脚の付け根がわなわなする感じで上手く歩けなかったが、
すり足のようにして浴室に向かった。
ゴージャスなホテルだけあって、浴室も凝った作りになっていた。円形の、深さがある浴槽で、広さもたっぷりある。ジャグジー機能も付いていた。タイルも大理石風で、一見して高級ホテルのしつらえだとわかる。
(彼はこのホテルでの滞在のためにいったいいくら払ったのだろう?)
お金のことが気になってはいたが、
今までの10年相、ホテル代はずっと彼が払っていたし、私が割り勘を申し出ることはなかった。
正式に付き合ってるというわけじゃないんだし、最後だけ値段を聞いて半分払うというのも変なので、敢えてお金のことは触れなかった。
彼はサッとお湯をかけてそのまま浴槽に入ったが、私はシャワーで顔の汗を流した。
鏡に映る自分の髪の毛がぼさぼさになっていることに気づいた。
「…私の髪の毛、こんなにぐちゃぐちゃになってたんですね」
濡れた手で、絡まった髪の毛をなんとなくとかした。
彼は浴槽に入った状態で、私が立ったままシャワーを浴びている様子をじっと見ていた。
気恥ずかしくて、私もそそくさと浴槽に入った。
円形なのと、じゅうぶんな広さがあるのとで、
浴槽の淵に頭を乗せて脚を伸ばして浮くことができた。
「すごい、ちょっとしたプールみたい。なんかリラックスできていいですね」
「ね、お風呂もなんだか非日常的だね」
彼も隣で私と同じように、浴槽のへりに頭を乗せた。
ひとしきり浴槽のジャグジー機能を試して楽しんだり、他愛もない話をしたりした。
「ああ、いいお風呂だった。なんか冷たいものをルームサービスで頼めないかな。あ、ここに浴衣も置いてあるよ?外資系なのにね、面白いな。」
「ホテルの雰囲気は思いっきり北欧調のシックな感じなのに浴衣が置いてあるっていうギャップが良いですね。外国の人にとっては、着物を着た気分になって受けそう」
「浴衣着てみようか。」
「ふう…私もう1週間分くらい運動したみたい。
まだ脚がふらふらしてるし。顔も熱い。
ちょっとお水飲んでから着ます…。」
「水が身体から抜けちゃったもんね。
僕はこれにしようかな。」
彼は手早く藍色の浴衣を着た。
私はバスタオルを巻いたまま冷たい水を飲み、少し身体を冷ましてから白地に藍色の柄が描かれた浴衣を着た。
「あぁ、やっぱりtefeさんは和装がよく似合うね。」
「よく言われます」
鏡を見て着姿を確認する。浴衣よりも、自分の顔がまだ赤く火照っていることが気になった。
「私、顔が真っ赤ですね…」
「浴衣着てるから余計に色っぽく見えるよ」
「おかしいなぁ、お風呂に入って顔を水で洗ってリフレッシュしたはずなのに」
「ふふっ、すごく似合ってるよ」
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