冷静と情熱のあいだ(下) | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 僕は香川県の高松駅前でコーヒー屋にいた。疎らな店内にはスーツを着た男性や女性が一人で、あるいは打合せをするように向かい合って座っていた。
 僕はアイスカフェラテを飲みながら彼女への誕生日カードを書いていた。書いては止まり、書いては止まり。彼女の生涯を遡って想像しながら、また書き始めた。
 彼女は約束の時間通りにやってきた。手拭いを頭に巻いて、仕事で野菜を配達するために使っている軽ワゴン車を運転しながら。
「こんな感覚、以前感じたなぁ・・・」
 彼女が神奈川にいて、僕が岡山にいた時だ。静岡の富士駅の改札で待ち合わせをした時と同じだった。その時、彼女は普段履かないスカートを履いて改札に立っていた。新鮮さは同じなのだが、今回は彼女の中に生き生きとした活動的なモノが感じられたことが、その時とは違うかなと思った。何かが弾けて瑞々しかった。
 今日は彼女の誕生日。一緒に彼女行きつけの居酒屋で夕飯を食べた。その最寄り駅まで送ってもらい、僕はまた電車で瀬戸大橋を渡る。
「いいんだ。この熱は。冷めなくても」
 僕の熱を奪おうとする電車内の寂しさが、冷静を装うよう促すがそれはあまりに無力だった。
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