「このインキは、『水幅』が狭くて、メッチャ使い辛いからイヤだ~」
な~んて言う話を、時々、聞きます。 この「水幅」って言うヤツ、
簡単に言ってしまえば、「水を少なくして汚れる⇒多くして乳化する」
って言う、このトラブルが起きてしまう、両極端の中の良好な範囲。
この範囲を指して、水幅が広いとか、狭いとかって言いますよね。
でもね本当にウマい人、湿し水を、いつもキッチリ極限まで絞ってる人
には、この「水幅」ってのが理解出来ないんですよ。私もその中の一人
なのですが、極端に言ってしまえば「幅」なんて要らないんです。
下限の、水を絞ったら汚れるって言う、水が少ない側に関する、極限
状態での性能に関しては、メッチャ重視しますが、水が多くて乳化する
って言う方向での印刷ってのを、やった事が無いので、水が多い方の
上限ってのは本当に理解に苦しみます。だから幅ってのが分からない。
昨日、書いたように、私は大小、様々な印刷屋さんで働いていました。
従業員数5名の会社には、机の上に置けるような、単色の小さな
印刷機が有って、それで、名刺やハガキ等を刷っていたんですよ。
(あ、私が刷ってたんじゃなく、若手の人とかが使ってました)
当時の社長のコダワリで、そんな小さな印刷機なのに、フィルムを作って、
PS版を焼いて印刷をしてたんです。湿し水の供給方式は、シンフローって
言う、軽オフ機に有りがちな、独特な簡易的、連続給水方式です。
その若手君の作業を見てると、まぁとにかく、「淡ければインキを盛れ!
汚れたら水を出せ!」って言うやり方ですから、たかだた名刺とは言え、
その刷り上がり品質は、最低最悪なモノでした。
ある時、その若手君が欠勤し、そんな時に限って、急ぎの名刺の仕事が
入って来てしまって、「成田さん、これ出来る?」って社長に言われて・・・。
ま、使った事は無いけど、操作方法は、若手君のを見て理解してるので、
やれると思いますよ~。とか言いつつ、内心、ワクワク状態(笑)。
印刷機がデカかろうが、小さかろうが、湿し水を使うオフセット印刷ならば、
こりゃ基本は全て同じ。最小限の水に、少な目に出したインキをバランス
させればOKなワケでして。(基本的なメンテはモチロンやりましたけどね)
翌日、出勤して来た若手君が、私が刷った名刺をみてビックリ仰天でした。
「こんなに濃く刷ってるのに、どうして文字に滲みもなく、小さな住所とかの
文字も、キレッキレで、全く汚れも無く刷れるんですか?その印刷機で、
こんなにインキを盛ったら、絶対に汚れるし、裏移りもしますよね~」
いやいや、インキの量は、多分、若手君の半分だと思うよ~。だから当然、
滲みもしないし、超細かな文字もキレッキレだよな。「ええッ~!インキの
量がボクの半分!あんな、濃度の無いインキで、盛れば、すぐに汚れる
ようなボロインキなのに、こんなにキレイに刷れるはずが無いですよ~」
確かに、あまり良いインキじゃないね。シンフロー方式だから、水の制御も
ケッコウ厄介だしね。でもね、基本的な事をキッチリ踏まえて刷ってやれば、
あんなインキ、あんな印刷機でも、ここまでのモノが刷れるって事なんだよ。
「これって、成田さんとオレの、腕の差って事ですか?」 え?いやいや(笑)、
そんな物を刷るのに、オレは何もワザとか使ってないよ。あくまでも基本に
忠実に刷っただけだよ。水幅なんてモノには一切頼らない。とにかく極限まで
水を絞る。水を絞っても大丈夫なように、ローラーをキレイにしたり、ニップを
調整したりは、当然、したけどね。(よく、あんなセッティングで刷れてたなぁ)
そうやって、基本通りに水を絞ってやれば、こんな印刷機、こんなインキでも、
これくらいの品質では刷れるって事なんだよ。多分ね、オレが使った後は、
メッチャ刷り易く成ってるから、やってみ。 「本当だ!これスゴイ!」
印刷ってね、上手く行くと、メッチャ楽しいんですよね(^^)v。