ファンタジスタに憧れて | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 押入の奥にコートで隠してしまっておいた、とっておきの贈り物がある。もう一ヶ月近く前からそこにある。この贈り物が僕の頭に閃いた瞬間、もう相手の顔は微笑んでいるのが目に浮かんだ。でもこの贈り物が輝くことがないまま役割を終えてしまう、そんなことも考えた。
 そして今日、朝ご飯を頂いてベトナム珈琲を飲み、そして恐る恐る手渡した。あれだけ喜んでくれるという自信があったのに、いざ渡す時には「本当にこれでよかったのか?嫌がらないかな?もっと良い物があったのではないか?」と不安で怖くてしかたがなかった。その不安を悟られまいと妙にテンションを上げてしまい、普段家では見せることがあまりないくらいはしゃいでしまった。声が1オクターブ高くなっていた感じ。
 喜んでくれた。早速履いてくれた。贈り物は長靴。これが閃いた瞬間、ファンタジスタの気持ちを味わった。そして実際履いてくれる。しっかりボロボロになるように履いて欲しい願いと、これを履いて雨の日や泥の中でも世界をワクワク歩けるように・・・。
 梅雨の雨が朝、降ったのだが、昼からは太陽も見えた。気温も上昇し暑さを感じるくらいであったが、彼女は長靴を履いて珈琲を飲みに出掛けた。よく似合っているけど、暑いだろうに。でもうれしかった。
 街を歩いて久しぶりにデートした。普通ってこんななのかな?と思い、だったら普通っていいなと感じた。
IMAG7895.jpg