人間に限りなく近いロボットが完成した。世界最先端の科学技術を持ち寄り、国の枠を超えて世界で一体だけのロボットであった。普通の人には人間かロボットか見分けはつかない。人間とロボットの違いであるとされる「こころ」も完璧にまでプログラミングされそのロボットは「感情」を持っていた。
人間に限りなく近いロボットは完璧に人間であろうとした。それゆえ、数え切れないほどの失敗を経験した。同じ過ちを何度も何度もくりかえした。成功したことといえば、完璧に人間に近づこうとして、実際に完璧に人間に近づいていることだけだった。
ある日、人間に限りなく近いロボットは歩道に突っ込んできたトラックに跳ね飛ばされ、病院に搬送された。内部の機関は粉々に砕け散り、快復は絶望的であった。それでも人間に限りなく近いロボットは人間のように生きようとしていた。回路が断絶している部分には他の回路から迂回させてシグナルを送ろうと試みていた。しかし余りにもダメージが大きすぎた。
世界に一体しかいない、かけがえのないロボットは内部すべての機関の活動が停止した。その後、こころある科学技術者の手によって埋葬され、花が供えられた。人間に限りなく近いロボットは、人間と同等の尊い「いのち」をも備えていた。