もう、5年以上も前の話ですが、その時に勤めていた印刷会社では、
大きなサイズの物等、自社内で印刷出来ない物を、他の印刷屋さんにお願い
していました。非常に厳しいお客さんの仕事だったので、そうした外注印刷の
場合も、必ず、自社の人間が立ち合いに行って、確認をしていました。
色調が変わってしまう事を、最も嫌うお客さんでしたので、増刷が掛かった場合、
適当に、空いてる印刷屋さんを選択して依頼するような事は絶対にせず、必ず
最初に刷ってくれた印刷屋さんに、増刷をお願いするようにしていたんですわ。
ある日、3度目の増刷で、印刷屋さんへ立会いに行った者から、私に電話が
入りました。「商品の色調はOKなんですが、背景の淡い青色が濃く出ちゃって
困っています。全体に藍を絞れば、商品の色が悪く成ってしまうし、この場合は
データ修正で、背景の色を直した方が良いんですよねぇ?」
その背景の、淡い青色部分は、お客さんが結構、コダワリを持っておられた事を
覚えていましたので、「とりあえず、背景の色が濃く成るのはダメだよ。データを
修正するにしても、一度見てみないとアカンから、その印刷は中止して、今回、
刷った物を持って帰っておいで~」と、指示を出しました。
・・・刷り出しの印刷物が私の手元に来て、それを見てみると、背景の淡い青色が、
前回見本に比べて、かなり濃い青に成ってしまっています。「これって、前回も同じ
印刷屋さんで刷ってもらったんでしょう。なんで今回だけ、こんなに青く出たの?」
「オペレータさんも分からんと言ってましたが、とにかく、これじゃダメですよねぇ。
何%くらい、藍網を落とせば良いでしょうか?」
いやいや、何%落とすかって考える前にさ、この藍の網点、ルーペで覗いてみた?
「いや、見てないです。と言うか、見ても分からんです」・・・おいおい、見ても分からん
からって、永遠と見なかったら、おまえの成長は無いだろうが。今は分からんでも
イイからさ、前回見本の網点と、今回の網点が、どう違うのか、一度、覗いてみぃ。
「あッ!前回はキレイなのに、今回の網点は、藍が二重に着いちゃってますッ!」
そやね。それは「ダブり」って言う印刷障害なんだ。ダブってしまった網点をデータで
修正して色調を整えようとしたって、そりゃアカンわ。ダブりは、印刷機側のトラブル
なんだからさ、それをオペレータに直してもらわんとダメだよね。
つ~か、そのオペレータ、ダブりに気付いて無いワケ?オペレータのくせに、自分で
刷ってる網点を、ルーペで見ないの?前回も、これを刷ってくれたオペレータでしょう。
商品の色調がOKなのに、背景(咬尻側)の色が濃く出てしまったら、まずダブリを
疑って、網点をルーペで見るのが常識なんじゃないのかい。
それにね、もし、おまえが、ルーペで見る習慣を持ってたら、オレに電話して来る前に、
チョイとルーペで覗いて、「あ、ダブってますから、印刷機を直して下さい」って言えば
その場で完結出来てしまう話じゃん。ルーペで見ても分からんとか言って、いつまでも
避けて通ってしまってたら、永遠に成長せんわなぁ。
今回はさ、オレが居たから、こうやって正しい判断を下す事が出来たけど、もしオレが
居ない時だったら、藍の網点を修正して刷ってたかも知れんよねぇ。知識が無いって
言うのが、どれほど恐ろしい事か、よく解っただろ。シッカリ勉強しなッ!