印刷技術 苦手な事ほど徹底的に | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

コロナ禍で、出歩く事もまま成らず、休みの日は朝から晩までギター三昧です。

歌無し、ピック無し、指弾きのみのクラシックギターの様なフィンガーピッキング

と言う分野ですので、一曲をマスターするまでに、1ヶ月とか平気で掛かってし

まいます。(まぁ、私がヘタクソって事なんですけね~(笑))

 

チョッと難しい曲に成ると、「こんなフレーズ弾けるかッ!」ってな箇所が必ず

出て来ます。何度も何度も練習するんですが「人差し指でここを押さえたまま、

小指でそこを押さえるって、そんなん、どうあがいても届かんやろッ!」ってな

感じで、まさしく、楽譜(タブ譜)と格闘ですわ~。

 

でも不思議なもんで、何十回やっても今日は出来なかった事が、次の日には、

「あれッ!出来るじゃんッ!」って成るんですわ。ギターで弦を押さえるのはね、

左手なんですが、この歳(60過ぎ)に成っても、指って伸びて行きます。必死に

広げて伸ばし続けてると、伸びるんですわ。私の場合だと、右手の指に比べて

左手の中指、薬指、小指は、それぞれ5mm位、長く成っています。

 

苦手だからと、避けて通っていれば、永遠に出来ないままですよね。こいつを

何とか出来る様に成ってやろうッ!と努力を続けていれば、必ずウマく成って

行きます。これはね印刷技術も同じだと思うんですよ。

 

この紙は給紙が難しくて、止まってばかりだから嫌いだとか、デリバリィの方でも

全く揃わないから、もうこの紙はやりたくない!と言って、避けてばかりではねぇ、

こりゃいつまで経っても出来る様には成りませんわね。苦手だからこそ徹底的に

やる。必死に成って、そればかり積極的にやってみる。

 

それまで避けて通っていた苦手な物と真剣に向かい合ってみると、そこから発見

出来る事ってイッパイ有ったりするんですよ。「そっか、こう言う紙は、こう調整した

方が安定するんだ。って事は、あの紙も、この調整の方が絶対にイイよなぁ~。」

とか、「届いたばかりの紙より、三日前から在庫してる紙の方が安定してる。これ

って何かで読んだ、紙を工場環境に慣れさせるってヤツか。であるならば、紙の

発注時期を考えて、計画的に紙を保管した方がイイって事か~」なんてね。

 

「汚れ」なんてのも同じです。「この印刷機は汚れが出易いから、水を多目にして

刷らないと何とも成らん」と考えてしまえば、それで全て終わりで、そこから成長

する術は有りませんよね。汚れってヤツと徹底的に向き合って「水を多目にする

事無く解消させる方法」ってヤツを、必死に追及してみるんですわ。

 

ローラーニップは、どう成ると汚れが出易いのか。それが解れば、その逆の方向に

制御するようにしてやれば、必ず良い方向に向かいますよね。全く解からない事

って言うのはね、まず真逆の事をやってみるんですわ。汚れを出さない方法が全く

解らないのであれば、汚れが出易いと思われる方法を試してみる。それで本当に

汚れが出易く成るのであれば、その逆の制御が正解だって理解出来ますよね。

 

ローラーニップの正解が、ある程度解れば、今度はインキの量です。まずメッチャ

多目にインキをローラーに撒いて刷り出してみる。インキが多過ぎれば湿し水も

多目にしないと汚れが止まらないって事が理解出来ると思います。

 

今度は、逆にメッチャ少な目にインキを撒いて刷り出してみる。・・・これ中途半端

はダメです。本当にメッチャ少な目のインキ量で試してみるんですわ。超少な目な

インキだと、湿し水を、かなり絞っても汚れが出ません。それでも、汚れが出る所

まで目盛りを絞って、「まだ淡い(濃度が足らない)けど、汚れが出てる」って言う、

そんな状態を作ってみて下さい。

 

そこから、本当に少しづつ、湿し水を多くし、これまた本当に少しづつインキの量も

多目にして行く。これを慎重にやってみるとね、意外なくらい少ない水でも汚れが

出ない、しかも濃度もバッチリ!って言う状態が作れます。「ええッ!こんな水の量

でも汚れないのかよう!しかもインキも、こんなに少なくても充分に濃いじゃん!」

ってな所がつかめたら、こりゃ、湿し水の使い方、免許皆伝!ですわ。

 

いつも言う様に、インキも水も、出来るだけ少な目がイイんです。これをマスター

するとね、ほとんどの印刷トラブルが無くなります。「汚れ?なにそれ(笑)」って

感じです。少な目での技術を身に付けると、色調の安定性が抜群に成ります。

「色ムラ?なにそれ」。ベタの中の細い抜き文字の埋まりとか、ブランの汚れ等も

凄く楽に成るので、ブラン洗浄の回数が圧倒的に減ります。

 

まぁねぇ、大忙しの時に、こんな練習みたいな事は、なかなか出来ませんよね、

少し暇に成って、余りの紙が有ったりしたら、自分の技術を見直す為に、是非、

挑戦してみて欲しいんですよ。これね、難しい技術をマスターしろと言っている

ワケじゃなくて、今一度、オフセット印刷の基本に立ち返れって話なんですわ。

 

いつもやらない、こんな事から発見出来る事って、意外に多いんですよ。(^^)v