昨日、紹介した、NHK の「奇跡のレッスン」って番組、いろんなジャンルで
やってるんですね。過去を調べてみると、世界一流のヴァイオリニスト、
ドイツのダニエル・ゲーデ氏が、子供たちにレッスンをするってのを見付け
ました。この人、28歳でウィーンフィルのコンマスに成った、凄い人です。
題名は「楽譜が『物語』に変わるとき」。・・・私も、自分でギターを弾いてますから、
このタイトルの意味が、よく解ります。と言っても、私はヘタクソですから、自分で、
それを実行出来るほどのウデを持っていません(涙)。
楽譜通りに正確に弾くと、「上手だね」って言われます。でも、評価は、それだけ。
「今のは良かったッ!もう一度、聴かせてくれッ!」とは、言ってもらえないんです。
ある演奏家が、こんな事を言っていました。「大きく分けると演奏には二通りある。
『もう一度聞きたい!』と思える演奏と、そうじゃない演奏だ」。(阿字野壮介)
楽譜通りに弾く事で精一杯では、『表現』には成らない。表現が無ければ、何も
伝わらない。物語に成らない。だから、もう一度聴かせてくれ!とは言われない。
日本では、まず楽譜通りに弾けるように成ってから、表現をどうするのか?って
考えるのが普通なのだそうです。しかしゲーデ氏は、「感情表現は、どんなレベル
でも出来る」 と言って、子供達に指導をします。
基礎練習である、音階練習。♪ ドレミファソラシド~ みたいなヤツですわね。
「まずは、楽しさを伝えられるように、音階を弾いてみよう」てな具合で、基礎の
練習から感情表現をさせて行く。「次は、悲しい感じで~!」
「良い演奏家とは、様々な技術を使って、音で物語を作れる人の事を言う。」
・・・素晴らしい言葉ですね。その人が奏でる物語を、何度でも聴きたく成って
しまうので、CD を買うし、コンサートにも行きたく成ってしまいます。
我々、印刷技術者も同じだと思うのです。紙に色を付ける事に精一杯では、
お客さんから、良い評価を頂く事は出来ません。お客さんの満足度を、どれだけ
得る事が出来るか。お客さんを、印刷物で、どれだけ感動させる事が出来るか。
「楽譜が物語に変わる」のならば、我々、印刷会社が求めるべきものは、
「印刷物で感動を!」ってなところでしょうか。・・・「あの印刷屋、値段は高いけど、
やっぱりイイ物を作ってくれるんだよなぁ。あそこ以外の印刷屋は考えられんわ」
と言われるように成れば、値段競争もせずに、生き残って行く事が出来ます。
演奏家との大きな差は、演奏家には「名」が有り、その名を求めて人々が集まる。
と言う点でしょう。我々、印刷技術者に「名」は有りません。受注産業ですから、
最優先事項は、お客さんの感性であり、技術的に超素晴らしい物を刷り上げても、
それが、お客さんの求める物では無かったら、良い評価を得る事は出来ません。
お客さんを知り、お客さんの求めるものを的確に把握して、それを表現すること。
「オレは客の顔なんて、1度も見た事が無いぞ!」なんて言ってたら、話に成らない
どころか、そんなオペレータに、幸せな未来は無い!って言う時代なんですよ。
どうすれば良いのか・・・
簡単な事です。印刷する時に、そのお客さんに、立ち合いに来てもらって、いろいろ
話しを聞かせてもらえばイイだけの事なんですよ。「これがメインの商品だからさぁ、
これが一番、目立つように刷ってよ!」 「なら、もう少し赤い方がイイですよねッ!」
なんつって、お客さんの好みと、コダワリを知れば、それで充分にOKです。
色や表現にコダワリの無いような印刷物はね、安い値段の所に出すんですよ。
中小零細の印刷会社は、お客さんと共に生きて行く。中小零細だからこそ可能な
ワザなんです。・・・「印刷物で感動を!」 昔からの私の、メインテーマです。