世間は

　世間は日曜日，夏休み．救命救急センターは通常営業中．救急医は曜日感覚はまったくありませんが，救急外来の多さで休日を感じる今日この頃です・・・閉口・・・

本日のドクターヘリ（7件要請4件出動）
1・2件目　小児の意識障害と心肺停止
　朝のカンファレンス終了直後にPHSが鳴ります．と同時に運航管理室から電話です．「同じ消防から2件要請です．小児の意識障害事案と心肺停止事案．どちらに行かれますか？」．ランデブーポイントの場所，緊急度，心肺停止は救命士が特定行為可能なことなどより，まず小児事案のランデブーポイントに相棒の幸部先生，清水看護師を投入，心肺停止事案のランデブーポイントに小生を投入することとします．最初のランデブーポイントまで10分弱，2事案分の準備を行います．最初のランデブーポイント着陸．すでに救急車到着済み．エンジンカットせず幸部先生，清水看護師が降ります．ヘリはそのまま離陸，5分離れた次のランデブーポイントへ．心肺停止事案は救急隊がまだ現場活動中とのこと．ヘリ着陸前に幸部先生に連絡を取ります．「意識朦朧状態．呼吸も悪いです」との情報．であれば小生を降ろした後に再び小児事案のランデブーポイントへ向かい，小児の搬送優先を決断します．エンジンカットせず小生はトーマスバッグ，オートパルスと共にヘリを降り，支援車に乗り込み現場へ向かいます．ヘリはあっという間に離陸，小児事案へ向かいます．小生は救急隊と途中ドッキング，診療を開始です．心拍再開，心停止を繰り返しますがオートパルス装着，脳蘇生の可能性も考えTECCMC搬送を決めます．運航管理室へ連絡．「小児の搬送後すぐにこちらにヘリを戻して下さい！」治療を行いながら，救急車をランデブーポイントへ走らせます．薬剤投与，記録，指示出しを1人で行う大変さを痛感しましたが，救急隊のみなさんが非常に良く動いてくれ助かりました．ランデブーポイントに到着，程なくJA818Hがやってきます．速やかにヘリへ搬入しTECCMC搬送です．
　消防の適切な要請と運航管理室の見事な調整で，2事案とも早期医療介入と搬送時間の短縮が得られました．ドクターヘリに救急医2名が搭乗すると，運用の幅が広がっていきます．

3件目　意識障害（キャンセル）
　救急覚知同時要請です．早期医療介入の重要性を理解されている消防ならではの要請です．救急隊現着時には意識回復，キャンセルとなりました．

4件目　トラクターの下敷き
　救急隊現着後要請です．「トラクターの下敷き．PEAの状態」．出血が原因なら脳蘇生の可能性もあります．ヘリは一直線にランデブーポイントへ向かいます．ヘリ着陸，救急車を待ちます（写真：ちょっと恐い表情の清水看護師が写っちゃいました・・・ゴメン）．程なく救急車到着．「薬剤投与にて心拍再開しました！」．良くやった，救命士さん！自発呼吸もあります．これなら希望あるかも．気管挿管を行いヘリでTECCMCへ搬送です．しかし，搬送中の機内で再び循環動態が悪化．どうやら胸部圧迫による外傷性窒息のようです．低酸素が先かあ・・・厳しい・・・ヘリはヘリポートへ静かに着陸します．　

　本日も適切な要請で，ドクヘリの有効活用をしていただきありがとうございました．

　さて，これから番匠谷先生，幸部先生と緊急手術です．もうひとがんばりしてきましょう．

あっという間に

　4月17日から運航を開始したドクターヘリです．3ヶ月半で実働300件を越えました．これも偏に，各消防本部の皆様が，早期医療介入と搬送時間の短縮が救命率向上と後遺症軽減につながることを大変良く理解されている賜物です．共に住民の皆様が安心して暮らせる地域を提供出来るよう，引き続き頑張っていきましょう！今後ともよろしくお願い申し上げます．

　ここ数日，脳血管障害の患者さんが増えております．脳外科チームは頭部外傷を含め連日の緊急手術です．お疲れ様です．周術期管理はお任せ下さい．共に熱い・暑い夏を乗り切りましょう．

