●質問
先日、あるメーカーが、ウチの印刷機の、湿し水の分析をしてくれました。
その結果、2%で添加しているはずのエッチ液が、実は 1.4%しか入って
いないとのこと。この分析結果を踏まえて、エッチ液添加設定を増量する
べきかどうか迷っています。成田さんの、お考えを聞かせて下さい。
尚、現状では、快調に印刷をしております。
●回答
湿し水の分析ってね、非常に難しいんですよ。チョッと難しい話に成りますが、
例えば、湿し水を分析するにあたり、エッチ液その物の含有量を計測する事は、
こりゃ不可能なんですよ。エッチ液中の、「何かの成分」を検出して、それをもとに
含有%を表していると言う状態です。
その「何かの成分」ってヤツが問題なんですわ。
湿し水ってね、印刷中の供給量を測定する事が、出来ないんですわ。
一番イイのは、印刷中の版面上で、湿し水の膜厚を計測する機器が有れば、
超イイんですけど、そんな事を計測出来る機器は、有りません。
このブログでも、何度も書いていますが、インキの量は、紙に印刷された時に、
濃度計で計測して、その量が多いか少ないかを判断する事が可能です。
それに対して、非常に重要な湿し水なのに、それを計測する機器が無いのです。
ならば、湿し水の量は、どうやって決められているのか。
とっても簡単な話です。湿し水の量は、印刷機を使うオペレータの経験と勘で、
決められているんですわ。・・・ですから、A機長とB機長が刷った物に、品質的な
差が出てしまうってワケなんですよ。
話を戻しましょうね。・・・こうして、ある意味、非常にアバウトな状態で決められて
いる湿し水の量。例えば、湿し水の量が多ければ、インキ中への溶け込みが発生
します。また、印刷用紙へ浸透して行く湿し水も多く成ってしまいます。
インキと混ざり、用紙表面を溶かした湿し水。こいつらはね、また、冷却タンクへ
戻って来てしまうんですわ。その時、エッチ液濃度を計測している「何かの成分」
ってヤツは、本当に正常な分量で検出されているんでしょうか。
私はね、非常に疑問だと思っています。エッチ液の含有量ってね、たったの2%ですよ。
その2%の中の、またまた細かな「何かの成分」。こりゃ一体、何%なんでしょうかねぇ。
そんな、1%以下の微細な量が、インキや紙の影響を受けずに、正確に検出し評価する
事が出来るって言う考え方が、非常に疑わしいと思います。
もし、そのデータを信じたいとするならば、10リットルのバケツに、200cc のエッチ液を
入れて、自分の手で、確実な2%のエッチ液を作って、冷却タンクに供給すると言う作業を
1ヶ月間ほど続けて、この間、実際に印刷を行って、その上で、今一度、分析をしてもらって
下さい。
それは、間違いなく2%添加の湿し水ですから、その時に、2%以外の分析結果が出たら、
「なんや、それ」って話に成りますよね。・・・まぁ、それよりも、現状で調子良く刷れているのなら、
そのままが、一番イイんじゃないですか (^^)v