租税法論文の表記は何に基づくべきか?国税庁の『公用文の書き方』は使えない!(書き直して5度目の掲載)
<はじめに>
私、TAXMANIA55は、既に複数の租税法の特任大学教授の職からは離れています(令和5年4月1日現在)。
ただし、白桃書房から出版した『租税法修士論文の書き方』は未だに売れ続けていて、その内容の照会も度々あります。
これが、今回、租税法論文の表記は何に基づくべきか?(書き直して5度目の掲載)を掲載した理由です。
「租税法修士論文を作成するときに、何か指針になるものがないか」という照会が度々あります。
そして、それは、我々税理士が記述する「租税法論文」でも根幹は同じだと思いますが、繰り返し、繰り返し、何を基準にするべきかが問題になります。
大学や学会には執筆要項が定められているものも少なくないので、まずはそれに従うべきであることは言うまでもありませんが、問題になるのは、そこに書かれていないものということになるのでしょう。
<国税庁の『公文書の書き方』が繰り返し話題になる理由>
「……何か指針になるものがないか」という照会の中には、国税庁の『公文書の書き方』について説明してほしいという内容も必ずと言っていいほど含まれています。
なぜ、いまさら、1950年版を最後に一般公開されていない国税庁の『公文書の書き方』が問題なのか大きな疑問もありますが、国税OB税理士の中に共通の勘違いがあるのかもしれません。
<使うべきは、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』>
結論から言うと、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.を使うべきです。
これ以外は使いません。
理由は明白で、中央官庁や立法府である衆議院、参議院等が、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.を用いているからです。そして、2011年版が最新版で、2010.「公用文における漢字使用等について」と2010.「常用漢字表」に対応しています。
租税法の修士論文は公文書ではないのではという素朴な疑問が沸くかもしれませんが、大学院生により作成された租税法修士論文は多くの場合国税審議会に提出されることを考えると、基本的に公文書を意識した記述が必要です。
我々、税理士が執筆する税法論文も原理原則は同じです。
新日本法規等他の用字用語事例集を用いている中央官庁は私は聞いたことがありません。
<国税庁の『公用文の書き方』は使えない>
<情報公開法による公文書の取得、勝手に持ち出せば国家公務員法に抵触>
次に、国税庁の『公用文の書き方』について説明します。
様々な理由で、警察庁や国税庁は独自の文書の書き方を内部的に定めています。
そして、ここからが大事なところですが、国税庁の『公用文の書き方』は1950年版を最後に一般に公表されていません。その後更新されている国税庁の『公用文の書き方』は非公開文書なので、引用はもちろんのこと、文書の持ち出しそのものができません。
勝手に文書を持ち出せば、国家公務員法抵触の可能性が濃厚です。
仮に、情報公開法を用いて国税庁の『公用文の書き方』を取得したとしても、それを正式に引用することは難しいというのが結論です。
いや、国税庁の『公用文の書き方』は使ってはいけません。
勝手に役所の文書を持ち出せないのは自明のことです。
<おわりに>
このような話は、元税務職員であり、研究者であり実務家でもある私、細川健にとっては常識的な話です。
「中央官庁や立法府である衆議院、参議院等が、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.を用いている」というのも確かな情報です。
とは言え、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.を随時確認しながら、長文の論文を作成するのは大変なことです。実を言うと、論文を書いていて私もしょっちゅう間違えます。×「気がついた」は◯「気が付いた」が正しい表記です。◯「回答を下さい」、◯「資料を下さい」は◯「下さい」ですが、×「貸して下さい」は◯「貸してください」が正しい表記です。
例えば、「かんがみるは鑑みる」、これは、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.の表記を見ると△鑑みるとなっています。
正しいとか間違えているとかではなく、昔は常用漢字ではなかったので公用文でも平仮名を使っていたけど、常用漢字表が改訂されて漢字になったから公用文もそれにならって「鑑みる」になったということです。
1つの文章や法律を複数人で書くときに基準がないとバラバラになってしまう、基準が必要だということで、最新の公用文の用字用語集に基づいて直すと、「鑑みる」が正解です。
迷ったら、ぎょうせい公用文研究会編.2010.『最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応』.ぎょうせい.を辞書的に使ってください(2022年に増補版が出版されました。)。
繰り返しの確認ですが、国税庁の『公用文の書き方』や他の出版社の用字例は使えません。