本日のドクターヘリ
1件目
　晴天の土曜日，朝から多数の要請を覚悟しておりました．ところが，幸いなことに要請もなく，24時間勤務明けの小生と相棒の番匠谷先生は爆睡しておりました．そろそろ運航終了，夕礼の時間・・・とその瞬間に一斉PHSが鳴ります．要請先は？日没時間との勝負です．離陸し情報を聞きます．「ランデブーポイントは杉が有名な町の奥（←本当は実名で伝えてます）．トラクターごとの転落」．ランデブーポイントまで15分はかかります．機長，運航管理室と時間的要素を加味した現場活動方針を打合せます．山奥のダム手前のランデブーポインに着陸，救急車はまだ到着してません．ところが，着陸地点の周囲が金網で囲まれており，入口に鍵がかかっています．番匠谷先生，藤巻看護師は口々に「こんなん乗り越えて行きま～す！それっ！！」．瞬間，支援隊の方に「鍵を切りますのでお待ち下さい」と冷静に諭されてました・・・元気なお嬢様お二人に感心していると救急車到着．時間との勝負です．番匠谷先生は外傷初期診療開始，さすがJATECインストラクター，on the jobでもスピーディかつ確実です．小生は末梢ルート確保と情報収集．藤巻看護師は二人のサポートと家族対応．各々の役割は何も言わずとも完璧です．ヘリに5分少々で搬入，これなら直近の救命救急センターに搬送可能です．機内で診療情報提供書を作成，ヘリポートでの引き渡しの段取りを要請します．10分もかからずヘリポートに到着，待ち構えていた医師は小生の後輩でした．久しぶりでしたが，2分程度の再会．番匠谷先生が必要な申し送りをして我々は再離陸です．無事日没までに但馬空港に着陸することが出来ました．但馬空港で資機材を撤収，フライトクルー全員でTECCMCヘ移動，本日の業務終了となりました．

　本日はこの1件のみ．ヘリクルーは久しぶりにゆっくりとした日勤帯を過ごすことが出来ました．ICUでは気管切開など，相変わらずの診療が行われています．

　本日もお疲れ様でした．

ちょっとの間，機体変更

　今日朝からJA818Hに機体変更です．JA822Hはしばらく里帰り（神戸）です．ホームシックにかかるには早すぎですよ．久しぶりのJA818Hは少々おしゃれになってました．スキットにフロートをつけて，すっかり海上飛行仕様です．肝心の「名札」と「校章」は忘れてきたようです（本日の写真で何が足りないか当ててください）が，TECCMC's SPIRITと幸せを運ぶコウノトリ魂は染み付いていたようです．やっぱりここは飛び甲斐があるでしょ!

本日のドクターヘリ
1件目　交通外傷
　懐かしいJA818Hに挨拶する間もなく，朝の点検前に要請です．資機材を速攻で積み込み，機内の薬剤を整備しつつ舞い上がります．いつもの指導医席は以前のまま．相棒の松井先生が運行管理室から情報を聞いています．「乗用車同士の衝突事故．傷病者１名．呼吸苦を訴えている」．数分後，ランデブーポイントの野球場に着陸，救急車に乗り込みます．呼吸，循環は安定していますが右前胸部に打撲痕と圧痛．胸部外傷を考えTECCMCへ搬送です．

2件目　脳梗塞
　回診終了直後に一斉PHSが鳴ります．3階のICUからヘリポートまでいつも通りに駆け下ります．「突然の左半身麻痺」．血栓溶解療法の適応を考え，救急隊からの要請です．患者さんの後遺症軽減を常に考えている消防です．美しい海水浴場近くに着陸，患者さんはCPSS 3項目要請．発症時間を確認し速やかにTECCMC搬送です．もちろんヘリポートからdirect CT！

3件目　ショック
　救急隊からの要請です．開業医からの転医依頼ですが，頻脈，ショック状態にてドクターヘリの要請です．転医先を丸投げする開業医もどうかと思いますが，救急隊は冷静にかつ適切な現場対応をします．ドクターヘリ現着時，脈拍210の上室性頻脈．循環は何とか維持されています．ここで循環を安定化することが最優先と考え，薬剤投与．一瞬心電図はフラットになりますが，すぐに洞調律へ．脈拍60台で安定，循環も問題なし．患者さんご本人も楽になったと．救急隊の適切な判断が奏功した症例です．ヘリで循環器のしっかりした病院へ搬送です．

