もう、ずっと昔の話なのですが・・・
私の師匠(元日本印刷技術協会専任講師・故・鎌野先生)に、
徹底的に反論した事が有ります。「その考え方、古過ぎますッ!」って。
「先生の湿し水に対する考え方は、20年前で止まってますよッ!」
そしたら先生、とても穏やかな口調で話してくれました。
「確かに、オレの理論は古いと思う。だけどな、世の中の大半の印刷屋さんは、
この古い理論にさえ驚く事が多いんだ。『ええッ!そうなんですかッ!』てな。
そう言う人達が居るうちは、オレはまず、その人達を救いたい。その人達を救う
ために、急に最新の理論を言ってもダメなんだ。進化の過程を順に体験しても
らう事で、ようやく、今、にたどり着く事が出来るんだよ。」
「おまえが知っている印刷現場は、何軒有る?オレは多分、君の100倍以上の
印刷現場を知っている。日本国内だけでなく、中国、中近東、欧米。それぞれに
大きなレベル差が有り、それぞれに様々な事情が有る。そんな中で、最先端の
技術を語るだけでは、何も通じないんだ。」
「他人にモノを教える者は、その他人の10倍の知識を持っていなくてはならない。
しかし、常に『10』の事を教えられる訳ではない。『5』まで教えられれば最高。
『3』まででも、完璧に習得してくれれば、それでヨシとするべき。それが指導を
する者の心構えだと思え。」
「指導をする者は、多くの場合、すでに現役のオペレータを退いている。よって、
優秀な現役のオペレータよりも、最先端の技術については、疎いのが当り前だ。
だがな、おまえが、そうであるように、優秀な者に対しては、刺激を与え続けろ。
『こんな先生、いつか追い抜いてやる!』そう思わせて、発奮させ続けろ。その
発奮こそが、次世代を担う、素晴らしい指導者を作る。」
・・・今の職業に就き、それまでの10倍以上の印刷現場が、見れるように成りました。
そう成ると、先生がおっしゃっていた言葉が解って来ます。レベル差が有り、様々な
事情が有る。5まで教えられれば最高。3でもヨシとするべし。・・・本当にその通り。
でもね、私なんぞ、置き去りにされるような、本当に素晴らしい方々も、沢山おられます。
そうした方達に刺激を与え続ける。発奮させる。・・・残念ながら、今の私には、そこまで
出来ていません。鎌野先生のような、人望が無いですもんね。
「成田さん。あんたの言ってること、もう古いわ~ッ!」
私も、今年で60歳に成りました。古くて当たり前な年齢に成ってしまっています。
まだまだ、沢山の刺激や、発奮材料を得なければ、私のようなナマケ者は、停滞
どころか、沈没してしまいます。様々な形で、刺激を下さっている皆さんに、心の
底から、感謝をしております。