印刷技術 湿し水の科学3 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

2回で、やめようと思ってたんですが、調子に乗って、もう1回(笑)。

 

例えば、使っている印刷機の給水機構で、ブリッジを着けるか、着けないかの

選択が出来る機構の物が有りますよね。・・・ブリッジって、インキローラーと、

水ローラーを連結させるローラーの事です。

 

ローラー洗浄時だけは着ける。とかじゃ無くて、印刷中に、着けるか着けないか

の選択が可能な機構が有ります。旧リョービ機だと、「インテ」か「セパ」かって

言う切り替えです。旧三菱機なら、ADか、半AD、またはITDなんてヤツです。

(古いリョービ機って事じゃなく、RMGTの中の、以前のリョービ機って意味ね)

 

実はね、こう言う便利な機構が付いてるのに、使っていない人の方が圧倒的に

多いんですよ。印刷立会いをしてて、「あ、これ、ブリッジ着ければ楽じゃん」って

言うんですが、「ブリッジ着けると、水回りが激変して、汚れてしまうので、あまり

使いたくないんですわ~」  ・・・あらま、情けない。せっかく付いてる機構はさぁ

有効に使ってやらないと、損だよ~。

 

「いや、ブリッジって難しいですよねぇ~」・・・こらこら、じゃハイデルさんみたいに、

ブリッジが着きっぱなしで離す事が出来ない機械の場合はどうするの?「いや、

オレ、ハイデル使わないですから」・・・まぁそうかも知れんけど、自分の印刷機に

付いてる機構なんだからさ、せめて、その特徴だけでも把握しておきなよ。

 

ブリッジを着けるか着けないかで、もっとも変化するのは、インキタックなんです。

ブリッジを着けて、インキローラーへ、強制的に湿し水を送り込んでやるとね、

インキの中へ湿し水が混ざり込んで、タックが落ちてくれるんですわ。

 

「んで、それって、何に使うんですか?」・・・いや、だからさ、今、刷ってるような、

グレーの総ベタの印刷。紙が上質紙だから、さっきから、いっぱいヒッキーが出て、

ゴミ取りで走り回ってるよねぇ。この時に、ブリッジを着けてやるとインキのタックが

自然に落ちるから、ベタの中のゴミ乗りがメッチャ楽に成るんだよ。

 

あとね、この油性機だとパウダーを降るよね。片面を印刷して、裏面の仕上がり

面を刷る時って、1色目のブランにパウダーが残ってしまって、頻繁にブランの

洗浄をする事に成るじゃない。この時も、1色目だけ、ブリッジを着けて印刷して

やると、版面からブリッジとかを通って、パウダーを水舟に戻してくれるんだよ。

 

ブリッジを着けるか着けないかで、1色目ブランのパウダー残りが、メチャ変わる

からさ、1度試してみるとイイよ。「ええッ!そんな有効で便利なシステムなら、

常に、ブリッジを着けた状態で使えばイイじゃないですか。」

 

・・・そうだね。そうやって割り切ったのが、ハイデルのアルカラーだよね。常に

ブリッジを着けっ放しにしてる。でもね、構造的には、まるで違うんだよ。特別に

保水ローラーなんてのを付けて、様々なトラブルに対応してるってワケだ。

 

「ブリッジを着けた場合のトラブルって?」・・・インキと水のローラーを常に連結

させてしまってるって事はさ、非連結の場合と比べたら、インキローラーの方へ

湿し水が入って行ってしまい易いって事だよね。って事はだ、乳化し易いって

事なんだよ。特にヤバいのは、絵柄が少なくて、通し枚数が多い印刷物。

 

絵柄が多ければ、インキが沢山消費されるから、乳化してるヒマなんて無いん

だけど、絵柄が少ないと、インキが消費されずに、どんどん湿し水が入って来て

しまうから、乳化して乾燥不良や裏移りの原因に成ってしまうんだよ。

 

「やっぱり、ブリッジ使うのヤメときます!」・・・いやだからさ、良い所も悪い所も

全部、把握した上で、有効に使うってのが、プロの技術屋ってもんだろう~。

わざわざ開発コストを掛けて、付けてくれてる装備なんだからさ、有効に使って、

良い印刷物を、楽に刷れるように成って下さいませ!(笑)。