4件目　心肺停止（キャンセル）
　同時要請でしたが，早期死体現象にてキャンセルとなりました．

5件目　呼吸困難（キャンセル）
　病態安定にてキャンセルです．

6件目　熱中症，意識障害
　運行終了間際の同時要請です．夕日を浴びながら離陸，情報は「意識朦朧状態．熱中症疑い」です．飛行時間は10分少々，日没時間を考えるとTECCMC搬送以外はありません．機内で現場活動のプランを再確認していると，「傷病者は2名．母親と子供」との追加情報．2名の傷病者！日没時間を考えるとピストン搬送は不可能．1名のみのヘリ搬送です．松井先生は子供さん，小生は母親を担当することに決め，ランデブーポイントで救急車を待ちます．程なく救急車到着．母親の方が重篤感あり！幸い子供さんは顔色も良く元気そうです．であれば母親をヘリで，子供さんは救急車で松井先生同乗で搬送とします．母親は輸液をしながら10分後TECCMCへ搬入，それに遅れること30分，松井先生とともに子供さんもTECCMCへ到着です．海水浴中は水分をしっかり補給してくださいね．

　本日はICU内で緊急開腹術を行いました．小回りのきく，機動性のある救命救急センターは患者さんにとって一番です．看護師の皆さん，いつも無理言ってごめんなさい m(_ _)m

　夕方からフライトスタッフミーティング．より良いヘリ事業を心がけます．今後とも皆様方のご協力とご支援をよろしくお願いいたします．

ERL その1

　7月30日のブログにERTのことを少しだけ書きました．今日はERLです．ERLとは初療室開腹のことです．超緊急で腹腔内出血に対する止血が必要，手術室まで移動出来ない状況などの時に行います．当センターではERT, ERLともに手術場の看護師さんが機械ごと来てくれます．術野は手術場の，外回りと蘇生対応は救命の看護師さん達がテキパキと動いてくれます．いつも助かっています．本当にありがとうございます．

本日のドクターヘリ（8件要請7件出動）
1件目　脳梗塞疑い
　回診中にドクターヘリPHSが鳴ります．相棒の岡先生と3階のICUからヘリポートまで走ります．要請内容は「脳梗塞にて血栓溶解療法の適応かも」です．であれば時間との勝負．ランデブーポイントから支援車で患者さん宅に向かいます．我々が現着した時にはCPSS 0項目．どうやら回復傾向にあるようです．一安心です．かかりつけの病院へ救急車で行っていただきます．結果は幸い軽症でしたが，後遺症軽減を目指す救急隊のすばらしい要請判断でした．
　河川敷のランデブーポイントが本日の写真です．まだ元気な岡先生です・・・

2，3件目　トラック VS 軽乗用車
　但馬空港で給油を終えて帰投中に要請です．要請と出動のタイムラグ0分．「トラックと軽乗用車の事故．ショック状態」の情報．機内では淡々と準備が進められます．ランデブーポイント到着直前に「傷病者2名，2名ともショック徴候あり」！岡先生と現場活動の段取りを手短に行います．ランデブーポイント着陸，消防から現場投入の指示あり．ヘルメットを着用し，今回はパトカーで移動です．警察のご協力に感謝いたします．現着すると2名の患者さんはすでにそれぞれ救急車に収容されています．岡先生，小生と二手に分かれ外傷初期診療開始．小生の患者さんは・・・末梢冷汗著明，橈骨動脈微弱，FASTで右血胸，胸部外傷疑いです．岡先生の患者さんは，呼吸，循環は安定，しかし少々意識レベルに問題があるようです．であれば，小生の患者さんをヘリ搬送，岡先生の患者さんは救急車でTECCMCへ向かいつつ，途中でピストン搬送とします．
　小生の患者さんをヘリに乗せ離陸，急速輸液にて何とか循環が立ち上げって来ました．しかし，右胸郭に皮下気種が出現！少々焦りましたが，無事ヘリポート着陸です．
　エンジンカットせず患者さんを降ろした後，速やかに岡先生が担当している患者さんを向かえに行きます．ランデブーポイントは当該消防の隣の市．でも快く隣の市の消防の皆さんは支援を引き受けてくれました．命に行政の枠はありません．但馬，本当にすばらしい地域です．

