【今週のワンポイント-5】髪の毛の約束 | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 今週のワンポイントは、烏帽子(えぼし)。

『鎌倉殿の13人』に登場する武士たちは、みな烏帽子をかぶっている。頼朝がかぶっている縦に長いタイプは立烏帽子(たてえぼし)。義時たちのは折烏帽子(おりえぼし)といって、立烏帽子を折りたたんだもの。こちらの方が動きやすいから、武士もふだんは折烏帽子をかぶる。

 この時代の成人男子は、ロン毛をてっぺんで結んで髻(もとどり)をつくり、烏帽子をかぶるのが基本。武士だけでなく、庶民も大人の男子なら烏帽子をかぶる。いま、マスクをせずに外を歩いていたら「やばい人」と思われるのと同じように、この時代、烏帽子はまともな人の証しみたいなものなのだ。だからこそスキンヘッドのお坊さんは、特別な存在として俗人と区別されるのである。

 男は、大人になったら髻は人には見せないのがたしなみだから、寝るときも温泉に入るときも烏帽子はかぶったまま。烏帽子を落として髻を見られるのは、パンツを下ろされるより恥ずかしいのだ。

 武士の場合、兜も烏帽子の上からかぶるので、かぶとのてっぺんの穴から烏帽子の先っちょがピョコンと出ることがある。この穴を「天辺(てへん)の穴」と呼ぶ(まんまな名称である)。

 この時代の兜は、短冊状の鉄板を継ぎ合わせて鉢(ヘルメットの部分)を作る。ただ、製作技術が未発達なので、てっぺんに大きな穴ができてしまう。兜の鉢に付いているヘビメタ風のイボイボは、鉄板を継ぎ合わせるための鋲(リベット)だ。

 天辺の穴は、戦いの時には弱点になってしまうので、時代が下るとともに製作技術を工夫して、穴は小さくなっていった。それとともに、烏帽子を脱いでザンバラ髪で兜をかぶるようになって、武士は人前で烏帽子を取っても恥ずかしいと思わないようになっていった。

 

(西股総生)

 

《ワンポイントイラスト》

 

 

合理的に考えれば闇討ちだけど、それじゃあまりにも華がないじゃない!?(火矢でGO!)

 

(みかめゆきよみ)