印刷Q&A ユポのトラブル | 1級技能士・成田の印刷技術

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●質問

 

ユポ(FGS)で、3胴目(紅)に地汚れが出て困っています。

刷り出しは良好なのですが、一旦停止後の再開時に用紙全面が地汚れに成ります。

その時、版面を見ると、用紙エリアのみインキが絡み、用紙外エリアは絡んでいない。

この症状が3胴目のみに発生して、胴圧、仕立て、ローラーニップ等、徹底的にメンテ

しているのですが、一向に改善出来ません。何か他に方法は有りませんか?

印刷機はハイデル、油性機です。

 

●回答

 

一旦停止後の、地汚れ。いわゆる、「ストップ汚れ」って言いましてね、ユポではケッコウ

発生するトラブルですね。ただね、ユポで、これが発生するって事は、普通紙の時にも、

この症状が、若干かも知れませんが、出ている可能性が有るって事なんですよ。

 

ユポは吸水性の無い、いわゆる「フィルム」なので、こうしたトラブルが、モロに出ますが、

実は、普通紙の場合にも、ほんの少しだけ、こうした症状が出てしまっている可能性が

有るんですわ。ですからね、ユポで、この症状が改善出来たら、普通紙が、もっと楽に、

キレイに刷れるように成ると思って、徹底的に改善されるとイイですよ。

 

まずね、特徴的なのは、刷版の汚れ方ですよね。ユポが有る部分だけが地汚れして、

ユポが無い部分には地汚れが無い。これって、本当に珍しい状態だと思いませんか?

と言う事は、ユポが版に対して、何か悪さをしてるって感じですよね。

 

ユポは、他の普通紙に比べて、炭酸カルシウム(炭カル)の量が多いと考えて下さい。

この炭カルが、ブランケットに蓄積し、刷版に対して、何らかの攻撃を掛けてしまい、

用紙が有る部分の版面だけに、地汚れを発生させてしまっている。と言う想像が出来

ますよね。・・・そう考えないと、版面の用紙内と、用紙外の差が説明し辛いですよね。

 

この考え方を前提条件とした場合、3胴目の何が悪くて、そんな事が起こってしまって

いるのか?・・・ユポの鉄則はね、「トラブルが発生した前の胴を修正せよ!」なのです。

例えば、3胴目(紅)のインキの着肉が悪い場合、その3胴目を、どう修正しても一向に

改善出来ない場合が多いのです。(今回も、そうですよね)

 

3胴目の、前の胴、つまり2胴目に問題が有って、3胴目の着肉が悪く成ってしまう。

なんで?って思うかも知れませんが、ユポはね、吸水性の無いフィルムですよね。

例えば、2胴目の湿し水が、少しだけ多かったとしましょう。

 

少しだけ多いくらいなら、当事者である2胴目は普通に着肉して、良好な印刷が出来て

しまう事が多いんですわ。んでもね、2胴目での多い湿し水が、版面からブランを介して、

ユポの表面に付着してしまうんですよ。チョッと想像してみて下さい。フィルムの表面に、

水が乗ってしまっている。「水と油は反発」しますよね。油であるインキは、すでに水が

付着してしまっている所には、キレイに着肉する事が出来ません。

 

ユポの鉄則、「トラブルが発生した前の胴を修正せよ!」・・・着肉不良が出た3胴目の

前胴、つまり、2胴目の水を絞ってやると、見事なくらいに、3胴目の着肉が改善される

ってワケなのですわ。今回の質問者さんの原因も、これじゃないかな?

 

3胴目は徹底的にメンテしたけど、改善されない。と成れば、問題は2胴目に有るッ!

例えば、2胴目でチョッと多目の湿し水が、ユポの表面を劣化させ、その表面が3胴目の

印刷時に、ブラン残りのような状態で、ブラン表面に残留し、3胴目の版を部分的に劣化

させてしまった。とか、2胴目の胴圧が強過ぎて、ユポの表面を荒らしてしまい、それが、

3胴目のブランに蓄積して・・・とかね。

 

こう考えると、ツジツマが合うんですわ。ですからね、3胴目同様、2胴目のメンテも、

シッカリとやって、2胴目の水を極限まで絞ってやって下さい。多分、それで改善が

出来ると、思いますよ。(^^)v