4件目　意識障害
　救急覚知同時要請です．「意識なし，呼吸あり」．ヘリは数分でランデブーポイントに着陸．救急車内で患者さんを診察すると，徐呼吸，深昏睡です．やばい状況です．速やかに岡先生が気管挿管を行いTECCMCに搬送です．

5件目　心肺停止（目撃あり）
　救急覚知同時要請です．「突然倒れて心肺停止」．早期医療介入で救命を目指します．ランデブーポイントから支援車で現場へ．患者さんとの接触まで20分少々でしょうか．その甲斐あって現場で心拍再開！岡先生，米田看護師が救急車に同乗し，昇圧剤投与を行いながらかかりつけの病院へ搬送です．

6件目　アナフィラキシー
　5件目の搬送が終了した直後に要請です．「蜂に刺されて意識無し」．岡先生たちを近くのランデブーポイントでピックアップ（この際も要請元消防ではない消防の皆様にご協力をいただきました．ありがとうございました），現場に向かいます．アナフィラキシーショックが疑われます．急がなければ！山間の静かなランデブーポイントに着陸，程なく救急車も到着です．この地域であれば医療介入までの時間は半分以下になっているはずです．患者さんは幸い意識も回復，必要な薬剤投与を行いながらTECCMCへ搬送です．

7件目　意識障害
　救急覚知同時要請です．救急車でも15～20分程度の場所ですが，1分1秒でも早い医療介入が，患者さんにとって非常に有用であることを知っている消防機関ならではの要請です．意識障害にてTECCMCへ搬送です．

　1日7件出動は新記録です．どの事案も早期医療介入，搬送時間の短縮をもたらし有効な要請ばかりでした．支援をお願いする消防の皆様にはご負担をおかけしますが，ドクターヘリでなければ救命出来なかった症例が続いています．この地域の「救命力」を上げ，日本一にするためにも．今後ともよろしくお願い申し上げます．

　明日からはJA818Hが戻ってきます．エアコン不良のJA822Hは神戸でお手入れです．ちゃんと機嫌を直して戻ってきて下さい．待ってますよ．

ERL その2

　2件目，3件目のドクターヘリ搬入後の続きです．
　
　初療に外傷患者さんが2名並びます．救急医達は各々自分のすべきことを理解しています．手際よく外傷初期診療が継続されます．そんな中，小生が搬送した患者さんの循環が再び不安定に！挿入した胸腔ドレーンからは出血なし．骨盤もレントゲン上問題なし．FASTを繰り返します．すると先ほどまではっきりしなかった腹腔内出血が！！明らかに増加してきています．気管挿管，急速輸液，緊急輸血・・・ダメです反応が乏しい．「お腹開けるよ！」．ERLを決断．スタッフ一同，一斉に動きます．数分後，肝臓の一部が裂けてます．しかも高度肝硬変．躊躇なくガーゼパッキング，ダメージコントロールです．循環が立ち上がったことを確認し造影CT．血管造影の必要はなさそうです．ならばICUで体制を整え，明日以降の再手術に備えましょう．ヘリだからこそ一命を取り留めた患者さんです．

　番匠谷先生デザインのドクヘリイラストの1枚を掲載します．なかなか良いでしょ？皆のお気に入りです．明日も但馬の空を駆け巡ります．

最高気温38度

　昨日のICUはIII度熱中症，重症外傷，頭部外傷後の呼吸不全，脳外科手術後の循環管理，初療からの新入院患者さんなどの管理で朝を迎えました．相棒の番匠谷先生は初療対応をいつものペースでがんばってくれました．

