枚葉の印刷機で、「爪」ってのが無かったら、こりゃ紙を運んで行く事が
出来ませんよね。爪は、圧胴や中間胴等に沢山並んで、紙をつかんで
次の胴へ紙を届けて行く役目をしてます。この爪ってヤツ、たった一つ
にでも不具合があると、すぐに様々なトラブルが発生しちゃいます。
コッケウ誤解されてる方が多いんですが、爪ってね、ブラン胴と圧胴で
印圧を掛けて印刷している紙を、その印圧に負けないように、必死に
成って引っ張っている!ってなワケでは、ないんですよ。
ブラン胴も圧胴も、印刷機のギヤで回っています。ですから例えば爪が
無くても、印刷を進行させる事は出来るんですよ。でも、爪無しで印刷を
してしまったら、紙がブラン(ブランケット)にくっ付いてしまいますよね。
って事は、爪の役割って、ブランにくっ付てしまう紙を剥がして来るって
事に成ります。・・・印圧って言う、強い圧力から紙を引きずり出す様な、
そんなメッチャ過激な仕事をしてるワケではなく、ブランが紙を持って
行こうとするのを、必死に防いでいるって感じなんですわ。
こう考えると、爪の負担がチョッとだけ軽く感じる事が出来ますよね。
「紙離れ」という言葉が有りますよね。紙がブランにくっ付いて、持って
行かれてしまうってのは、粘り気の強いインキが接着剤と成って、紙と
ブランをくっ付けてしまうからです。と言う事は、インキを選択する時に、
粘り気の弱い物を選ぶとか、ブラン自体も、紙離れの良い物とかを選択
してやれば、紙離れは良くなり、爪への負担が軽く成るって事ですよね。
でもね、「紙離れ」と言う性能ばかりを追い掛けると、印刷品質を落として
しまい兼ねない事に成ってしまいます。そこで、爪のメンテナンスが大切に
成るって事なのですが・・・。
印刷機を長年使っていると「爪先が摩耗して減ってしまったから交換する」
って言う、大きな改修メンテが発生します。数百万円から数千万円も掛かる
ことも有るような、非常に大きな改修メンテですよね。
でもね、チョッと考えてみて下さい。爪の仕事って、紙をつかんで離すって
言うだけの、とても単純な動作ですよね。つかんで離すって言うだけならば、
つかんだ表面が、簡単に摩耗してしまうなんて事は起きないんですよ。
自分の手の、親指と人差し指の、指先で紙を挟んで離してみて下さいな。
そんな動作だけならば、指先の表面に負担が掛かるなんて事は、あまり
無いですよね。でも、指先で軽く紙を挟んだままで、その紙を前後に動か
してみて下さい。・・・こうすると、紙がサンドペーパーみたいに成ってしま
って、指先の表面を摩耗させる事と成ってしまいます。
紙を挟んだ爪の中で、紙がサンドペーパーのように動いてしまうなんてのは、
普通なら有りませんよね。でもね、紙からは紙粉が出ます。両面刷りならば
パウダーも有りますよね。そうした、紙粉やパウダーが、爪先に付着すると、
必死に挟んだ爪先の中で、紙が滑って動いてしまうんですよ。
滑って動くと言っても、ほんのチョッとの話なんですが、その、ほんのチョッと
ってのが、ずっーと続けば、こりゃサンドペーパーと同じ効果で摩耗してしまう
ってワケなんです。爪先を清掃して、この滑りを抑えてやれば、爪はケッコウ
長持ちしてくれます。是非、頑張って定期的に掃除してやって下さい。