大きな声では言いにくいことですが、審査員教育の現場では、
「トップインタビューがうまくできない審査員が多い」
「力量不足によってパフォーマンスが上がらない」
という声がよく聞かれます。
これは私たちの業界にとって、ある意味で永遠の課題と言えるかもしれません。
トップインタビューはどのような場なのか
トップインタビューは、通常はリーダー審査員(主任審査員)になってから本格的に経験する場面とも言えます。
今回の私の立場はメンバー審査員でした。
資格的にも、主任審査員まではまだ距離があり、審査員補から昇格したばかりの段階です。
しかし審査計画はそうした事情とは関係なく決まります。
今回の審査先はホールディングカンパニーではないものの、各地の事業部が独立経営に近いスタイルを取っており、初日のスタートは実質的にトップインタビューとも言える内容から始まりました。
初回会議では、通常であればリーダー審査員が説明する内容を私が担当し、審査の進め方を整理しました。
その直後に、その事業部トップへのインタビューが開始される流れでした。
相手は常務取締役です。
専務や社長といった上位者はいるものの、部長も兼務しながら事業所の経営管理全般を担っている方でした。
私は社長に対するインタビューのつもりで臨みました。
「こちらのお手並み拝見」という空気
審査員は事前に略歴を提出し、その情報は審査先組織にも共有されます。
場合によっては利害抵触などの理由で審査員配置を拒否する権利が組織側にあることも理解しておく必要があります。
略歴が共有されるということは、審査員歴や年齢も相手に伝わるということです。
極端に言えば、今回の常務の立場から見れば
「審査員になりたての若手が来た」
という印象を持たれても不思議ではありません。
その常務は外見的には70歳前後。
さらにその組織は20年以上にわたり認証を維持している企業です。
想像の域は出ませんが、20回以上審査を受けている可能性が高く、多くの審査員や審査現場を見てきているはずです。
そのため審査員を前にして緊張する様子はまったくなく、
むしろ「こちらのお手並み拝見」という空気を感じました。
審査員と受審組織の力関係
審査員になりたての方にとってトップインタビューが難しいと感じられる理由は、この力関係にもあります。
私自身、ISO審査とは異なる形ではありますが、同等の審査を受けた経験は20回以上あります。
また経営者として10年間務めてきた中で、トップインタビューを受けた回数も10回を超えています。
当時の私は、
「今回の審査員はどこまでこちらを理解してくれるのか」
という思いで審査に臨んでいました。
その経験があるからこそ、今回の常務の応対もある程度想像がつきます。
もちろん推測だけで審査を進めるわけにはいきませんが、結果として表情を見る限り、満足していただけたとは言えない印象が残りました。
ISO審査の基本は適合性確認です。
そのため時間の多くは、基準に則って業務が遂行されているかの確認に使われます。
しかし組織側からすれば、費用を支払って審査を受けている以上、
事業推進に役立つ示唆や気づきを残してほしいという期待があるのも事実です。
トップインタビューの時間をどう活かすか
限られた時間の中で信頼関係を築き、その後の審査を有効に進めるための土台を作ること。
これがトップインタビューの重要な役割だと感じています。
今回の振り返りとしては、その時間を十分に活かしきれなかったという思いが残りました。
もっと経営管理上の苦労を聞き出せたのではないか。
どのような経営を志向しているのかを深く理解できたのではないか。
こうした基礎情報を得た上で部門審査に臨んでいれば、審査の質は変わっていたかもしれません。
トップインタビューは30~40分程度で終わることが多く、無難に進めようと思えばあっという間に時間は過ぎてしまいます。
しかしその短時間の中で、どこまで審査の方向性を定めることができるか。
そこに審査員の力量が問われるのだと思います。
謙虚さと遠慮のなさの両立
どこまでいっても、審査員が経営者より上位の立場になることはありません。
率直に、素直に、どのように経営に向き合っておられるのかを聞かせていただく。
それがトップインタビューの大前提です。
その上で、聞くべきことは遠慮せずに聞く。
経験を重ねながら、自分なりの引き出しを増やしていくことが大切だと感じています。
私自身もまだその途上にあります。
🌱『今回のひとこと』
■トップインタビューで受ける圧を突破するには、謙虚に、でも遠慮せず。
