印刷技術 ユポ印刷のコツ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

近々、選挙が行われそうですね。選挙と言えば、選挙ポスター。

選挙ポスターと言えば、ユポですわねぇ~。ユポの印刷ってのはね、

慣れてれば、それほど難しくないんですが、たまにしかやらないとか、

一度もやった事が無いって人には、本当に難しいかと思います。

 

そこで、「成田流・ユポ攻略法」って・・・。私の本にも書いてあるんですが、

まぁ、重複でもイイので、おさらいをしておきましょうね。まず、ユポって

ヤツなのですが、これは、石油から作られた、水を吸い込まないフィルム

なんですよ。ですから、湿し水を使うオフセット印刷にとっては、こりゃ、

ケッコウ難しい印刷に成りますわね。

 

でもね、基本的には、普通の紙を刷るのと同じなんですよ。そしてね、

ユポをウマく刷れるように成ると、普通の紙を刷る時の品質が、格段に

上がるので、イヤがらずに、是非、ユポの印刷に挑戦して下さい。

 

と言う事で、ユポを刷るための、コツを順を追って解説しましょうね。

 

① 湿し水を、非常識なくらいに絞る。

  これはね、普通紙を刷ってる時の半分の目盛りから始めるとイイですよ。

 

② 硬めのインキを使う。

  最近は、普通紙用のインキで刷れるユポも、いろいろ出ていますが、

  なんつったて、相手はフィルムですから、インキが硬くても、表面が剥ける

  なんて事は有りません。硬めのインキを使えば、汚れ難いですから、水も

  シッカリ絞れるし、ドットゲイン(網点の太り)も防げますもんね。

 

③ 濃度が低い(淡い)と思ったら、インキを出す前に、水を絞れ。

  例えば、紅の濃度が低いとするじゃないですか。その場合、どうしてもまず、

  紅の水を絞ってしまうんですが、ユポの場合はね、その前の胴、つまり藍の

  水を絞って様子を見るって事が大切なんです。例えば、藍の水が多い場合、

  ユポは水を吸い込みませんから、余分な水が、ユポの表面に着いたまま、

  紅を刷る事に成ります。水と油(インキ)は反発しますから、ユポの表面に

  水が薄っすら乗った状態では、紅がウマく着肉出来ないってワケです。

  着肉不良が発生したら、前胴の水を絞れ!ってのが、ユポの鉄則です。

 

④ 水出しの初期値を変更する。

  印刷が開始される直前は、湿し水を多目にしないと、版が汚れ易く成ります。

  そこで各メーカーとも、印刷開始直前・直後の水の値を、別制御しています。

  小森さんだと、L、M、H。リョービさんだと、プリウエットってヤツですわ~。

  普通紙の場合だと、中間のM、水目盛り的には50位を選択してると思います。

  ユポの場合、これでは多過ぎるんです。立上りで多過ぎる水は、紙なら吸い

  込んでくれるのでイイんですが、ユポは一切吸い込みません。この多過ぎる

  水がインキを乳化させ、地汚れや乾燥不良の原因に成ります。L、または30

  以下にセットし直して、立ち上げてやって下さい。

 

⑤ ユポ印刷にヤレ紙(普通紙)は通用しません。

  普通紙とユポでは、水上げが全く違いますから、普通紙のヤレ紙を何百枚

  通したとしても、ユポの色調を整える事は出来ません。高感度UV機とかなら、

  速乾ですから、裏白のユポをヤレ紙として使う事が可能ですが、油性の場合、

  簡単には乾きませんから、裏白を使う事も不可能ですよね。普段からヤレ紙を

  使わない技術を磨いて、本紙のみで勝負出来るようにしておかないと、ユポを

  攻略する事は難しいんですわ。

 

ユポの印刷には、究極の基本技術と、正しい知識が、必要不可欠です。

最近は、印刷通販さんでも、ユポの印刷を受注されているようですが、

選挙ポスターってのはね、ポスターの出来、不出来で、当選か落選かが

決まる!ってくらいに大切な物です。品質第一ッ!なんですよ。

 

シッカリ技術を磨いて、「ユポなら任せとけ~ッ!」って、胸を張って言えるように

成って下さい。そう成れば、あなたの印刷技術は、格段に素晴らしい物に成ります。

(^^)v