疫細胞が、自分の体を、外から入ってきた細菌やウィルスと同じ「敵」とみなして攻撃してしまう病気で、
一度かかると治らない病気と言われています。
 
しかし治療は進歩してきております。
先日ご紹介した関節リウマチの治療の第一選択薬「メトトレキサート」や、生物学的製剤で、
リウマチの自己攻撃による関節の破壊などのほとんどから逃れることができ、
生活を奪われない患者さんも増えてきています。

一方で、リウマチ患者さんをずっと見てくるとリウマチの治療の限界とぶつかることがあります。
 
病院での関節リウマチ治療目的は「寛解を目指す」ということです。
寛解と言うのは、自分を攻撃する免疫系の活動性が低い状況になっているということです。
こちらは
・血液検査などの検査結果データ
・実際に腫れている関節の数
・本人の関節の痛みの訴え
・医師から見たときの関節の評価
などから判定されます。
 
これらのデータを特定の計算式に当てはめて得られる「DAS28」と呼ばれる有名な指標があり、この数値が低いと寛解状態という判断になります。

病院「では」この状態を長く保つということが、リウマチ内科医の腕の見せ所となります。
 
ですが、
実際は状態を保っていても、患者様の満足度がつながらないことが数多くあります。
 
例えばこの時期になると、梅雨などで気圧の変化が大きく、患者さんが関節の痛みを訴えることがあります。
もちろん検査結果に問題はありません。
 
病院で治療していた頃は、
患者さんからそのような訴えがあっても、
「そういうこともあるよね」
という話で、なんとなくお茶を濁すことがどうしてもありました。
 
ですが、在宅診療でリウマチの患者さんを見る機会が増えてくると、その少し先の部分が見えてきます。
 
病院では寛解、あくまでも医学的な根拠に基づいたものであるだけに過ぎない。
その先にある「患者さんの生活」を無視した「医学的評価」だけで、今まで治療行っていた
ということが。
 

もともと手先が動かすのが好きで、手先で細かい人形を作ることが好きな患者さんがいました。
そのような方にとって、
いくらリウマチの「数値」が改善したところで、思ったように手を使うことができないとなると、患者さんとしては治療してもらっている満足度は低いと感じました。
 
そこで、治療の内容を、あくまで検査の数値ではなく、本人の満足度に寄り添ったたものにかえたところ、
数値のみではわからなかった、手の痛みの症状が取れていきました。

ある時訪問すると人形が1つ増えていました。

患者さんが実際に作られた猫の人形

 
その時の患者さんの表情はこれまでになかったもので、とてもいい笑顔をしていました。
 
 
やはりこういうところが自分を取り戻せたというところであり、在宅医療で目指すべき治療のゴール地点なのだと強く実感しました。




他にもいくつか似たようなエピソードがあります。
 
関節痛が治って畑仕事ができるようになって、作った野菜を毎回プレゼントしてくれる患者さん、
 
庭の手入れができなくなっていたところ、症状が良くなったらまた庭でバラの手入れができるようになったた患者さん、
 
通院が困難になってしまい、病院での治療を断念していたピアノの先生が、リウマチの治療を行うことで、ピアノを数年ぶりに弾くことができたりもしました。
 
孫に料理を作ることができるようになったり、
家からも出られなかったのに、数年分りに外に出て外来に来てくれたりしたこともありました。
ただ外来に来ただけですけど、これほど感動した事はこの時が初めてでした。

患者さんと、このような関わりは病院ではできない、在宅ならではなことだと思います。
 
 
 
このような関わりを通して、教科書や医学書、ガイドラインに載っている「マニュアル通りの治療」ではなくて、その先の、その人らしさを取り戻すための治療というところを取り組めるというところが、在宅医療の素晴らしさなのではないかなと思います。
 
 

リウマチだけではなくて、その他の疾患でも同じような考え方ができる疾患がたくさんあります。
また機会をみて、この場でシェアさせていただきたいと思います。

 

 

 

リウマチの「新たな希望」

 

 

 

「在宅医療」他人事ではございません。

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