印刷技術 1度汚して・・・ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

「湿し水を極限まで絞る!」 と言う話をさせて頂くと、

「あ!ウチはね、1度、汚れが出る所まで水を絞って確認してるから大丈夫!」

って、胸を張る人がケッコウ多いんですよ。・・・その確認方法って、科学ですか?

それとも、物理ですか?

 

まぁねぇ、「オレは毎朝、水目盛り15でやってるから、間違いなく絞れてる!」

とか言ってる人よりは、チョッとだけ科学かも知れませんよね。15って目盛りが、

本当に絞れている数値なのかどうか?なんて、こりゃ全く分からないですもんね。

 

「エエッ!15だよッ!夕方には目盛りが35を超えるんだから、15ってメッチャ

 絞れてるに決まってるじゃん!」・・・なるほどねぇ、35-15だから、20目盛り

も絞れちゃってるんだから、こりゃメッチャ絞れてるわねぇ~。 「だろッ!」

 

でもさ、朝一番で15だった目盛りが、なんで順番に上がって行ってしまうのかな?

「そりゃ汚れが出るから目盛りが上がるのは当然じゃん」・・・だよね。印刷をしてて

汚れが出てしまうから、その汚れを取るために、順番に水目盛りが上がって行くん

だよね。と言う事はだ、印刷中は汚れを確認してから、水目盛りを上げてるって

言う事だよね~。「当たり前じゃん!」

 

印刷中は、汚れが出た事を確認してから、水目盛りを上げてる。要するに、汚れを

ギリギリの水量で制御してるってワケだ。「そうだよ!」・・・んじゃなぜ、朝一番は、

汚れを確認する事無く、15って決めてしまってるのかな?それってさぁ、本当に

ギリギリに少ない水の量だって、自信を持って言えるのかな? 「エエッ」

 

実はね、「一度汚れが出る所まで水を絞ってから・・・」ってのも、決して科学では

ないんですよ。だってさ、その時にローラー上のインキの量がメッチャ多い状態

だったとしたら、こりゃ汚れやすいワケでしょ。多過ぎるインキの状態で、汚れを

出さないためには、湿し水も当然のように多目に成ってしまいます。

 

多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水の組み合わせで、様々な印刷トラブルが出て

しまいますわね。ですから、「1度汚して水の量を決める」ってだけでは、トラブル

の回避が出来ないんですよ。「1度汚して」の前に、「メッチャ少ないインキ量で」

って言う条件を付けなきゃアカンのですわ。

 

メッチャ少ないインキ量で、1度汚れるまで湿し水を絞ったけど、まだやはり濃度が

足らないので、徐々にインキ量を増やして、それを汚さないように、水の量を探って

行く。ってのが基本なんですが、もしもその時、インキが異常に軟らか過ぎるとか、

ローラーニップが、まともに出てない。とか言うのだと、こりゃまた話に成りません。

 

大前提は、完璧なメンテナンスであること。ローラーの洗浄等も完璧であること。

その上で、最少量のインキを汚さない為の、最少量の湿し水をバランスさせる。

面倒ですが、これが、湿し水を使うオフセット印刷の基本です。この基本をね、

シッカリやってやれば、トラブルが出るなんて事は、まず無いのですよ(^^)v 。