圧胴・恒温システム | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

技術系のブログで~す。

寒く成りましたね~。名古屋も、朝晩は本当に寒いですわ~。
こうして寒い季節に成ると、いつも困るのが、圧胴の温度なんですよ。
圧胴って、鉄の塊りですよねぇ。こいつは気温が低く成ると、本当に
冷たく成ってしまって、いろんな印刷障害の基に成ってしまうんです。

オフセット印刷にとって「温度」って言うのは、ケッコウ大切な要素
なんですね。寒過ぎる工場では、乾燥不良や、着肉不良、色調の再現不良
なんて事が起きてしまって、何とも成らないので、シッカリと暖房を入れて
対応をしていますよね。

温度によって、大きく変化が起きてしまうのは「インキ」なんですね。
温度が上がれば、タラタラに成ってしまって、温度が下がり過ぎれば、
ガチガチの硬さに成ってしまう。温度の影響を、一切受けないインキ!
なんてのが開発出来たら、ノーベル賞も夢ではないような気がします。

インキの振りローラーに冷水や湯を通して、インキの温度を一定にしよう
とする「恒温装置」なんてのは、かなり多くの印刷機で使われるように
成りましたね。もうチョット贅沢な機種だと、インキ壺の元ローラーにまで
恒温機構が付いてたりしちゃいますもんね。

でもね、インキ壺やローラー上で、完璧な温度をキープしたとしてもですねぇ、
圧胴がメチャメチャ冷たいと、その冷たさが、紙と紙の上に乗ったインキを
一気に冷やしてしまうんですね。せっかく、壺やローラーで暖めたのに、
紙に乗った瞬間に、圧胴で急冷却されてしまうんですよ。

オフセット印刷で、紙に印刷されたインキの厚みって、1ミクロンなんですよ。
1ミクロンは、千分の1mmですから、0.001mmって言う、超極薄の世界なんですね。
こんな薄い皮膜なんて、圧胴の冷たさで、瞬間冷却ですわ~。

圧胴で瞬間冷却されると、まず出るのが、エッジピックと言うトラブルです。
ベタの咬尻側の端っこ(エッジ)が、ピッキングのように紙剥けしてしまう
って言うヤツですね。これが起こり出すと、圧胴が暖まるまで、延々と続いて
しまうので、非常に厄介です。

エッジピックが起きている状態だと、全体的に着肉不良が起こってしまって
いることが多いですね。ですから、良好な時に刷った物が、前回見本に成って、
それが色調見本だったりすると、なかなか色調が合わない事が多々有ります。

・・・例えば、冬の連休明けの初日とか、機械が冷え切ってしまってる時って、
皆さんなら、どうします?暖気運転とか言って、しばらくの間、印刷機を空転
させたりしませんか。ローラーとか、ギヤとか、接触して回る物は、接触圧などで
暖気されるんですが、圧胴って、空転状態では、どこにも接触しませんので、
暖気運転で暖めてやる事は出来ないんですよ。

我々の印刷工場の床って、普通はコンクリートですよね。コンクリートって、
寒い日の夜中には、相当な勢いで冷たく成ってしまいますよね。この冷たい
コンクリートの上に乗っかってるのが印刷機で、印刷機は金属なので、床の
冷たさで、簡単に冷え切ってしまうんです。

私、毎年、冬に成ると思うんですが、圧胴を暖める、圧胴の恒温装置なんてのが、
もし有ったら、冬場の印刷品質は、もっと簡単に向上させる事が出来ると思うん
ですよ。何℃に設定するかは問題ですが、版面の理想温度と同じで、15℃くらい
でイイんじゃないかと思うんですが。

地味な装置ですが、多分まだ、どの機械メーカーも出していないので、開発が
非常に難しいのかな?それとも需要が無いのか・・・。実際に印刷機を使ってる私ら
としては、有れば、かなり有効なシステムだと思うんですけどね。

ちなみに、私なんぞ、圧胴が冷えて困る時は、印刷機の下へ、家庭用の布団乾燥機で
温風を送って暖めてましたが、まぁ、それほど暖まるワケではなく、あくまでも、
気休め程度でしたね(笑)。