　本日の豊岡の最高気温は38度だったようです．体温より高い！夏，真っ盛りですね．夏の日差しを浴びて，JA822Hの機体が輝いています．

本日のドクターヘリ
1件目　乗用車，崖から転落
　朝の回診を皆で終え，それぞれの仕事に向かったところで一斉PHSがなります．小生はちょっと遅めのブランチ中でした．覚知同時要請です．スポーツドリンクのペットボトルを片手にヘリポートへ走ります．JA822Hは青い空に舞い上がります．「乗用車が崖から転落．詳細不明」との情報．ランデブーポイント，事故現場を確認しつつ飛行します．10分後，事故現場上空に到着（写真左下）・・・山頂，樹木に囲まれた神社の駐車場．ここから乗用車が転落？いずれにせよここには着陸不可能です・・・
　（写真左上・右上）事故現場から少し山を下りた所に綺麗な芝生の空き地を発見！ちょうど現場に向かう救急隊に安全確保をしてもらい着陸．小生，倉橋先生，安積看護師と救急車にピックアップされ現場に向かいます．ドクターヘリがドクターカーになった瞬間です．ちなみに写真上のドクヘリイラストは番匠谷先生作成です．才能ですね．
　（写真左下）先ほど上空から確認した現場に到着です．上から見ると50mほど下に確かに乗用車が！状況を確認すると，駐車場に運転手さんが自力で這い上がっておられます．診察しながら聞くと，下に同乗者がまだいるようです．救急隊は救助隊と機材を持って崖を下ります．我々は安全が確認され，現場への医療投入が必要と判断されてから行くこととします．素人の猪突猛進は迷惑なだけ．現場では消防の指示に従います．現場では指揮命令系統が重要です．
　（写真右下）下からの情報ではかなり切迫した状況のようです．救助するにもその間の輸液，薬剤投与などが必要と判断します．「行きましょう」．消防の方に先導してもらい，現場に向かいます．現場に出る医療者は自分自身の身体能力を把握し，常に冷静に患者のもとへ向かうことが要求されます．崖を下ること数分，林の中で現場活動に加わります．骨髄輸液路を速やかに確保し薬剤投与．その後に引き上げです．厳しい状況ではありますが，上には警察も来ています．引き上げてから状況の整備を考えることとします．
　現場でいつも感じることは，消防の皆さんの仕事ぶりにはいつも関心させられます．プロです．現場に出る我々が足手まといにならないよう，迷惑にならないよう自己管理により一層努めます．もちろん，ヘルメット着用，長袖，安全靴は必須であります．

2件目　溺水
　同時要請でしたが，離陸10分後にキャンセルとなりました．残念な結果だったようです．

3件目　呼吸困難
　救急車で15分程度の現場から同時要請です．1分1秒でも早い医療介入を常に考えている消防の姿勢が現れています．これでこそ住民が安心して暮らせる地域なのです．ランデブーポイントでの早期診療開始．離陸後1分でTECCMCのヘリポートです．

4件目　呼吸困難
　3件目の搬送中に要請です．エンジンカットせず，ヘリポートでの引継を行い再離陸です．こちらも同時要請．5分もかからずランデブーポイント上空へ．散水を待っての着陸です．搬送時間を短縮が有効な症例です．速やかにTECCMCヘ向かいます．

　本日は1件目が濃い内容であったため，2件目以降があっさりとなりました．しかし，どの事案も早期医療介入，搬送時間短縮を実現した非常に有用なミッションばかりでした．消防の皆様にはお世話になってばかりですが，今後ともよろしくお願い申し上げます．

エアコン

　大事件です！JA822Hのエアコンが壊れました・・・文明の利器に慣れ親しんだ我々にとっては試練です．小窓開放とうちわで乗り切ります！クルーのペットボトル消費量↑↑で脱水，熱中症対策です．

本日のドクターヘリ
1件目　熱中症
　朝のカンファレンス終了直前に一斉PHSが鳴ります．意識障害のキーワードで覚知同時要請です．きれいな海と美しい夕日の温泉街に向かいます（写真）．ランデブーポイントに着陸，すでにフライトスーツ内は汗が流れています．今日も暑くなるなあ・・・救急車が到着し，相棒の岡本先生，福本看護師が前から，小生はいつも通り後ろから車内へ乗り込みます．患者さんは意識清明，呼吸，循環も問題なさそうです．病歴を聞くと30分炎天下で立ち話をされた後に一過性の意識消失をされたようです．熱中症を疑い，輸液を行いながら救急隊のみで近医への搬送といたしました．

