印刷技術 手際よく | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

例えば、朝飯で、トーストを食べるとしましょうか。

オーブントースターで食パンを焼いて、マーガリンを塗って食卓に出す。

こりゃ、メチャ単純な作業ですわね。んでも、手際が悪く、モタモタやって

しまったら、トーストが冷えてしまいます。冷めたトーストは、アカンですわ。

 

暖かい食べ物は、暖かいから美味しい。冷めてしまったら、旨味が激減ですわね。

作る順番、調理の段取り、何もかもを計算してベストのタイミングで手際よく進めて

行く事。それが料理を作る基本だ!なんて話を聞かせてもらった事が有ります。

 

これってね、オフセット印刷も同じなんですよ。刷版を交換して、新しい仕事の

見当合わせ、色合わせが始まったら、モタモタする事は厳禁です。ローラーに

乗ったインキ、そのインキに供給された湿し水。版面上のインキ、ブランのインキ、

こいつら、全部「液体」ですから、モタモタやってると、どんどん変化しちゃいます。

 

極端な話、色合わせの途中で、例えば、上司の方のOKを得なければ刷り出せ

ないとかってルールが有って、探したけど上司の方が見付からずに、30分以上も、

印刷機が停止してしまって、また再開で、色合わせしなきゃならい。なんて状況は、

こりゃ最悪です。スムーズな色合わせ作業は出来ないです。

 

どれだけ、手際よく迅速に進められるかが、一番のキーポイントなんですわ。

瞬時に色の補正を考えて、一瞬でパッパッと制御して、サッサッサ~と、刷る。

不要な停止時間を、1秒単位で削って行くような気構えで作業してやると、

求める色調が簡単に出て、それをキープする事も容易なんですよ。

 

インキと言う液体を、湿し水と言う液体で制御して、用紙の上に正確に固着させて

行く。しかも、用紙上での、インキの厚みは、たったの1μ。こんな繊細な世界での

物造りってのはね、本当に「手際の良さ」が問われる世界なんですよ。

 

「ストップ汚れ」って言う言葉が有りますよね。不要な停止、長い停止後の再開時、

非画線部に、散点状の汚れが付いてしまうってヤツです。このストップ汚れはね、

困っている人は、本当に困っているんですが、「ストップ汚れ?ナニ、それ?」って

感じで、そんなの全く知らない人も沢山いるんですよ。

 

インキの量、水の量、ローラーのメンテ状況等々、いろんな要素がストップ汚れの

原因に成るのですが、何よりも印刷を不要に停止させない事が一番イイですよね。

チョッと思い出してみて下さい。見当合わせや、色合わせの時とか、印刷停止後の、

再刷り出しの1枚目とかって、普通に刷ってる物より、濃く出て来ますよね。

 

何でそれが濃く出て来てしまうかって言うとね・・・。正常な印刷中は、インキ壺から

呼び出しローラー⇒ 次のローラーって具合に順番にインキが転移して行くのですが、

100%、全部のインキを次から次へと渡して行くワケではないですよね。

 

何%のインキが転移されているか?って言う数字は発表されていないのですが、

例えば80%のインキが順番に転移されて行くと考えた場合、インキ壺に一番近い

呼び出しローラーよりも、一番遠い着けローラー(版に着けるヤツ)の方がインキの

量が少ないって、理解出来ますか?

 

呼び出しローラーから何本ものローラーを介して、着けローラーにまで、たどり着く

わけですから、80%づつの転移って考えた場合、そう言う事に成りますよね。

これが印刷中の状態です。そして、印刷がストップすると、当然、インキ壺からの

インキの供給は止まりますが、版面へのインキ供給も止まりますわね。

 

印刷が停止しても、印刷機自体は回転しています。当然、ローラーも空転してます。

こう成るとね、呼び出しローラーから着けローラーまでの、インキの被膜の厚みが

一定に成ってしまうってワケですわ。呼び出しより、着けの方がインキ量が少ない

ってのが本当なのに空転して一定の被膜に成ってしまうって事は、着けローラーの

インキがメチャ多く成ってしまうって事ですよね。

 

こうした事が原因で、再刷り出しの1枚目とかが濃く成ってしまうってワケなのです。

濃い=インキが多いって事ですよね。多過ぎるインキは汚れの原因に成りますね。

ストップ汚れってね、こうした事も大きな要因の一つなんですよ。

 

手際よく、出来るだけストップさせずに、サッサと進行させて行く。不安定な液体を

制御するには、そうした事がとても大切だってのを、心得てやって下さい。