印刷Q&A 振りローラーの温度設定 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

高感度UV機を使っています。

印刷中に、版の両端が汚れてしまうので、何か方策は無いかと、試したところ、

振りローラーの冷却温度を、18℃にまで下げたら、うまく行くように成りました。

もう少し下げたら、もっと良く成るように思うのですが、振りローラー冷却装置の

温度設定が最低で18℃に成っており、現状で、これ以下に下げる事が出来ません。

御社(コスモテック)のスペースペアを使っているのですが、18℃以下の設定が

出来るように、改造は可能でしょうか。

 

●回答

 

ハハハ、なるほど、そんなスゴイ発想が有るんですねぇ。こりゃ、ビックリしました~。

 

静電気の発生で困ったので、振り冷却の温度を下げたら、うまく行ったから、もっと下げたい。

紙にシワが出て困ったので、振り冷却の温度を下げたら、うまく行ったから、もっと下げたい。

見当精度が悪くて困ったので、振り冷却の温度を下げたら、うまく行ったから、もっと下げたい。

 

どれもこれも、不正解な対応だって、分かりますか。どれもこれも、他に原因が有って、それを

解消しなきゃアカンのに、たまたま、振り冷却の温度を下げたら、うまく行ってしまったから、

それで対応して行きたい。って言ってるワケですよねぇ。

 

食中毒で腹痛がヒドくて、我慢出来なかったので、お腹に、痛み止めの湿布を2枚貼ったら、

楽に成ったから、今度は3枚貼りたい。・・・なんて話を聞いたら、大半の人が「コイツ、アホや!」

って、言いますよね。そりゃね、筋肉痛で腹筋が痛いって言うのなら、湿布を貼ってもイイでしょう

けど、食中毒で腹痛なワケでしょう。それで、お腹に湿布を貼るって、本当にアホですよねぇ。

 

今回のお話は、そう言うレベルのお話なんですよ。 なぜ、版の端が汚れてしまうのか。その

根本的な原因を考えていませんよねぇ。たまたま、振り冷却の温度を下げたら、汚れが出なく

成った。・・・まぁ確かにね、温度を下げて冷やせば、インキは硬く成りますから、汚れは出難く

成りますわね。

 

でもね、振り冷却ってのはね、汚れを無くす事が、本来の仕事じゃないんですよ。

インキは、25℃の温度で使う事を前提に設計されています。その、インキにとって、

良い温度をキープしてやるってのが、振り冷却の一番大切な仕事なんですわ。

 

18℃って言う設定は、こりゃ完全に冷やし過ぎです。・・・でも、連続で印刷してる時には、

問題無く刷れると思いますよ。しかし、ロングランの仕事で、途中でブラン洗浄とか、他の事で

印刷を一旦停止すると、18℃のローラーが、グングン、インキを硬くして行ってしまいます。

 

冷やされ過ぎたインキは、ドットゲインや着肉に大きな差が出るし、湿し水が多過ぎる状態

にも成ってしまうので、停止後の再開では、大きな色ムラを出す事と成ってしまうでしょう。

 

版面の端が汚れ易い場合、そこに、余分なインキが溜まってしまっている。って言う原因が

多いように思います。インキ壺のゼロセットを、キッチリとやって、端が出過ぎないように確認

してやるってのが、まず第一の対応でしょうね。

 

・・・食中毒のお腹に、痛み止めの湿布を3枚貼っても、こりゃ決して、治りません。

そんな事をしてたら、食中毒が侵攻してしまって、命を落とす事にも成り兼ねない。

間違った対処療法ってのは、本当に何よりも、危険なんですよ。印刷を、物理で

考えずに、科学で把握し、科学的な対応をしてやって下さい。