2件目　熱中症
　昼食後，一眠りしている岡本先生を叩き起こすようにPHSが鳴ります．ちなみに岡本先生は24時間勤務明けのヘリ当番なので，出動がなければ爆睡OKなのです．ランデブーポイントまで5分少々，意識障害のキーワードでの要請です．芝生のきれいなグランドに着陸，救急車を待ちます．小学生や住民の皆さんが集まってこられます．程なく救急車も到着，いつものフォーメーションで車内へ．患者さんの意識レベルは少し悪いようです．皮膚も乾燥，血圧も低め．病歴を確認すると，熱中症も考えられます．これで昨日から3連続熱中症の出動です．輸液を行いながらTECCMCへ搬送となりました．

3件目　アナフィラキシー
　救急覚知同時要請です．小児のアナフィラキシー疑い．福本看護師はST1に小児用輸液セットで準備を進めます．小生と岡本先生は薬剤投与量の確認です．指定のランデブーポイント上空まであっという間に到着，しかし救急現場までは距離があります．この時点で救急隊はまだ患者さんと接触していません．では救急現場近くで着陸可能なところはないか見に行きましょう．上空から偵察すると，広い駐車場があります．救急車も近くに確認出来ます．1秒でも早い医療介入が患者さんの予後を決めます．消防の許可と支援隊到着を待って，安全に着陸，救急車も3分後に到着です．患者さんは？？確かに口唇に著名な腫脹を認めますが，幸い気道，呼吸，循環に問題はなく，元気に泣いています．ホッと一安心．救急医と小児科医の待つTECCMCへヘリ搬送です．

　さて，眠い目をこすりながらICU当直に入りましょう．朝まで平和な但馬でありますように・・・

写真は雲の上の夕陽です（お気に入りの1枚，本文とは関係ないです・・・）

　暑い日が続き皆様海に山にお出かけかとは思いますが，水難事故と熱中症には十分にお気をつけ下さい．ここ数日このような患者さんが多くなってきています．

本日のドクターヘリ（7件要請6件出動）
1件目　熱中症
　朝のカンファレンス開始直後に一斉PHSが鳴ります．救急隊現着後の要請です．脳血管障害疑い．発症時間によっては血栓溶解療法の適応です．ランデブーポイントまで10分弱，救急車はすでに到着済みです．速やかに車内に乗り込み診療開始．確かに何かおかしいのですが，脳卒中に合致しません．血糖も問題なし．病歴を聞くと，どうやら高温室内による熱中症が疑われます．輸液により意識状態も改善傾向にあり，麻痺もありません．ご家族の希望もあり，直近二次病院へヘリ搬送です．
　現場では確定診断をする必要はありません．疑わしきはヘリ要請し，現場で救急隊と医師が判断すれば良いのです．この地域の消防の意識は非常に高いです．

2件目　交通外傷
　高速道路トンネル内での単独事故との情報で同時要請です．機内では閉じ込め時の対応など，いろいろなことを考え準備をします．現場まで山をひとっ飛び，15分以内に到着可能！と，離陸後5分を過ぎたころでしょうか，「救急隊にて対応可能．キャンセル」との連絡．機内には安堵の空気が流れ但馬空港へ給油に向かいました．

3件目　小児の溺水
　救急覚知同時要請です．ランデブーポイントまで15分近くかかる地域です．同時要請こそが救命のチャンスを生みます！飛行中，年齢，性別など情報が錯綜しますが，最終的には我々が患者さんを診て判断すれば良いだけです．気にしません．ただ，重篤な状況であることに間違いありません．ドクターヘリは最高速度で飛び続けます．ランデブーポイントに着陸，数分後に救急車も滑り込んできます．相棒の三浦先生，林田看護師は前から，小生は後ろから車内に飛び込みます．一瞬にして状況を把握，救急隊員に指示を出しがんばってもらいます．三浦先生は気管挿管を，小生は骨髄内輸液を担当します．BIGにて骨髄内輸液路を一瞬で確保，薬剤投与を行います．三浦先生も一発で気管挿管を決めます．林田看護師は完璧な時間管理で場をまとめます．救急隊も一心不乱にがんばります．救急車内の救命チームは一瞬も乱れることなく，小さな命と向き合い続けました・・・「良し！ヘリ搬送可能，TECCMCへ！！」．皆の待つTECCMCへ，JA822Hはありったけの力で飛行します．

