印刷技術 テレビと共に進化 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

いつも見ている、「印刷 虎の穴」 と言うサイトに、

「シャープな網点で印刷すると、『淡い、弱い』と評価されてしまう」 と言う記事が

アップされました。・・・私もね、この点では、過去にずい分、苦労したんですよ。

 

色調見本に成っていたのが、超ヘタクソな印刷物で、網点は太り放題、ベタは

ガサガサ。そりゃもう印刷と言うよりは、「印雑」って感じの刷り物です。それを

正しくきちんと刷ると、こう成る!ってのを刷り上げて、自社の営業に見せたら

「ベタの濃度は凄いけど、網点の写真が淡い、弱い」って、言われて却下。

 

私が刷った物が、製版からすれば正しい網点ですから、デザイナーさんや、製版の

人からすれば、私の印刷物の方が正しい!と、言ってくれたんですけど、そんな事

よりも「前回の印刷で納まってるのだから、あくまでも前回通りで!」ってワケです。

 

「んじゃ、こんな印雑物の真似はオレには出来ないから、他で刷ってもらってくれ~」

「チョッと待て!1級技能士だろう!どんな物でも再現するのが1級じゃないのか!」

ハハハ、ふざけちゃアカンぞ。一流のシェフが、くそマズい、腐ったような料理を作って、

お客さんに出すかッ?!一流のプライドに懸けて、そんな物を出すわけがないだろッ!

それと同じだ!1級の名に懸けて、そんなダメな印刷物を作る事など絶対にしない!

 

今のような、デジタル製版の時代なら、チョチョイとデータを、いじってやれば簡単に

その印雑物を再現する事も出来るのですが、まだ、フィルムの時代でしたからね、

刷版の方で、修正をして対応するってのは、かなり困難だったんですよ。

 

とにかく、オレが刷った正しい印刷物を、お客さんに見てもらって来いよ。

その上で、お客さんが「前回通りが良い」と、おっしゃるのなら、製版まで巻き込んで、

何とかするよ。でも、お客さんが「こっちの方がイイッ!」と、おっしゃって下さったら、

胸張って、成田ブランドの印刷物を納めさせてもらおうや。

 

その結果、私が刷った物の圧勝だったそうです。「そう!これだよ!ウチの製品は、

こう言う、シャープな雰囲気なんだよ。校正刷りまでは良かったのに、なんであんな、

ボケたような写真に成ってしまったのか、とても残念だった。こっちの方が断然イイ

ので、こっちの色調で刷って!でも、同じ版なのに、刷る人で、こんなに違うの?」

 

「当社には、成田と言う、国家資格を持った技能士がおりますので、お客様には、

充分に、ご満足頂ける事と思います。今後も、成田に印刷させますので、どうぞ、

末永く、ご用命下さい!」・・・って。コイツも凄い営業マンですわ。さんざんオレと

口論しておいて、最後には、オレを利用してるんですもんね~(笑)。

 

一般ユーザーの方達が、印刷品質を見る眼、と言うのは、テレビ画質の進化と共に

成長されているのだと考えています。モノクロの「鉄腕アトム」で満足していた頃なら、

それが、その時のベストだったのです。やがて、「サンダーバード」や「巨人の星」が

カラーで放送されるように成り、印刷物へも、美しいカラーを求めるように成った。

 

今でも時々、古い「アナログ放送時代」の番組が放送されますが、デジタル地上波の

「ハイビジョン画像」を見慣れてしまっている眼には、耐えられない程の、低画質です。

そして間もなく、「4K ・8K 」と言う、凄い画像の時代が始まります。この画質が標準に

成った時、我々の印刷物へも、それに匹敵する品質が求められるように成ります。

 

通常の175線や、チョッと頑張った200線では、ご満足頂けない時代。250や300線

と言った、いわゆる高精細が普通に成る時代が、すぐそこまで来ているのだと思います。

そんな時代の到来に当たり、自分の網点品質を、自分の眼で評価出来ないようでは、

オペレータとして食って行けないのではないかと、考える次第です。