今日はISO審査員日記です。
■「また来てほしい」と言われる審査のその先にあるもの
前回、ある審査で最終会議終了後の工場長のコメントについて記しました。
また来て欲しい、と言われる審査とはどのようなものか、ということを考えてみましたが、そう言ってもらえる審査は審査のパフォーマンスとしてはOKと言えます。
ですが、ふと冷静になって考えると、それよりもさらに大事なことがあることに気づきました。
ある意味お褒めの言葉をいただいた。それはそれでOKなのですが、それで喜んでいるようでは、という話です。
ふと考えて何を思ったかと言うと、
自分がその組織の経営者であったら、それで十分満足できたか?
という視点です。
結論から言うと、悪くはないけど……なのです。
■審査としてはOK、でも経営者視点では「物足りない」
この次に来る言葉は何か。
審査としてはOKなんだけど、やっぱりISOの審査だよね。
ISOの審査は規格に基づく適合性審査。
どうしても限界があります。
その限界内にとどまっていれば、経営者からすれば、
「まあそんなもんだよね。だから部下に任せておけばいい」
という判断も当然出てきます。
事実今回の組織は、社長は初回会議も最終会議も出てこられませんでした。
理由はわかりません。
社長が審査範囲外なら出席不要ですが、今回は認証範囲内。
にも関わらず欠席。
これは審査機関側にも問題があると言わざるを得ません。
経営者インタビューは本部長格の役員が対応。
私は別部門の審査だったため内容は不明です。
審査自体は成立しますが、実効性を考えると、
少なくともどちらかの会議には経営者が出るべき
という不安が残ります。
■経営者に本当に考えてほしいこと
今回の審査では検出事項をいくつか残しました。
工場長はその点を含めて評価してくださったわけですが、それだけで良いのかというと、やはり物足りなさが残ります。
ISO審査は適合性審査が基本。
規格要求事項に対してできているかどうかを評価します。
できていなければ不適合。
できていても効果性に疑問があれば観察事項/改善提案。
今回の審査では最終検査部門を担当し、短時間ですが現場審査も行いました。
女性社員が立ちっぱなしで集中力を要する検査作業をテキパキとこなしていました。
その姿には頭が下がる思いでしたが、
経営者が見たら何を考えるか?
という視点が浮かびました。
「お疲れ様、ありがとう」
これは現場責任者の視点。
経営者が考えるべきはその一段上。
- この社員にはいつまでこの仕事をしてもらうのが良いのか
- この仕事は人手が必要なのか
- 生産性向上の糸口はどこか
- 機械化・ロボット導入の可能性は
- 会社の成長につなげるにはどうすべきか
こうした視点です。
■会社の成長を考える3つの視点
会社を成長させるための視点は3つ。
① 売上を拡大する
② コストを削減する
③ 革新する
革新は簡単ではないので、まずは①と②。
今回の現場では①は稼働時間の増大ですが、すでに24時間体制。
となると生産性向上が鍵。
10分の作業が9分になれば生産性10%アップ。
大きな貢献です。
②のコスト削減も同様。
時給2,000円の仕事を1,800円でできれば10%削減。
しかし、
人件費削減で質が落ちれば本末転倒。
ロボット導入も現状では難しい。
設備スペースも不足。
ではどうするか。
会社の将来をどう描くか。
社員にどのような未来を提示するか。
審査の短時間では議論できません。
■理想の審査とは何か
今回感じた理想の審査とは、
適合性審査の奥にある“将来への伸びしろ”まで踏み込む審査。
現場の課長クラスでは日々のオペレーションで精一杯。
だからこそ審査員が投げかけ続ける必要があります。
そのためには、
審査員自身がその力量を持つこと。
そして組織側も、適合性審査がスムーズに進むよう、
日頃の運用レベルを上げておくこと。
今回の審査では目標展開に穴が多く、そこに時間を取られました。
つまり、まだ基礎固めが必要ということです。
審査の価値を高めるには、
審査する側・受ける側の双方の努力が必要。
この文面では伝わりにくいかもしれませんが、
審査に使うお金の価値をより高く感じてもらえる世界を実現したいものです。
今回のひとこと
📌適合性審査の奥にあるものこそ審査を受ける本当の価値!
