例えば、朝飯で、トーストを食べるとしましょうか。
オーブントースターで食パンを焼いて、マーガリンを塗って食卓に出す。
こりゃ、メチャ単純な作業ですわね。んでも、手際が悪く、モタモタやって
しまったら、トーストが冷えてしまいます。冷めたトーストは、アカンですわ。
暖かい食べ物は、暖かいから美味しい。冷めてしまったら、旨味が激減ですわね。
作る順番、調理の段取り、何もかもを計算してベストのタイミングで手際よく進めて
行く事。それが料理を作る基本だ!なんて話を聞かせてもらった事が有ります。
これってね、オフセット印刷も同じなんですよ。刷版を交換して、新しい仕事の
見当合わせ、色合わせが始まったら、モタモタする事は厳禁です。ローラーに
乗ったインキ、そのインキに供給された湿し水。版面上のインキ、ブランのインキ、
こいつら、全部「液体」ですから、モタモタやってると、どんどん変化しちゃいます。
極端な話、色合わせの途中で、例えば、上司の方のOKを得なければ刷り出せ
ないとかってルールが有って、探したけど上司の方が見付からずに、30分以上も、
印刷機が停止してしまって、また再開で、色合わせしなきゃならい。なんて状況は、
こりゃ最悪です。スムーズな色合わせ作業は出来ないです。
どれだけ、手際よく迅速に進められるかが、一番のキーポイントなんですわ。
瞬時に色の補正を考えて、一瞬でパッパッと制御して、サッサッサ~と、刷る。
不要な停止時間を、1秒単位で削って行くような気構えで作業してやると、
求める色調が簡単に出て、それをキープする事も容易なんですよ。
インキと言う液体を、湿し水と言う液体で制御して、用紙の上に正確に固着させて
行く。しかも、用紙上での、インキの厚みは、たったの1μ。こんな繊細な世界での
物造りってのはね、本当に「手際の良さ」が問われる世界なんですよ。
「ストップ汚れ」って言う言葉が有りますよね。不要な停止、長い停止後の再開時、
非画線部に、散点状の汚れが付いてしまうってヤツです。このストップ汚れはね、
困っている人は、本当に困っているんですが、「ストップ汚れ?ナニ、それ?」って
感じで、そんなの全く知らない人も沢山いるんですよ。
インキの量、水の量、ローラーのメンテ状況等々、いろんな要素がストップ汚れの
原因に成るのですが、何よりも印刷を不要に停止させない事が一番イイですよね。
チョッと思い出してみて下さい。見当合わせや、色合わせの時とか、印刷停止後の、
再刷り出しの1枚目とかって、普通に刷ってる物より、濃く出て来ますよね。
何でそれが濃く出て来てしまうかって言うとね・・・。正常な印刷中は、インキ壺から
呼び出しローラー⇒ 次のローラーって具合に順番にインキが転移して行くのですが、
100%、全部のインキを次から次へと渡して行くワケではないですよね。
何%のインキが転移されているか?って言う数字は発表されていないのですが、
例えば80%のインキが順番に転移されて行くと考えた場合、インキ壺に一番近い
呼び出しローラーよりも、一番遠い着けローラー(版に着けるヤツ)の方がインキの
量が少ないって、理解出来ますか?
呼び出しローラーから何本ものローラーを介して、着けローラーにまで、たどり着く
わけですから、80%づつの転移って考えた場合、そう言う事に成りますよね。
これが印刷中の状態です。そして、印刷がストップすると、当然、インキ壺からの
インキの供給は止まりますが、版面へのインキ供給も止まりますわね。
印刷が停止しても、印刷機自体は回転しています。当然、ローラーも空転してます。
こう成るとね、呼び出しローラーから着けローラーまでの、インキの被膜の厚みが
一定に成ってしまうってワケですわ。呼び出しより、着けの方がインキ量が少ない
ってのが本当なのに空転して一定の被膜に成ってしまうって事は、着けローラーの
インキがメチャ多く成ってしまうって事ですよね。
こうした事が原因で、再刷り出しの1枚目とかが濃く成ってしまうってワケなのです。
濃い=インキが多いって事ですよね。多過ぎるインキは汚れの原因に成りますね。
ストップ汚れってね、こうした事も大きな要因の一つなんですよ。
手際よく、出来るだけストップさせずに、サッサと進行させて行く。不安定な液体を
制御するには、そうした事がとても大切だってのを、心得てやって下さい。