4件目　意識障害
　小さな命を松井先生に託した直後に要請です．美しい日本海沿岸の街，ランデブーポイントも海辺の公園です．情報は「突然の意識障害」．脳血管障害を疑うとのことです．暑い日が続くと血管内脱水から脳梗塞，心筋梗塞などの病気が増えてきます．いつもの綺麗な芝生の公園に着陸，救急車はすでに到着しています．患者さんは・・・確かに意識レベルは悪いようですが，鑑別も必要です．三浦先生が診察している傍ら，小生は点滴ルートを確保，ついでに血糖チェックを行います．10秒後，血糖測定器の液晶に「LOW」の3文字．ならばブドウ糖投与しつつ低血糖の原因を探ります．血糖降下剤の使用なし，食事後の意識障害・・・お腹に手術痕．家人にうかがうと，「胃の手術」だそうです．なるほど，原因はこれか！低血糖の時間が長かったのか，もう一つ意識の回復具合がすっきりしません．精査を兼ねてTECCMCへヘリ搬送です．

5件目　小児の意識障害
　覚知同時要請です．「○歳，意識無し」．機内の空気が張り詰めます．子供さんはいつも元気であって欲しいものです．ランデブーポイント到着直前に「意識あり，状態安定にてキャンセル」の連絡．一同胸を撫で下ろし帰投です．

6件目　熱中症
　覚知同時要請です．フライトスーツの下は汗で冷たくなっています．自分自身が脱水にならないようにヘリ内にはペットボトルを積んでいます．「ランニング中に突然倒れて意識無し」．この暑さなら熱中症の危険度大！10分少々でヘリはランデブーポイントに着陸，数分遅れて救急車も到着です．覚知から30分以内に診療開始です．ちなみにこの地域であれば，覚知から診療開始までに1時間以上はかかります．患者さんは合宿中とのこと．意識レベルは深昏睡．体温39度以上．状況，身体所見からIII度熱中症と診断します．脳の保護が最優先，であれば低酸素の回避が必要です．冷却輸液を行いつつ鎮静下に気管挿管です．呼吸補助と輸液で脈拍も接触時160以上から130台へ低下です．後はTECCMCで得意の集中治療管理を行いましょう！

　覚知同時要請の多い豊岡ドクターヘリですが，要請後キャンセルは1割程度です．いかに早く医療介入出来るか，それは同時要請しかありません．そのお陰で助かる命が確実に増えております！

　TECCMC近くの「神鍋高原（かんなべ）」ではラグビーの西医体も始まったようです．医師の卵であれば，自己の体調管理，怪我には十分注意して下さい．

今日から8月です

暑い毎日ですが，今日から8月です．だんだん日没時間も早くなってきてます．今日から夕礼時間が18時になりました．夕礼以降の要請応需は日没時間と出動場所との兼ね合いで判断しております．

　先日の大量血胸，胸椎破裂骨折の患者さんのsecond look operationを行いました．骨折部からの出血は制御されており，無事ガーゼ除去し閉胸出来ました．後は集中治療です．

本日のドクターヘリ（8件要請5件出動）
1件目　交通外傷
　軽自動車ごと用水路に転落した事案です．救助に時間を要する可能性もありドクターヘリ要請になりました．ランデブーポイントから現場まで支援車で移動，胸部に圧痛，動揺あり．TECCMCに搬送となりました．
　ランデブーポイントには昨日講演を聴いて下さった住民の皆様がおられ，我々が現場活動を行っている間，操縦士さんからドクヘリの説明をしていただきました．

