通貨スワップのメッセージは「誰と結ばないか」がむしろ重要
配信日時:2019/03/25 05:00 カテゴリー : RMB, 日韓スワップ, 金融
日本は「平和憲法」と称する代物のせいで、事実上、戦争という国際紛争の解決手段を封じられている、まことに情けない国です。ただ、その一方で、優秀で勤勉な国民性のためでしょうか、日本には1800兆円を超える家計資産が存在し、日本国内で使いきれなかったカネが余りまくっていて、外国に巨額の金銭債権を保有しているほどです。当然、140兆円を超える外貨準備自体、1つの武器として使えますし、また、世界で最も信頼されている日本円という通貨自体、もっと有効活用する余地があります。その「有効活用方法」とは、通貨スワップと為替スワップです。
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通貨スワップと為替スワップの現状
▮「スワップ」といっても4種類ある
こうした「通貨を使った外交戦略」という観点からは、通貨スワップや為替スワップの枠組みをうまく活用することが必要でしょう。
当ウェブサイトでな何度も述べてきましたが、通貨スワップとは、簡単にいえば、国同士が通貨を交換する協定のことで、日本の財務省では “Bilateral currency Swap Agreement” を略して「BSA」と呼ばれることが一般的です。
なお、細かいことを申し上げるならば、この通貨スワップについては、「自国通貨(Local Currency)と米ドルなど国際的に通用するハード・カレンシーを交換するスワップ」と、「自国通貨同士を交換するスワップ」(Bilateral Local Currency Swap Agreement, BLCSA)があります。
一方で、為替スワップとは、国際金融協力の世界では、通貨当局同士が相手国の民間金融機関におカネを貸す目的で通貨を交換する協定のことで、一般に “Bilateral Liquidity swap Agreement” と称されることが多いのですが、当ウェブサイトでは「BLA」と略すことがあります。
さらに、「多国間で通貨を融通し合う仕組み」も、通貨スワップの一種ですが、日本が関わる「多国間通貨スワップ」といえば、現状ではチェンマイ・イニシアティブ(CMI)のマルチ化協定(いわゆるCMIM)だけです。
以上、4つのスワップをまとめましょう。
2ヵ国(たとえば、A国とB国)が、お互いに、自国の通貨と引き換えに国際的に通用する通貨(たとえば米ドル)を提供することを約束するスワップ。かつて日本の財務省が韓国銀行とのあいだで締結していた「米ドル建て通貨スワップ協定」などがその典型例
2ヵ国(たとえば、A国とB国)が、お互いに、自国の通貨を交換することを約束するスワップ。かつて日銀が韓国銀行とのあいだで締結していた「円・ウォンスワップ」などがその典型例
2ヵ国(たとえば、A国とB国)が、お互いの国の民間金融機関に融資を行う目的で、自国の通貨を交換することを約束するスワップ。通貨スワップと異なり、通貨当局が通貨防衛、為替介入などに使うことはできない。日銀と中国人民銀行が締結している「円・元スワップ」などがその典型例
複数国(たとえば、A国とB国とC国とD国)が参加し、あらかじめ貢献割合と、各国の引き出し限度額を定めておき、いずれかの国(たとえばA国)が通貨引き出しを要請した場合には、他の国(たとえばB~D国)が貢献割合に応じてA国に米ドルなどを融通する仕組み。CMIMがその典型例
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スワップ拡大の提案
▮アジア諸国との通貨スワップ
さて、繰り返しになりますが、「日本は財政再建を必要としている」「日本国債の格付は韓国国債よりも低い」、などと言われるわりには、140兆円を超える外貨準備を保持し、また、日本円という通貨は世界的に深く信頼されています。
(※余談ですが、このこと自体、「格付業者の格付がいかに信頼できないか」という証拠にほかならないと思います)。
その一方、先ほど確認したとおり、日本が外国との間で保持しているスワップは、次のとおりです。
インドネシア(227.6億ドル)、フィリピン(120億ドル)、シンガポール(30億ドル)、タイ(30億ドル)、インド(750億ドル)の合計1157.6億ドル
インドネシア(227.6億ドル相当の日本円)、フィリピン(120億ドル相当の日本円)、シンガポール(30億ドル相当の日本円)、タイ(30億ドル相当の日本円)の合計407.6億ドル相当の日本円
米ドル(無制限)、ユーロ(無制限)、英ポンド(無制限)、スイスフラン(無制限)、カナダドル(無制限)、豪ドル(1.6兆円/200億ドル)、シンガポールドル(1.1兆円/150億Sドル)、中国人民元(3.4兆円/2000億元)
CMIM(768億ドル)。相手国は中国、韓国、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ、ラオスの12ヵ国(プラス香港)
ただし、④についてはやはり多国間協定という側面が強いため、どうしても、「日本がアジアの安定に貢献する」という意味合いが薄れてしまいがちです。
