危うく死亡事故 | 1級技能士・成田の印刷技術

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ブログで~す。

もう15年以上も前の事なのですが、私の管理ミスで人身事故の
一歩手前まで行ってしまった事件が有りました。管理者としては
非常に重い罪ですし、とても恥ずかしい話なのですが、皆さんの所でも、
こうした管理ミスが起きないようにと願って書かせて頂きます。

とても古い印刷機械で、菊全の2色両面兼用機でした。すでに生産も販売も
終了した印刷機だったのですが、コンパクトで、とても使い易い機械だったので、
愛知県下では、まだ数台が残っており、サービス・修理の会社だけが残って
対応してくれていると言う状態でした。

そろそろ廃棄しようかと計画していた時、ちょっとした故障が発生して、
そのタイミングで廃棄してしまう手も有ったのですが、その後3ヵ月間位は、
忙しい時期が続く事が見えていましたので、修理を依頼する事としました。

修理の際、デリバリィチェーンの「たるみ」を指摘され、調整域のいっぱいまで
調整してあるのだが、伸び切ってしまって、かなり、たるみが出ている状態なので、
このまま使用を続けると、チェーンが切断してしまう危険性が有るとのこと。

すでに調整領域いっぱい。と言う事は、新品のチェーンに交換しなければ成らない
と言うことなのです。・・・分かる人には分かると思いますが、デリバリィチェーンと
言うのは、印刷機の排紙部分に付いているチェーンで、紙をつかんで搬送して来る
チェーングリッパーと呼ばれる、竿のようなデカいパーツが数本付いている部分です。

とても長いチェーンで、しかもチェーングリッパーを支えなければ成らないので、
かなりの強度も必要とされるため、すごく頑丈に作られたチェーンなのです。それを
新品と交換すると成ると、部品代だけでも非常に高価で、しかも取り替え工事に
手間の掛かる部分なので、工賃も非常に高価でした。

もう廃棄しようと考えてる機械に、そんな高価な修理代は掛けられない。あと3ヵ月、
なんとか、だましだまし使って行こうと決断し、機長にも、そのように指示をしました。
それから2ヵ月が経った時、とても快調に印刷をしている最中、チェーンが切れました。

9千回転で印刷をしている最中に、デリバリィチェーンが切断すると、どう言う事が
起きるのか。チェーングリッパーが、9千回転のスピードで、すっ飛んで来るって
ことなんですわ。・・・印刷中、オペレータは、ほとんどの場合、デリバリィの周辺に
います。ヘタをすれば、排紙されて来る印刷物を、のぞき込むような形で、排紙部に
密着している場合もあるのです。

そこへ、デカいチェーングリッパーが、9千回転のスピードで、すっ飛んで来て、
それがオペレーターを直撃したとしたら、ヘタをすれば、即死。そこまで行かなくても
重症は免れないものと思います。

この時は、幸いな事に、切れたチェーングリッパーが、オペレータとは反対方向の、
圧胴側に飛んで行きました。圧胴と中間胴の間に、斜めに成って飛んで行き、その
二つの胴の間に突き刺さって、印刷機は、ドッカーン!と、大爆音を立てて停止
しました。

結局、その印刷機は、そのまま廃棄処分と成ったのですが、一つ運が悪ければ、
私の判断ミスのために、一人の人が亡くなってしまっていた可能性もあるわけです。

専門家である機械のサービスマンなどが「危険だ」と言うのであれば、それは
本当に危険なことなのです。判断を誤る事の、決してないよう、人の安全を
とにかく、最優先に考えなければ成らないんだと、心底から震え上がらされた
事件でした。どうか、皆さんも、お気を付け下さい。