2件目　溺水CPA蘇生後（施設間搬送）
　小児の溺水CPA蘇生後の転医依頼です．現場で適切な心肺蘇生術がなされており，意識も戻っています．しかし呼吸状態が悪く高次治療目的にTECCMCへ搬送となりました．
　水難事故が増えています．皆様，十分に気をつけて下さい．

3件目　大動脈解離（施設間搬送）
　施設間搬送のお手伝いです．手術など早急な対応が必要な疾患です．搬送中の循環管理も必要になります．搬送時間の短縮，搬送中の安定化にもドクヘリは有効です．

4件目　溺水
　3件目の施設間搬送中に要請です．速やかに患者さんを引き継ぎエンジンカットなしで離陸します．現場はかなり遠く，救急隊は海岸線（岩場）をつたってのアプローチです．途中，海上保安庁のヘリも出動している情報が入ります．ドクヘリが現場上空に差し掛かった時，前方から海上保安庁のヘリが到着です．ドクヘリは近くのランデブーポイント（自衛隊のヘリポート）に着陸し救助を待ちます．現場では救急隊が必至の救命処置を行っています．現場で本事案のプランニングを行います．海上保安庁のヘリで患者さんを吊り上げランデブーポイントまで搬送，そこで我々に引き継ぐこととします．ドクヘリは海上保安庁のヘリが着陸出来るように，ヘリポートの隅に移動です．しばらくすると海上保安庁のヘリがやってきました．機体が大きい分，ダウンウオッシュが強く飛ばされないように注意します．安全を確認の後，海上保安庁から患者さんを引き継ぎます．
　医療，消防，海上保安庁，自衛隊，警察を多くの職種とコラボした事案です．ご協力いただきました皆様，ありがとうございました．今後ともよろしくお願い申し上げます．

5件目　転落
　4件目の事後処理中に要請です．しかも今いるランデブーポイントの近くでの事案のようです．直接消防無線で依頼がきました．では，このままランデブーポイントで待機し待ちましょう．病院まで30分以上かかる地域ですが，5分で医療介入が開始出来ます．程なく救急車が到着，幸い生理学的徴候は問題なく，体幹部にも問題ありません．ヘリで一番近い受入可能な病院へ搬送し帰投します．
　3連続ミッションでした．

　本日も暑い中，お疲れ様でした．

講演会

　本日はドクヘリ勤務の合間に朝来市に講演に行ってきました．「朝来市の医療を考える」と題したフォーラムです．地方における救急医療にこそドクターヘリが有効，といった内容と，この3ヶ月間のドクヘリ事業の報告をしてきました．お招きいただいた朝来市長さんはじめ，関係者の皆様に感謝いたします．今以上に地域住民の皆様に密着するドクターヘリでありたいと思います．

　夏休み，週末ということで，WALK INはいつも以上に賑やかです．緊急度，重症度に応じた診療を行います．長時間の待ち時間が生じることを御了解いただきます．

本日のドクターヘリ（講演のため記録用紙からの転記です）
1件目　木に押しつぶされた
　幸部先生，米田看護師のフライトです．山中で伐採した木の下敷きになっているとの要請です．ランデブーポイントから支援者で山中へ．幸部先生，毎回山登り・・・救助された患者さんと山中でドッキング（写真）．非常に厳しい状況のため，救急車で近医への搬送となりました．

2件目　アナフィラキシー
　小生が講演から帰って運航管理室にいた時に要請です．同時要請でした．「アナフィラキシーの疑い」．幸部先生は1件目の搬送中．ならば幸部先生を残しヘリだけ帰投，小生をピックアップして現場に向かう指示を出しました．ヘリは速やかに離陸，とその直後に「近医対応可能にてキャンセル」でした．軽症で一安心．

3件目　熱中症，意識障害
　2件目の直後に1件目と同じ消防の管内で事案発生．ヘリは幸部先生をピックアップしランデブーポイントに向かいました．剣道の練習中に意識障害．同時要請です．熱中症を疑いTECCMCヘ搬送されました．

　屋内でも熱中症は発生します．皆様，十分にお気を付け下さい．

　今月のドクターヘリ出動件数は81件，要請件数は97件でした．全ての要請に応えられるよう迅速な現場対応に心掛けます．来月以降もよろしくお願い申し上げます．