中で虫歯が広がり、軟らかくなった歯の質がどこまでも広がっている。



神経は生きており、内部への感染はまだない状態である。


神経を保存し、かつ長期的に安定した機能を持たせる事を目標に治療を始める。


原色虫歯図鑑


神経が露出しないように注意しながら、軟らかい歯の質を削除していく。







原色虫歯図鑑

神経にかなり近い部位以外の虫歯をとり、3-MIX(虫歯菌を殺菌する薬)を貼薬した。これによって残した虫歯の菌を殺菌し、歯を無菌化する。

残した虫歯の周囲は、しっかりと健全な歯の質で囲む事が重要である。3-MIXを確実に密封する為である。







原色虫歯図鑑

3-MIXをセメントで密封した。ここまでを一回目の治療で行う。









原色虫歯図鑑

二回目の治療。

神経が炎症を起こしている症状(ズキズキする痛み)が無ければ、一周小さく削り、型をとる。この時、歯ぐきのきわを深くまで削る事で、冠がしっかり歯にかぶるようにする。








原色虫歯図鑑

三回目の治療。

冠をセットして治療完成。保険の歯でも前から五番目までは白い冠を作る事が出来る。意外と知らない患者さんが多いのは驚きである。


この保険の白い冠はHJKと呼ばれ、樹脂でできている。金属の冠に比べて割れやすい事と、樹脂が変色する可能性がある事がデメリットであるが、しっかり噛み合わせを調整し、適切なセメントを選択すれば、そんなに割れる頻度は高くない。より美しい色調と変色しない事を追求するなら自費診療でセラミックの冠を選ぶ事が出来る。


今回は強度のある歯の質が少なかった為に全てかぶせる事になったが、保険の範囲内で神経を保存し、且つ白い歯で治療を完成させられた事で、患者さんの期待にこたえる事が出来たと感じる。






上の歯。


欠損本数は5本。


原色虫歯図鑑


全ての歯で根の再治療、前歯と左右奥歯を3ブロックに分け歯冠長延長術(過去の記事を参考)を行い、後は上に歯を作るのみである。


ここまでの所要期間は約10カ月。治療期間中は仮歯を使う。


補綴物は患者さんとじっくり相談した結果、保険のブリッジを採用することになった。



インプラントであれば、上の奥歯は骨が薄い事が多く、その場合「サイナスリフト」や「ソケットリフト」と呼ばれる特殊な増骨法が必要になる。


今回もしインプラントする場合、

①サイナスリフトと現欠損部だけで最低5本のインプラントが必要

②残った奥歯は使える歯の質がかなり少なくなっている為どこまでもつかが不透明な状態



という問題点がある。


そこで保険のブリッジの力配分を計算すると、全てつなげば充分な強度が得られる事がわかり、フルブリッジ(全てつないだブリッジ)が現時点でのべストという結論に至った。







原色虫歯図鑑

完成したフルブリッジ 


今回のケースでは、

①フルブリッジ

②奥歯のブリッジと入れ歯

③インプラント

の三つの選択肢があった。


左右の奥歯、前歯を3つのブロックに分け、寿命が不透明な歯を戦略的に抜歯し、インプラントするのも一つの正しい方法である。

しかし今回の様に無理のないフルブリッジで保険診療可能なケースは、当然のようにインプラントか入れ歯かの選択を迫る前に、優先されてよい方法であると考える。


フルブリッジだけではなく、冠をかぶせる場合全般に当てはまる事だが、

①支台になる根の治療がしっかりできている

②保険のブリッジの適応にあてはまる

③支台になる歯の質が、最低限歯ぐきの上に出ている

の3つは最低クリアすることが、安定した機能の維持には不可欠である。

通常の部分入れ歯では、このように見えてしまう金属のフックを嫌がる人は多い。


原色虫歯図鑑






保険はきかないが、全く金属のフックを使わないものもある。

ノンクラスプデンチャーと呼ばれる義歯である。


原色虫歯図鑑

原色虫歯図鑑

原色虫歯図鑑


値段の相場は歯の本数にもよるが、6万円~20万円位である。


軟らかい弾性のあるプラスチックでできている。


一般的な性質は過去に記した義歯に準じる。

勿論保険の義歯同様に食事できる。

が、このノンクラスプデンチャーは保険の義歯よりも耐久性が低い。

なぜなら「軟らかいプラスチック」であるからだ。

軟らかい分、物質的に不安定で、劣化が早い。早い場合は一年ほどで弾性が落ちてしまうらしい。



メーカーも通常の保険の義歯をメインで使う前提で、「お出かけ用入れ歯」として使う事を推奨している。



ただし、年齢に関係なくおしゃれに気をつかい、こだわりを持って上品に身なりを整えている人は輝いていて、周囲の人間にも明るいエネルギーを与えてくれる。


ノンクラスプデンチャーはファッションの為の入れ歯である。従来の保険の義歯とは趣が全く異なるのだ。


その事をはっきり理解した上で、ここ一番のおしゃれ用にぜひ選んでほしい義歯である。


インプラント全盛期の今であるが、花嫁さんが歯を綺麗にするように、あるいはこだわりのハットを選んで外出するように、また何か特別なプレゼントとして。

このようにこの義歯の価値を捉えると、非常に粋なものを感じる。