湿し水の異常な泡立ち | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

このところ、

「湿し水が泡立っている!装置の不具合じゃないのか?」

と言う問い合わせが、日本各地で、数件、発生しました。

山形県、愛知県、長野県 と、地域はバラバラです。

 

実際に、私も現場を見に行ってみたのですが、そりゃ半端ない泡立ちぶりでした。

昔の洗濯機のように、泡が盛り上がってドバドバと出ています。特にスゴいのは、

戻り水の中間タンク。蓋の隙間から、泡がモコモコと出て来てるんですわ~。

 

中間タンクから湿し水タンクへは、ポンプで吸い上げていますから、そのホース等の

劣化により、ジョイント部分に隙間が空くと、そこから空気を吸い込んで、泡立ちが

発生する事が有りますが、こんな洗濯機のような泡立ちには成りません。

 

まして、水舟から中間タンクは、湿し水が自然落下してますので、まず泡立つ事は

ないんですわ。それが、尋常じゃないほどの泡が、モコモコと発生しているのです。

こりゃ、装置の不具合とかじゃないです。何か、泡が立ちやすい物が混入している。

としか考えられないのですわ。

 

オペレータさんの作業状況を見ていると、色替えの、インキローラー洗浄の時、

自動洗浄以外に、他の溶剤を撒いているのを発見しました。その溶剤を使用すると、

確かに、インキローラーの洗浄が非常に楽に成っています。

 

なかなかのパワーやなぁ~。と思って見ていましたが、こうした強い溶剤は、どうしても

ローラーの中に残ってしまいます。そうした残留物が、版面や、水ローラーを介して、

湿し水の中に入り混んでしまうのです。

 

試しに、バケツに5リットルほど、水道水を汲んで、その中に、その溶剤を少々入れ、

水面を手で、バシャバシャと攪拌してみました。これをやると、溶剤が入った水道水は

多かれ少なかれ、泡立ちが発生します。問題は、その泡が、すぐに消えるか消えないか

なのです。すぐに消えるのなら問題は無いのですが・・・。

 

今回の場合は、ケッコウな量の泡が発生して、一向に無く成る気配を見せませんでした。

これはね、良くないです。湿し水内に、泡を発生させてしまう溶剤は、様々な弊害を招く

おそれが有ります。湿し水の管理タンクで言うならば、大量な泡により、センサー類が

正常に働かなくなり、様々な誤動作の原因に成ります。

 

オペレータの立場で言うなら、泡だらけの湿し水で、まともな印刷が出来るワケがない。

と思うのですが、これを使ってるオペレータさんは、「これでローラー洗うと楽やから~」

とか、おっしゃって、今後も、使い続けたい様子でした。

 

特色の色替えが多い仕事をされている方にとっては、本当に重宝な溶剤だと思います。

でもね、湿し水を泡だらけにしてしまうような物は、こりゃバツですわ。湿し水の中に、

小さな気泡が発生すると、版面への水上りが、全く変わってしまいます。

 

湿し水はね、印刷品質にとって、とっても重要なモノなのです。その重要なモノを変質させ、

泡だらけにしてしまうような溶剤は、決して良いとは言えないんですよ。例えばエッチ液も、

主な成分は「活性剤」ですから、何も考えなければ洗剤のように泡立ちを発生させてしまう

ものなです。それを泡立たせないよう、エッチ液の開発者達は、必死に成って研究をして

いるのです。「泡」はね、湿し水にとって、大敵なんですよ。

 

例えば、ローラー洗浄時に、何か特別な溶剤が欲しいのであれば、それらを使用しても

一向に構いませんが、泡の立たない物を選択して下さるよう、お願い致します。