印刷技術 湿し水の科学2 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日の続きです~。なので、冒頭の注意書きも、先日と全く同じ、

あくまでも『科学』なので、化学者諸氏からのクレーム等は無しで~(笑)。

 

40年前は、1時間当たり、6千回転とか、8千回転ってのが普通だったのに、

どんどん印刷機の高速化が進んで行きましてね。まぁそれでも、モルトン給水

って言う、メッチャ水が多い方式だったので、なんとか対応が出来たんです。

 

そして、ついに連続給水ってシステムが登場します。これね、初登場の時は

凄かったらしいです。アルコール(IPA)を、20%も入れてやらないと、刷れ

なくてね。その発表会会場は、メッチャ、アルコール臭かったとか(笑)。

 

IPAは、ご存知のように、第二種有機溶剤ですから、人体に対して有害です。

・・・って、この当時、そんな事を言う人は、一人も居なかったんです。だってさ、

ブラン洗浄にホワイトガソリン使ってたり、トリクレンとかをウエスに付けて、

素手で扱ってた時代ですもんねぇ~。

 

でも、この連続給水システムが普及するのに従い、アルコールの使用量を

減らそうと言う点がクローズアップされて来ました。んじゃ、どうやって減らす

のか?・・・ここで満を持して復活して来るのが、エッチ液屋さんなのです!

 

PS版に成ってから、軽視され続けて来たエッチ液。これをアルコール減量の

ために使えないか?アルコールは、要するに活性剤。であるならばだ、何か

他の活性剤で、アルコールの代用が可能なのではないか?

 

活性剤ってね、メチャメチャな種類が有るんですよ。それらを色々試して行く

ワケなのですが、水と混ぜて攪拌して、その後、数日間で沈殿したり分離し

てしまったりする活性剤は、エッチ液としてアウトですわね。

 

開発当初の、ノンアルコール用エッチ液ってのは、まぁ、何とかまともにIPA

無しで刷れればイイや~。てな感じだったのですが、それ以降、さまざまな

機能が、エッチ液に求められるように成って来ました。

 

例えば、調量ローラーにインキが絡み難い!と言う機能を持たせた物。

代替アルコールの性質を強化したタイプの物。UV印刷に特化した物や、

輪転機専用の物等、本当にメチャメチャな数のエッチ液が出されています。

 

こりゃね、どのエッチ液を選んだらイイのか、本当に迷ってしまうんですが、

こう成ってしまった事の一番の原因は、各印刷機メーカーとも、給水形式が

全て違うって所なんですよ。例えばね、ハイデルさんのアルカーラーと、

小森さんのコモリマチックって、両極端なシステム構成なんです。

 

今は色々出来るように成ってるかも知れませんが、アルカラーシステムは、

インキのローラーと、湿し水のローラーを、ブリッジローラーってヤツで連結

させて、そのどちらへも、インキも行くし、湿し水も行く。いわゆる強制乳化!

みたいなタイプですよね。

 

それに対して、コモリマチックは、ブリッジローラーは一切無し。ローラーを

洗浄する際には付けるかもですが、基本的に印刷中には使わないですね。

この両極端な二つのシステム。これね、インキと湿し水が、一番最初に

出会う場所ってヤツが、圧倒的に違いますよね。

 

アルカラーは、ローラー上でインキと湿し水が出会います。コモリマチックは、

ローラー上ではなく、刷版上でインキと湿し水が、初めて出会うんですわ。

こんなに形式や機構が違えば、当然の様に、我々の使い方も違って来ますし、

それぞれの形式で、苦手な絵柄や、得意な絵柄ってヤツが出て来ます。

 

また、当然の様に、トラブルの出方ってのも、全く違うんですよ。と言う事は

ですねぇ、エッチ液も、それぞれのシステムに合った物を選択しなければ、

その性能を充分に発揮する事が出来ないって事なんですわ。

 

いやいや、当社のエッチ液は、どんなタイプの給水システムにも、バッチリ

適合します!・・・そりゃね、100点満点中、70点や60点で良いのならば、

どんなシステムにも合うでしょう。でも、限りなく100点満点に近い性能を

求めるのであれば、やはり、そのシステム専用の物が必要なのですわ。

 

これはスゴく簡単な話ですよね。給水の形式が違えば、トラブルの出方が

違う。トラブルの軽減や、解消って言う性能も、エッチ液には求められてる

ワケですから、当然の様に、その給水システムに合ったエッチ液が、必ず

必要に成って来る。・・・自分のシステムに合ったエッチ液に出会うとね、

印刷がメッチャ楽に成ります。かなり面倒ですが、頑張って探し出してみて

下さいませ。