藤島の今ストーリーとボクの3年前ストーリーを解説

 

ネタバレ無し編はこちら

映画作品情報

     
題 名 渇き。
原 題 果てしなき渇き(深町秋生)
公 開 2014年
時 間 1時間58分
制 限 R15+
シーン 殺 人
ヌード 有(強姦シーン有)
監 督 中島哲也
出 演 役所広司
小松菜奈
妻夫木聡
清水尋也
二階堂ふみ
橋本愛
森川葵
中谷美紀
オダギリジョー、他
評 価 ★★★☆☆ 3
再視聴 おもしろいが少し疲れる映画

 

 

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舞台・設定

   
舞 台 別れた妻から娘(加奈子)の失踪を告げられた元刑事が娘を探す
設 定 加奈子を探す「藤島」と加奈子に憧れる「ボク」の物語

 

加奈子が何をしていたのか、何者だったのかを明らかにしていくストーリー。

 

 

役名(俳優)

   
藤島昭和(役所広司)
  元刑事、娘の加奈子を探して事件に巻き込まれていく

 

藤島加奈子(小松菜奈)
 
失踪した娘
 
浅井(妻夫木聡)
  刑事

 

ボク(清水尋也)
  加奈子に憧れている同級生

 

遠藤那美(二階堂ふみ)
  加奈子の中学時代の同級生

 

森下(橋本愛)
  加奈子の高校の友達

 

長野(森川葵)
  加奈子の高校の友達

 

東里恵(中谷美紀)
  加奈子の中学時代の担任教師

 

愛川(オダギリジョー)
  殺し屋スニーカー、現役刑事

 

 

 

キーアイテム

写真

 

 

 

あらすじ

コンビニ殺人事件の現場に通報で駆け付けた警備員の藤島。元刑事で今は離婚し一人で暮らしている。

藤島が殺人事件の重要参考人として警察からマークされていた頃、別れた妻から娘の加奈子が失踪したことを相談され久しぶりに家に行く。そこで娘の部屋に残されたカバンに覚醒剤が入っていることを知る。

 

娘の行方を追う藤島は中学時代の同級生から緒方と松永の名前を聞き出す。緒方は3年前に自殺していたが、松永はいまも不良グループのリーダーとしてコンビニ殺人事件の容疑者にもなっていた。松永を追う藤島は逆に松永に捕まってしまう。だが突然現れた暴力団たちが松永を拉致していったため藤島は解放される。

 

藤島は加奈子を探すことができるのか・・・

 

 

感想

展開が早く、カットの切り替えも目まぐるしい映画です。好みの分かれるところです。

現在と3年前のストーリーが交互に展開され理解するのが難しい場面も多くあります。殺人シーン、血みどろシーンなどもかなり多くありますが、見るに堪えないような強烈にグロいシーンはありません。

 

見どころは小松菜奈です。本格映画デビュー作となる本作で美しくて純粋で周りのすべてを振り回す悪魔的な美少女を演じています。

 

まだ高校生だったインディーズ時代のDAOKOの曲が挿入歌として使われています。

 

 

完全ネタバレ

ストーリーは3年前と今の二つがあります。それが目まぐるしく入れ替わりながら進行するため混同してしまいそうになります。

 

時系列は2012年12月24日~2013年12月24日の一年間が今です。その中でも2013年8月を中心に描かれています。3年前の日付はわかりません。

 

ボク目線のシーンは3年前ストーリー。

藤島目線のシーンは今ストーリー。

加奈子は既に殺されているので加奈子が出てくるのはボク目線の3年前です。藤島の回想シーンや殺される場面の回想シーンで今ストーリーにも加奈子が出てきます。

 

