印刷Q&A アルコールの使用 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

高感度UV機を使っています。新台の時から、代替アルコールを使用して
いるのですが、社長からアルコールを無しにするように言われました。
油性の頃は、ノンアルコールで印刷していましたので、出来なくはないと
思うのですが、その点に関してはいかがでしょうか。

●回答

昔、連続給水システムが、世の中に出だした頃は、アルコール(IPA)を
使う事が必須条件として、システムが出来上がっていたんですよ。それを、
ノンアルコール化しようと、日本中のエッチ液屋さんが製品開発をしてました。

及ばずながら、私も開発に関与させて頂いていて、様々な試作品をテストさせて
もらっていました。試作品の中には、全く印刷不可能な物も有ったのですが、
そんな不出来なエッチ液でも、IPAを5%も放り込んでやれば、難なく印刷が
出来てしまうんですね。

時代が変わり、油性の場合だと、インキが進化し、システムが進化し、今では、
ノンアルコールが当たり前のような状況に成りました。特にインキの進化は
素晴らしいものがあると感じています。

問題はね「水幅」ってヤツなんですよ。これ以上、水を絞れば汚れが出る。
その逆に、これ以上、水を上げたら乳化して、何とも成らん状態に成ってしまう。
湿し水が少な過ぎるか、多過ぎるか。トラブルが起きない良好な領域が広ければ、
こりゃ、楽に印刷することが出来るワケですわね。

この、良好な範囲の事を「水幅」と表現して、水幅が広いとか、狭いとか言って
るってワケなんですが、油性インキの方は、この水幅が本当に広く成りましたね。
それに対して、UVインキの方は、この水幅が、メッチャ狭いんですよ。
この水幅の狭さゆえに、UV印刷の難易度を高くしてしまっていますよね。

この水幅の狭さを、充分に承知した上であるならば、ノンアルコールにしても、
全然OKだと思います。実際に、高感度UVでも、ノンアルコールで印刷をして
いる工場は、たくさん有りますしね。

私自身は、高感度UVの場合、アルコールを「使う派」の人です。
例えば、ユポの印刷で、それがロングランだった場合、ただでさえ水幅の狭い
高感度UVに、ユポなんて言う、これまた水幅の狭い素材で、しかもロングラン
での品質を安定させなければ成らないとしたら、こりゃ、アルコールの力を借りて
少しでも水幅を広げてやる必要が有るって言うのが、私の考え方です。

ノンアルコールに出来るならば、その方が良いと思いますが、印刷品質の安定性を
考えた場合、3%程度のアルコールを使った方が、良好であると考えています。

仕事の内容や、工場の環境なんて事でも、随分と左右されますので、その点を
よく考慮しながら、対応して行って下さい。ご健闘を祈ります。