印刷会社の営業さん達は、毎日毎日、印刷物の見積もりをしています。
特に仲間仕事や、下請けの印刷会社の営業さん達は、見積もりでの
値段競争で、仕事が取れるか取れないかが決まってしまいますので、
ギリギリまで利益を抑えたり、外注加工先との値段交渉等で必死です。
今時は何でも「相見積もり」ってヤツで、「最低でも3社から見積もりを取れ」
なんて言われてしまっていますから、メッチャ頑張って、必死に安くしたのに、
ライバルの印刷会社さんから、自分の見積もりより、ほんの少しでも安く、
見積もりを出されてしまったら、こりゃもう、仕事を取る事が出来ません。
この値段競争と、もう一つ、営業さん達を悩ませるのが、納期ってヤツです。
せっかく値段競争に勝って、仕事を受注出来たのに、自社の印刷機の予定が
イッパイで刷る事が出来ない。外注先も当たってみたけど、やってくれる所が
無い。・・・これじゃ、受注不可能ですよね。
印刷物を受注する事が出来なかった。いわゆる「失注」ってヤツです。
でもね、見積もりが高くて失注しても、まだ次のチャンスが有ります。「前回の
見積り、ほんの少しだけ高かったからさぁ、もう少しだけ頑張ってよ~」 とか
言ってもらえれば、何度でもチャンスが回って来ますよね。
納期に関しても同じです。「前回は凄くイイ見積りを出してくれたのに印刷機が
空いてなくて残念だったよね。今回は何とか頑張って!」・・・値段や、納期って
ヤツで負けても、また何度でもチャンスを頂ける可能性が有るんですよ。
でもね、出来上がった印刷物の「品質」ってヤツはね、1回でも負けてしまうと、
もう二度とチャンスが巡って来ません。「値段は安いし納期対応もイイからさぁ、
御社にお願いしたんだけど、あんな粗悪品質じゃ、今後は、安心してお願い
出来ないよ。前回はクライアントからメッチャ叱られてしまって、『こんな色じゃ
ダメだ!ここに汚れが出てた物も有ったし、乱丁や落丁も見付かってるぞ!』
とか言われて、半額の値引きだよ。」
「ウチの社長が平謝りに謝って、なんとか取引停止は免れたけど、もうオタクの
印刷品質にはコリゴリだ。社長からも今後は絶対に出すな!って言われたので、
もう御社に印刷物をお願いする事は、絶対に無いからさ、諦めて。」
品質でダメだ!と言われたら、もう二度と仕事は戻って来ません。粗悪な品質で
しか作れない印刷会社は、どんどん仕事が減って行き、やがて廃業、倒産です。
では、これほど大切な「品質」。それを高度なレベルで保持し成長させて行くべき
責任は、どこに有るのでしょうか?・・・これはね、100%現場に有ります。
「いやいや、あのバカ営業が、これでイイって言ったから」とか、「ウチの印刷機は
もう古くて良い物は刷れないから」、「工場環境が悪くて、まともな印刷が出来ない」
「資材を自由に選ばせてくれないから、これが限界だ」、「アホな若手ばかり採用
して、まともな技術者を育てられない」、「ウチは経営者がバカだから」・・・。
「出来ない理由」なんてのはね、簡単に10も20も出せるんですよ。自分の責任を
全て他人に押し付けて自分を正当化してしまえば、そりゃ気楽でイイですわね。
でもね、こと「品質」ってヤツだけは、その責任を現場の技術者が、全て負わなけ
れば成らないのです。品質が悪ければ、それは全て技術者が悪いのです。
営業や経営者など、他人に文句を言えるほど、印刷技術に関して、あなたは勉強を
しましたか?あなたの技術は、他の誰にも負けないくらいに、素晴らしものですか?
技術者には、謙虚さが必要です。例えば、自分が印刷した物が完璧だったとしても、
それが製本段階でミスした。「あの製本屋はアホだ」 と言って製本屋の責任にして
しまえば、技術者としての成長は、そこで全て終わってしまいます。
製本屋でミスが発生したのなら、その製本屋さんまで足を運んで、どんな作業をして
いるのかを実際に自分の眼で見て来る。ああ、こりゃ大変な作業やねぇ~、だったら、
次回からは、こうやって刷って、こう言う形で印刷物を納入させてもらった方がイイね。
その現場に実際に行ってみれば、勉強する事は山ほど有るんですわ。
営業がアホだと思うなら実際に自分も営業と同行して、お客さんに直接会って来る。
お客さんの言葉を、営業経由で聞くよりも、直に聞けば、その重みが分かりますし、
現場の人が、自分達の印刷物の打ち合わせに来てくれた!と、お客さんも喜ばれ、
絶大な信頼関係が出来上がるのです。信頼関係ってヤツはね、時には、値段や
納期に勝る武器に成るんです。「値段も高いし、納期もヤバいけど、オタクに任せて
おけば安心だから、宜しくお願いしますわ~」ってね。
品質は、100% 現場の責任! そう考えれば、やれる事、どころか、絶対にやらな
ければ成らない事ってのが見えて来ます。品質で失敗したら、二度と仕事は戻って
来ない。品質は100%現場の責任。これからの印刷会社は、現場が、我々技術者が
引っ張って行く時代なのです。