印刷Q&A 製紙メーカーの姿勢 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

いつも読ませて頂いています。私は中国地方なので、昨日、成田さんが
取り上げられていた「b7トラネクスト」と言う紙を知らないんですが、
それは輸入紙ですか?また、そのような印刷適性が良くない紙を作るとは、
製紙メーカーの姿勢と言うか、方針は、どうなっているのでしょうか。

●回答

読んで頂いて、ありがとうございます。

b7トラネクストは、オーロラコートや、NPI上質を作っている日本製紙の紙ですね。
しかも、あの東北の大震災で壊滅的な状態に成った、石巻工場で作られているそうです。

これは、前々から思っている事なんですが、製紙メーカーにとって印刷適性と言うのは
二の次、三の次の事柄なんですね。もちろん、印刷適性を第一に考えて作られた紙も、
いろいろ有ります。でも、あまり考慮されていない物も多いですね。

では、製紙メーカーにとって、紙を商品化する時の最重要事項とは何か?
そりゃ簡単「その紙が売れること」です。必死の思いで紙を設計して、やっとの思いで
販売にまでこぎ着けたとしても、売れない紙では、どうしようもないですもんね。

紙って言うのは、印刷屋さんに、その選択権が有るケースも多々存在します。例えば、
上質紙。クライアントからは「上質紙で」と言う要望が出るだけですから、我々が、
NPIを選ぼうが、雷鳥にしようが、はたまた、しらおい、金菱、何でもOKなワケ
なんですよ。(あれ?王子の上質って何だっけ?)

印刷屋さんに、選択権が有るとすれば、まず考えるのが、仕入れの値段ですよね。
チョットでも安く入る紙を選びます。印刷屋さんも儲けたいですから当然ですね。
・・・ほら、ここでも、印刷適性とかが後回しにされちゃいましたね。

まぁ、頻繁に使う上質紙とか、A2コートなんてのは、印刷適性の良い物が多い
ですから、どれを選んでも、さほどの差は無いと思うんですが、問題は例えば、
ファンシーペーパーなんてやつですよね。

ファンシー系の紙って、デザイナーさんとかが選択する事が多いでしょう。
そうなれば、デザイナーさんのイメージみたいなのが最優先に成るワケですから、
これまた、印刷適性なんて後回しですよねぇ~。

製紙メーカーも、デザイナーさんにウケる紙を作れば、これまた売れるワケですし、
最近は、オフセットで刷るとは限らないですよね。インクジェットだとかトナー
だとかで刷る事も有りますから、オフセットに特化した紙でなくてもイイわけなん
ですよ。

そうした、オフセットでの適正が悪い紙、例えば、乾きがメチャ悪いとか。そんな
場合は、UVで印刷するって言う選択肢も有るんですが、紙によってはUV禁止!
なんてのも、最近は有りますので、本当にシッカリ調べんとアカンです。

我々、印刷オペレータの仕事は、紙に対して愚痴を言う事ではなく、その紙を他の
誰よりもキレイに刷る事だと考えています。他の誰よりも早く、その紙の刷り方を
確立してしまえば、一歩抜きん出ることが出来る。それが、技術者としての心意気
なんじゃないかと、そんなふうに考えています。