そこで、ASEAN諸国のうち、④には名前が挙がっているにも関わらず、①②で名前が挙がっていない国がマレーシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ、ラオスですが、これらの国とのスワップについては積極的に推進すべきでしょう。
(※とくにマレーシアとのスワップについては一昨年5月に基本合意しているはずなのに、いまだに進捗がありませんが、これはいったいどういうことなのでしょうか。マレーシアとのスワップは対中牽制でも有益ですので、是非、推進して頂きたいと思います。)
▮アジア・中東諸国・中南米との通貨・為替スワップ
一方、これら以外の国との間でも、日本は通貨スワップや為替スワップを推進すべきです。
そのなかでもとくに、ニュージーランド(NZドル)との為替スワップが存在していないのは不思議な気がします。ウェリントンは世界の為替市場が最初に開く街でもあるため、日銀には是非、ニュージーランドとの為替スワップを検討して頂きたいところです。
一方、中国の支配下にある香港も、通貨については一応、独立しているため、日港友好という象徴的な意味合いで、香港(HKMA)との為替スワップがあっても良いかもしれません(ただし、中国牽制という観点からは、金額はうんと少なくて良いと思います)。
あるいは、「対中牽制」という観点からは、日本と同じ自由・民主主義を標榜し、親日国でもある台湾に対して、「これ見よがしに」巨額の通貨スワップ協定を締結する、というのも、極めて有益ではないかと思います。
また、中東諸国についても、サウジアラビアなどの地域大国や商取引の中継国であるUAE、カタールなどとの通貨スワップがあっても良いかもしれませんし、G20加盟国という意味では、トルコ、ブラジル、アルゼンチンなどとの通貨スワップも検討の価値はありそうです。
ついでに、「TPP11」加盟国(たとえばチリやメキシコ)との間でも象徴的な通貨スワップが存在していても良いかもしれません。
(※といっても、ブラジルやアルゼンチンなど中南米諸国の場合は、しばしば政情不安が発生するほか、実際に通貨危機を頻発させているため、下手に手を突っ込むと日本の外貨準備が毀損するリスクもある点には要注意と言えますが…。)
▮「締結する国」ではなく「締結しない国」を選別する
つまり、通貨協力の世界でも、「日本が主導する形で」、世界の金融秩序安定に日本がよりいっそう貢献すべき、という話です。
ついでに申し上げるならば、日本がG7諸国、ASEAN諸国やTPP諸国などの友好国と、通貨スワップや為替スワップなどを重層的に締結することで、もう1つの際立ったメッセージが生じます。
それは、「日本があえてスワップを締結していない国を目立たせる」、というものです。
その筆頭は、何といってもロシアでしょう。
日本は対中牽制という観点からはロシアとの関係強化が焦眉の急の課題となっていますが、それと同時にロシア(旧ソ連時代を含む)は、「サハリン2」のように、あるいは終戦のドサクサで千島・樺太を占領したように、平気で約束を破棄する卑劣な国でもあります。
口先では「日露友好」と叫びながら、わざとロシアとの間で通貨スワップ協定を締結しないというのは、メッセージとしてはなかなか強烈です。
また、中国との通貨スワップ協定については、引き続き、結ぶべきではありません。
日本としてはすでに為替スワップ協定で実利を得ているのですから、これ以上、中国との間で余計な協定を結ぶ必要もなければ、「AIIB」に参加する必要もありません(『「バスに乗り遅れた日本」と鳴かず飛ばずのAIIBの現状』参照)。
ついでに申し上げれば、日本の隣国である中国との間に、もう1つ、盲腸のような国がありますが、そこも「わざと通貨スワップ協定を結ばない」、いや、「通貨スワップの話題すら持ち出さない」という点では、中国やロシアと同じ扱いで良いでしょう。
※本文は以上です。
◆韓国TPP参加問題
くろの
対抗措置も何も、「条約を守らない」「国家間の合意を履行しない」国を参加させたらアカンやろ → 日本政府、韓国への対抗措置に「TPP加入拒否も」
対抗措置も何も、「条約を守らない」「国家間の合意を履行しない」国を参加させたらアカンやろ → 日本政府、韓国への対抗措置に「TPP加入拒否も」 https://t.co/8ftGLyY1Tv @sharenewsjapanさんから
— くろの (@chrono_tw) 2019年3月23日
TPP参加国は友好国として待遇する・・
当然、韓国は厄介な隣国(反日が国是)になりますので、”特別な配慮”がなされない。
従来、韓国が享受していた日本からの支援・協力が、他のTPP参加国へ移動するターニングポイント!ですw
◇メッセージは無視された
2018.6.1 産経ニュース
「外交青書」
26年版「自由、民主主義、基本的人権などの基本的な価値と、地域の平和と安定の確保などの利益を共有する日本にとって、最も重要な隣国」・・「価値の共有」「利益の共有」「最も重要」の3要素で構成されている。
27年版「最も重要な隣国」だけになり、価値と利益の共有が消えた。
28~29年版は「〝戦略的利益を共有する”最も重要な隣国」となった。
平成30年版「外交青書」の韓国に関する記述で、29年版まであった「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」の表現を削除し、扱いを“格下げ”にした。
https://www.sankei.com/premium/news/180601/prm1806010005-n1.html