最も簡単な事例で言えば、例えば、ユポを刷る時の話です。
ユポって、水を吸わないフィルムみたいなヤツですよね。
この、ユポを刷っていて、例えば、3胴目の、紅の印刷が
キレイに行かなかったとしましょう。
「あれ?紅のベタのツブレが悪いなぁ~」とかって成ると、普通は、
紅の胴の不具合だと思って、紅のインキを盛ったりだとか、紅の
ブランケットを取り替えてみたりだとかって事をするかと思います。
でもね、それでは直らないんですよ。ユポ等の、吸収が悪い物の
場合、3胴目のインキの着肉が悪かったら、その前の、2胴目の
状態を疑わなきゃアカンのです。
例えばです、2胴目の藍で、湿し水が多かったとしましょう。
そう成るとね、2胴目の多目の水が、ユポの表面に着いた状態で
3胴目に行く事に成りますよね。すでに、ユポの表面には、2胴目の
水が着いてしまっています。油と水は反発しますから、表面に残った
水のおかげで、3胴目のインキ乗りが悪く成ってしまうんですわ。
ですから、ユポ印刷で、3胴目のインキ乗りが悪いな!と思ったら、
3胴目をイジル前に、前胴の2胴目の湿し水を絞ってみて下さい。
これだけで、3胴目の乗りが、ググッと良く成ります。
これね、普通の紙の場合も同じなんですわ。例えば、3胴目に紅の
ベタが有ったとしましょう。んで、刷ってみたら、紅のベタにイッパイ、
ヒッキー(ゴミ)が付いてしまった。
この場合、多くの人は「しょうがないなぁ~、紅のインキを軟らかく
するか~」なんて事に成るのですが、こうした時も、まず、前胴である、
2胴目や1胴目の湿し水を、シッカリ絞って刷ってみて下さい。
普通の紙ってヤツはね、水に濡れる事で、極端に、表面強度が弱く
成ってしまいます。1胴目や2胴目の湿し水をシッカリ絞ってやるだけで
3胴目のヒッキーが、楽に成る事が有りますので試してみて下さい。
湿し水を使うオフセット印刷は、水に弱い「紙」ってヤツを相手にして
います。必要以上に水を多くしてしまうと、紙の表面強度が一気に
落ちて、トラブルを招いてしまうんですわ。
トラブルが発生した、その胴を調整するって事も、勿論、大切ですが、
その前の胴の影響を考えるってのも、水を使うオフセット印刷では、
非常に大切な技術の一つなんですよ。