印刷技術 水を運ぶ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日も少し触れましたが、ローラーには、インキを運ぶローラーと、

水を運ぶローラーが有るって話の続きなんですが・・・。

 

ずっと昔、連続給水システムが出て来る前までは、水を運ぶ役目を、

ゴムのローラーではなく、ゴムに布(モルトン)等を巻いたローラーが

やっていました。布に湿し水を浸み込ませて、運んでたワケです。

 

「オレ、使った事有るぞォ~」とか、「オレ、まだ使ってる~」なんて人も

居るかと思いますが、これはこれで、なかなかどうして、良い所も有る

ものなのですよ。例えば、インキがメッチャ盛れるとか。

 

まぁしかし、んじゃ、もう一度、モルトン使ってみる?って聞かれたら、

速攻で、NOッ!って言いますけどね(笑)。・・・多分ね、もう使えないです。

使い方のコツを、忘れてしまいましたわ~。10年以上も使ったんですけどね~。

 

でもね、連続給水が普及しだした初期の頃って、本当に苦労したんですよ。

まず、アルコールの使用は必須でした。代替アルコールなんて物は、当然、

有りませんから、純粋な IPAですわね。しかも添加量は、10%です。

 

ノンアルコール用のエッチ液なんてのも有りませんからね、アルコールに

頼るしか方法が無いんですわね。それに、湿し水用ゴムローラーのゴムも、

まだまだ研究が足らず、決して性能の良いものでは無かったと思います。

 

給水システムの仕事ってね、水舟から版面まで、湿し水を運ぶって事なんですわ。

そう言うと、メチャ乱暴に聞こえますが、実際にやってる事は、超繊細なんですよ。

非常に薄い、水の被膜を作って、それを途切れる事無く、版面まで供給するんです。

 

薄い被膜を作るための、第一関門が、ゴムの調量ローラーと、金属ローラーとの

間の、「絞り」ですよね。水膜が切れてから、ナンボ。なんて感じで、絞り込みますね。

これを難しい言葉で言うと、「ニップ間通過」なんて表現しています。

 

絞り込まれた、ゴムと金属の間を、途切れる事無く、安定した薄い被膜で通過しなきゃ

成らんのですから、こりゃなかなか難しいワザですわね。この時に問題に成るのがね、

まず、ゴムの硬さなんですわ。カチカチの硬いゴムでは、絞り込んだ時に、安定した

薄い被膜を作り辛いですよね。硬いよりは、軟らかいゴムの方がイイって、なんとなく

イメージが出来るかと思います。実際に、月日が経過して硬く成ったゴムでは安定性が

無くって、使い辛く、苦労しますもんね。

 

もう一つ問題なのが、水の粘度ってヤツなんですよ。極端な話で考えてみると分かり

やすいと思うんですが、例えば、ドロドロに粘度の高い、油のような液体と、サラサラの

水では、どっちが安定して、薄い被膜を作りやすいか?または、どっちがニップ間通過を

安定して出来るか?って考えるワケですわ。

 

これね、チョッとでも粘度が高い方が有利なのだそうです。薄い被膜を作るって考えた

場合、ドロドロの方が薄く伸ばし易く、サラサラだと、薄い被膜がブチブチ切れてしまい

やすい。なんて感じでイメージすればイイかと思います。

 

そこで、水の粘度を、少しでも増そう!って話に成るんですが、これ、水を冷却する事で、

チョッとだけ粘度が増します。あと、エッチ液にも、増粘作用の有る物が入れられていたり

して、全体で、湿し水の粘度を上げているんですわ~。

 

まだまだ、いろいろ有るんですが、取り合えず、今日は、ここまで。 です。