【今週のワンポイント-9】決戦の大鎧 | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 今回のワンポイントは栴檀(せんだん)の板と鳩尾(きゅうび)の板。

 上級の武士が着ている大鎧の両胸に付いている、四角い札のようなもの、左右で形がちがうことに気がつきましたか? これは別に勲章でも飾りでもなく、れっきとした防禦用のパーツだ。右胸(向かって左側)に付いているのが、栴檀の板。左胸(向かって右側)が鳩尾の板だ。

 鎧の胴は、肩紐で吊るタンクトップになっているので、肩紐を切られると「いや~ん」状態になってしまう。そうならないように、肩紐を守るパーツが栴檀の板と鳩尾の板なのだ。では、なぜ左右で形がちがうのかというと … 。

 大鎧をよく見ると、胴の断面形が四角くて箱のような形をしている。草摺(くさずり)というスカート部分も4枚に分かれているから、裾のついた4枚の板を組み合わせて、箱にしている、と思えばよい。また、腕には大きな板状の袖がつく。つまり大鎧とは、4枚の楯を身にまとった形だと思えばよい。

 この形は一見、動きにくそうに思えるが、馬に乗ると前後の草摺が鞍に乗っかるので、鎧の重さを鞍がささえてくれて、動きやすくなる。大鎧とは、乗馬戦闘用の防具なのだ。そして、この時代の主力兵器は弓矢。つまり、馬に乗って弓で戦うための形として完成されたのが、大鎧なのである。

 肩紐を守るパーツが左右でちがうのも、このためだ。栴檀の板は、弓を引くときに右肩が動きやすいように、鳩尾の板は胸の隙間にピタッとはまって、弦が引っかからないように、それぞれ工夫された形なのである。

 ただし、こういう作りにすると、構造が複雑になるし工数も増えるから、お値段も張る。下っ端用の安物の鎧(腹巻という)では、大きな袖の代わりに杏葉(ぎょうよう)という小さな防具を付けて、肩を守っている。ただし、栴檀の板も鳩尾の板もないから、肩紐を切られると「いや~ん」になっちゃうのが、安い鎧のつらいところだ。

 以上のような大鎧の基本構造が何となく頭に入っていると、この先のドラマの展開で、ちょっと楽しめる事があるかもしれない。

 

(西股総生)

 

《ワンポイントイラスト》

 

 

大鎧の栴檀の板、鳩尾の板。どちらも馬上で弓を使うことに特化した形!!

 

(みかめゆきよみ)