印刷技術 基準値? | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

当社では、毎年5月頃に健康診断が有ります。健康診断を受診するに当たり、

問診表みたいなのに記入しますよねぇ。・・・問:あなたは食べるのが遅い方だと

思いますか?みたいな感じのヤツです。私は社内の男性陣とランチに行くと、

必ず最後まで食べてるので、遅い方か?と聞かれれば、完全に、Yesです。

 

普通に考えれば、こんな質問に答えるのなんて、スゴく簡単だと思うんですけど、

まぁ世の中には、いろんな人が居ますねぇ~。「ええっ?部長と比べたら速い方

だと思うけど、課長よりは遅いから、どう答えて良いのか分からん。」 なんてね。

 

基準値を、どこに置いたらいいのか、何を判断基準にしたらいいのかを決められ

ないから、ヘリクツをこね回して、まともな回答が出来ない。まぁ、冗談で言って

るんならねぇ、まだマシなんですが、こう言うヘリクツをマジで言う人も居ますね。

そう言うヘリクツ屋さんはね、印刷技術者には向かないんですよ。

 

印刷のオペレーションってね、比較 ⇒ 検討 ⇒ 判断 ⇒ 実行、の連続ですよね。

色合わせ作業なんて、この最たるもんですわ。色調見本と比較して、どうなのか

を検討し、ヨシ!少し紅を盛ろうと判断して、壺キーや元ローラー回転量の変更

を行う。これを繰り返して、色調を合わせると言う作業ですもんね。

 

出し難い用紙の給紙調整も、検討と判断の繰り返しだし、見当合わせ作業や、

様々なトラブルに対する対応にも、超迅速な検討と判断を求められますよね。

判断が遅ければ無駄な時間が過ぎて行くだけだし、印刷中の判断が少しでも

遅れれば、不良品を量産してしまう事に成ってしまいますよね。

 

印刷オペレータってのは、次から次に、瞬時の判断を求められる仕事なんですよ。

判断し、即座に実行し、実行前との比較をして、その違いを検討し、また判断する。

このルーティンの繰り返しが印刷オペレータの仕事ですわね。この時にヘリクツを

こね回してるヒマなんて無いんですよ。ヘリクツをこね回すどころか、迷っている暇

さえ無いってのが印刷の実務ですね。

 

判断が遅れる。判断出来ない。って言うのはね、一番大きいのが、経験値の差

なんですよ。・・・経験値って言っても、長い年月、オペレータをやっているって言う

意味ではないですよ。30年やってたって、出来ない人は出来ないんですわ。

 

技術屋の経験値ってのはね、どれだけ挑戦したか?どれだけ失敗したか?って

事が最も重要なんです。挑戦し、失敗した数が多ければ多い程、経験値が高い

んです。何も考えず漠然と過ごした30年よりも、必死に立ち向かった、たった2年

の方が、明らかに経験値が積めている!・・・それが技術屋の仕事なんですわ。

 

「食べるのが遅いか速いか?」 ボケ~ッと生きてる人間は、そんな簡単な質問

にすら即答する事が出来ないし、ヘリクツをこね回す。食べるスピードに関しても

挑戦をし失敗を重ねれば、その経験値から回答を導き出すのは簡単な事です。

 

「今日は大忙しで、昼休みも印刷機を止めたくないから、昼飯を3分で食べる!」

そんな挑戦をしてみたら、消化不良で苦しんでしまった。なら、5分ではどうか?

やっぱりダメだった~。オレは早食いしたら、簡単に胃がダウンしてしまうから、

忙しい時は、印刷機を回しながら、印刷機の前で、ゆっくり食べよう~。まぁこれ、

実際に、私の若い頃の話なんですけどね(笑)。

 

3分や5分で食べても平気な顔で印刷機を回してる人が居るのに、挑戦したけど

私にはそれが出来なかった。そこで私には、その経験から基準値が出来上がり、

「私は食べるのが遅い」と言う結論を出す。ってなワケなんですよ。

 

「そんな、3分で昼飯を完食するような、バケ者と比較したってアカンやろ~」等と

ヘリクツ屋さんは、きっと言いますわね。私に言わせればね、基準値を作る時に、

「下」を見てどうするのか。技術屋ならば、常に「上」を目指すのが当り前やろッ!

って言いたいですね(笑)。

 

正直なところ、私が印刷機オペレータだった頃は、比較も検討も判断も、意識して

やってはいませんでした。あえて考えなくても、理想の形は、すでに見えているし、

頭で判断する前に、自分の手が勝手に実行している。そんなオペレータさん達が

世の中には沢山おられます。

 

そう言う人達ってね、漫然とやってる人の何倍も挑戦し、何倍も失敗するってのを

若い頃に散々やって来た人達なんですよ。挑戦し失敗するってのはね、こりゃ~、

並々ならぬ苦労なんですわ。でもその苦労の一つ一つが技術屋として、非常に

尊い財産に成って行く。「若い頃の苦労は買ってでもせよ」なんて、メッチャ古い

言葉ですが、その苦労の全てが自分の為だと思って、どうか頑張って頂きたく、

心より思う次第です。