日付 藤島目線
(今)
2012/12/24 遠藤那美自殺
藤島が妻の浮気現場を襲撃
2013/1 藤島が警察を退職
2013/8 コンビニ殺人事件、小山ら3人が殺される
8/9 加奈子が東に殺される
(最後にわかる)
8/16 加奈子捜索開始
◇家に行く
◇森下、長野に会う
◇精神科医辻村に会う
◇加奈子の中学の同級生に会う
緒方の自殺、松永遠藤の事を聞く
8/17 ◇中学の担任教師東に会う
◇家に戻る、元妻を強姦
8/18 ◇松永の母親に会う
松永を見つける、逆に捕まる
◇やくざ石丸組が松永を拉致、一緒に暴行されるが解放
◇森下に会いに行く、長野は加奈子にシャブ漬けにされ、売りをやらされたと聞く
◇商売女を家に連れ込む、女はスニーカーに殺される。スニーカーから加奈子のブツの場所を聞かれる
8/19 ◇森下が訪ねてきて、コインロッカーの鍵を渡される
森下と一緒に長野のバイト先に行くが既に殺されている
◇コインロッカーを開け写真を見つける
◇ファミレスに浅井を呼び出し写真のコピーを渡す。警察が殺しに関わっていることがわかる
◇辻村に会いに行く。写真を見せて暴行、加奈子の話を聞く
加奈子がチョウという男と実力者への売春斡旋を行っていることを知る
自分が加奈子を殺そうとしたことを思い出す
◇石丸組に捕まる
そこで死にかけの松永から真相を聞く
緒方が松永たちから利用され少年売春をやらされて自殺し、加奈子は緒方の復讐のために松永に近づいた
加奈子は組織を裏切り写真を持ち出し顧客に送り付けた
◇石丸組からスニーカーの正体を聞きスニーカーを消すよう命令され解放される
8/20 ◇スニーカーの家で妻を強姦、子供と一緒に拉致してスニーカーと対決
◇スニーカーは妻をあっさり殺す。その隙にスニーカーをひき殺すが死なない
スニーカーの車にはチョウの死体があった
スニーカーはなかなか死なないが警察が来て殺される
その隙に藤島は逃走
◇写真にあったメモからホテルエデン818号室に行く
誰もいない加奈子の部屋を見つける
12/24 ◇藤島は教師の東に辿り着き自宅前で待ち伏せ
東から娘を売春に引き込んだ加奈子を殺した事を聞く
◇東を拉致して加奈子を探させるために死体を埋めた山に行く
雪の中で加奈子を探し続ける2人

 

 

日付 ボク目線
(3年前)
2010年 ◇加奈子と緒方は学校の屋上で出会い、お互いに惹かれあう
ただ緒方は自殺してしまう
自殺の理由は松永たちに捕まり少年売春をやらされて耐えられなくなったから
◇加奈子は松永、遠藤たちに復讐のために近づく
チョウのお気に入りとなった加奈子は売春の元締めとなる
少女たちにヤクと売りをやらせていた
◇ボクのいじめを見ていた加奈子は松永に言っていじめっ子を潰す
いじめの無くなったボクは加奈子にハマっていく
◇ある日、ボクは加奈子から松永たちのパーティーに誘われて行くことにする
そこで緒方と同じ目に会い、自分が騙された事を理解する
◇ボクは復讐のためにまずは遠藤の家で待ち伏せして遠藤から加奈子の居場所を聞き出す
そしてナイフで遠藤の耳を切り落とし、頬を引き裂く
◇ホテルエデンに向かい加奈子に会う
そこで加奈子を殺そうとしたが殺すことは出来ずにスニーカーに殺される
血しぶきをあげながら倒れるボク
その返り血を浴びながら静かに見つめる加奈子

 

結局ほとんどの殺しをしていたのは殺人マニアのスニーカーです。そして中学教師の東も加奈子殺しの犯人です。スニーカーは警察に殺されますが東は生き残っています。(原作では東の自宅で藤島に死体の場所を告げた後、頭を打ちぬかれて殺されます。そして藤島一人で雪山を掘り返す場面で終わります)

 

東は藤島も加奈子も狂っていると言います。でも東も加奈子を殺して今なお罪を隠して生きています。藤島の聞き取りにも平然と嘘をつき自分の子供を汚した加奈子を殺したことを悔いているようには見えません。東もまだ加奈子に狂わされた一人ということになります。

 

ネタバレ後の感想

加奈子は狂っています。緒方の復讐のためとはいえやっていることは狂っています。だから人を惹きつけるということなのでしょうが、藤島さえも加奈子の前ではまともに見えます。

同じくらい狂っているがスニーカーです。ボクが殺される場面で加奈子とスニーカーが一緒にいるのが象徴的だと思います。

 

そしてこの悪魔的な美少女は女教師にあっけなく殺されて消えてしまいます。自分がめちゃくちゃにして死に追いやっていった人たちと比べてあまりにもあっさりと誰も知らない場所で死んでいく対比がより狂人ぶりを際立たせています。

 

この映画は加奈子に狂わされて死んでいった人たちの狂騒曲なのかもしれません。

登場人物の狂人ぶりと場面転換に違和感なくついていければ面白い映画です。